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富士ダンジョン 『龍の塒』

 富士のダンジョン『龍ノ(ねぐら)

 新種の龍の幼体が結界の隙間から這い出てくるも、『夢袖』の7つの隊のうち『護宝』の隊長である矢倉に討伐される。

 その後『夢袖』の調査隊か組織され内部調査が行われた。

 その調査隊に放り込まれたのは『夢袖』の幹部、陰陽師『紫袖 伏見紫暮』の孫である伏見総司。

 若くして十三の祖父『蒼袖 気仙 久世正源』に本気を出させる程の実力者。

 5人編成の調査隊には各隊からのエリート3名が選出された。


 『護宝』隊長 矢倉 結太郎

 『闘宝』3位 梧桐 たつき

 『魔宝』4位 志村 由依

 『光宝』副隊長 若月 ゆかり

 『陰陽師』特別同行 伏見 総司


 難度A級のダンジョンならば難なく突破できる面子である。

 今回の任務は最難関S級ダンジョンである富士の『龍の塒』の調査。

 踏破ではなく数回層までの調査のみ、異常や危険を確認できた時点で帰還する予定だった。

 しかしその内容は⋯⋯

 1名行方不明、その他ほぼ全員決して軽くない傷を負っての帰還というものだった。


 隊長の矢倉は祠の入り口に駐屯していた『光宝』の他の隊員により治療を受けると直ぐに幹部へ報告を行った。


「全て自分の責任です、如何なる処罰も謹んで受ける所存」

「顔を上げな矢倉隊長、 責任云々は後や、先ずは詳細の報告を頼むわな」


 紫暮がやんわりと報告を促す。


「隊はこの度の調査で5階層まで潜りました、3階層まではこれまでの定期調査とほぼ変わりはありませんでした。

 4階層へ入ると雰囲気が変わりました、これまでの竜種ではなく中層以降に住まう龍種が数種出現、隊はこれらを撃破し異常を確認すべく5回層へと降りました」

「龍種が4階層に? それも数種だと?」


 九州カルデラの祠の主『黄袖 五十嵐 空斎』が異常に少し驚く。


「はい⋯⋯異なる炎龍系が2種、土龍系が1種、未確認種が1種」

「未確認? 系統も不明やったんかいな?」

「恐らくですが次元魔法系統を扱う種だと思われます、戦闘途中に咆哮と共に姿を消しました」

「次元系⋯⋯厄介な」

「炎龍2種、土龍1種は討伐したものの未確認種は魔法を使用して消えた為にそのまま5階層へと進みました。

 5階層は⋯⋯」


 矢倉は唇を噛み締め言葉に詰まる。


「5階層は⋯⋯相当数の龍種が蠢く魔窟でした。

 倒せないレベルの龍では無かったのですが数の多さと⋯⋯土龍よる結界、恐らく龍脈を使った結界により退路を塞がれ強制連続戦闘を強いられてしまいました」

「龍脈だと!?」

「僭越ながら夢袖の中で結界魔法に置いて私の右に出る者は居ないと自負しています。

 私が見るにその結界は土龍の制御を離れ深い大地からの魔素で独立して成長、維持されていました。

 恐らくにはなりますが富士の龍脈を利用した固有魔法だと思われます」

「龍脈を操るなど、伝説に残るレベルの上級龍の能力だぞ!!」

「バトルロワイアルの様な複数の龍との戦闘の中、龍の結界魔法により『魔宝』の隊員、志村 由依が空間隔離され連れ去られました。

 龍達の数による戦闘により追跡もままならず、1人欠いたことによるバランスの崩壊によって戦闘維持が困難に陥り、情報を持ち帰る為の撤退に専念する事に、土龍の龍脈結界に穴を開けるのにほぼ力を使用してしまいました。

 全て4階層での撤退を選択しなかった私の責任です」

「⋯⋯」


 少し間をおいて紫暮が話し始める。


「ご苦労やったな矢倉隊長、己を責める事はあらへん、良くぞ情報を持ち帰ってくれた⋯⋯ありがとな」

「⋯⋯!」

「矢倉よ、志村隊員は結界に捕まり連れ去られたんだな? ならば生きている可能性は高い。

 この後、更なる調査を兼ねた奪還部隊を送る事になるだろう。

 お主は今は休め、その間は龍脈結界の解析に努めておいてくれ」

「お待ちください! 隊員を失った責を償っておりません!」

「まだ失ったのが確定した訳ではなかろう? 今は次に備えるが良い」

「⋯⋯有り難き⋯⋯お言葉、胸に刻み精進して参ります」

「事が事だけに奪還部隊には袖の誰かが赴く事になるやろな」

「富士の祠だ、龍を熟知する主を行かせれば良かろう」

「せやな、地元『蒼袖』に重い腰上げて出向いて貰おうかいな」

「それが筋だろう」

「ほな連絡しとくわ。

 矢倉隊員、報告ご苦労さんやったな、ゆっくり休みや」

「はっ、ありがとうございます」

「そうや、総司はどないやった? 役にたったかいな?」

「さすがは陰陽師の跡取り候補、と言わざるを得ません。

 経験こそまだ少ないものの、龍との戦闘に物怖じせず式神による数と質の戦闘、おかけであの数の龍相手にも追加部隊を得たかのような手数で対応する事ができました、彼がいなければ更なる犠牲が出ていたかもしれません。

 センスもそうですがあの年でここまでの力を持つ彼には正直脱帽です、どうやって育てられたのかお聞きしたいところてす」

「大して特別な事はしとらへん、あれは陰陽師に生まれるべくして生まれた才や。

 陰陽の術と呼吸を既に魂に持って生まれたようなもんやわ」


 矢倉が報告している間、当の総司は怪我の治療を受けた後にすぐ富士山麓にある陰陽師の拠点にある鍛錬場にいた。

 結界術で隔離されたその場を自身が呼び出した龍の影法師で埋め尽くし、息をつく暇もない程の戦闘にのめり込んでいた。


(クソッ⋯⋯油断していたつもりはなかった、何故一人犠牲が出た⋯⋯何故止められなかった)


 嵐のような龍の攻撃を躱し、流しながら後悔の念に狩られていた。


(何だったんだあの異様な結界は? 力も数もまるで意味を成さなかった)


 総司の思考の裏で囚われた隊員の顔がチラつく。


(経験も力も、袖のトップの老人達にまるで届いていない⋯⋯こんなんじゃダメだ⋯⋯ババアを超えるにはまだ壁が多い)


 背後から龍の影法師の一撃を食らってしまう。


(ほら見ろ⋯⋯こんな攻撃さえ避けれていない⋯⋯)


 総司の戦闘と問答は夜半まで続き、答えはでないままその場で力尽きて気を失ったのだった。


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