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Los † Angels 【AI魔石とミトコンドリア】  作者: Amber Jack
第一章 紡がれた夢の祠へ
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新呼吸法と魔の素

 皆揃っての食卓を終えると十三は道場へ向かった、月穂にヨガを教えてもらうためだ。


(これが少しでも真呼吸の維持延長に繋がれば⋯⋯)


 ヨガでどういった事をするのか全くわからないが、月穂は無意識かつほぼ永続で真呼吸が使える。会得出来れば得るものはかなり大きいはずだ。

 程なくして月穂も道場に到着した。


「お待たせしました、すいません待ちました?」

「あ、いえ、さっききたばかりです!」


(おおお、こんな田舎暮らしでこのフレーズをクリアできるなんて⋯⋯)


 心の中で感謝の涙を流しながらその余韻に浸る。


「どうかしましたか?」

「いえ! なんでもないです! それより疲れてるのにありがとうございます」

「いえ、ヨガは日課でやることなので。いつも1人でしてるので誰かとするのは実は楽しみなんですよ。では早速始めましょうか」


 とても嬉しそうに笑いながら月穂は手を上に伸ばして背伸びする。


「十三さん体は柔らかいですか?」

「人並みよりは柔らかいと思います。古武術の動きに柔軟性はかなり重要なので」

「では遠慮なくいきますね。まずは全開脚、いけますか?」

「よっ⋯⋯と、大丈夫です」


 足を180度開いて手を上にして留める。


「大丈夫そうですね。ではそのまま真呼吸へと切り替えてさい、その際、皮膚呼吸も意識して全身からの呼吸を行うイメージでして下さい」

「え? ひ、皮膚呼吸!?」

「人は呼吸のうち0.6%を皮膚呼吸で行っているそうです。

 真呼吸を皮膚からも取り込めるよう意識して、そのパーセンテージを上げていきます。皮膚での呼吸法が可能になれば口や鼻からの直接による負担を軽減できるのと、効率もあがりますので維持がかなり楽になりますよ」

「考えもつかなかった⋯⋯皮膚呼吸での軽減なんて。やはり一族秘伝の呼吸法ですか?」

「いえ、お母さんとヨガをずっとしてて発見したんですよ」

「えぇ!? 凄い!! とんでもない発見したんじゃ!?」

「ふふふ、かもですね。お母さんも練習してるんですけどまだ出来ないんですよ」


(しかし⋯⋯皮膚呼吸か、どうやるんだか検討もつかないぞ)


「最初は意識するだけでかまいません、やっている自分が言うのも変ですが、普通は皮膚呼吸なんて簡単にコントロールできるものではないと思うので。

 大自然の霧の中、澄みきった大気を全身で吸収するようなイメージで私は練習しましたので参考にしてみて下さい」

「が、頑張ります」


 なんにせよやってみないことには始まらない。十三はとりあえず教えてもらったイメージで真呼吸を行う。



 一呼吸の呼吸量が通常の倍以上を有する真呼吸。

 その為、本来は肺や内臓、脳や血管に多大な負荷を与える危険な呼吸法。大量の酸素は毒ともなりうる。

 身体を巡る酸素量は倍を超え、真呼吸中は身体中に多大な酸素を供給し肉体活動を高める。酸素と血液を丹田へと循環させ、通常は処理できない酸素量を掛け算式にエネルギーに変換、身体の能力をさらに向上させる。

 その酸素を皮膚から効率よく丹田へと循環させ、肺と内臓への負担を大幅に軽減させる。

 月穂の開発した呼吸法は実現こそとんでもなく難しいが、真呼吸を使う上でこれ以上ない理に叶った皮膚呼吸可能な生物の理想系だ。

 そして真呼吸の多量の酸素からコントロール可能なエネルギーを生み出すもの。

 古代からの生存契約、女系遺伝、エネルギー変換⋯⋯

 人類の各細胞内に共存するパートナー⋯⋯

ミトコンドリアの存在。


 十三はそんな高難易度な皮膚呼吸を会得できる訳でもなくヨガを1時間ほどで終え、二人は部屋へ帰り明日からの鍛錬に備えて少し早い眠りに就く。


(明日から月穂さんは魔素に関する鍛錬が始めるって爺ちゃん言ってたな。

 ヨガ以上に分からない要素だけど、いったい何をするんだろう? 【魔の素】 字で考えると普通に怖いよな)


 などと考えを巡らせてるうちに疲れていたのだろう、直ぐに眠りに落ちた。

 疲れきっていたのかヨガの効果なのか、例の夢もみずに深く闇の中に漂った。





 翌朝、道場で昨日と同じく鍛錬が始まり、朝の鍛錬を終えると正源は伝えた。


「十三は残りの時間をの呼吸を、昨日の月穂さんのヨガの指示に従ってやりなさい」

「⋯⋯え? なんで知ってるの爺ちゃん」

「夜に道場に灯が差しとったから見に行ったらお主らが月穂さんの指示でヨガをしてるのが見えての。

 面白い着眼点じゃわい、皮膚呼吸とは。儂も思いつきもせなんだわ」

「なんだよ、見てたのか爺ちゃん」

「真呼吸の維持が目的のこの鍛錬、成果に繋がるならなんでもやらねばの十三」

「分かった、そっちに集中するよ」

「よし、では月穂さんは地下で魔素鍛錬じゃ。行くぞ」

「はい!」


 少し不安そうな月穂を見て十三は心配になるが、何をするかもわからない魔素鍛錬。自分には何もできない。助言や安心させる声をかけることも。

 月穂はこちらをチラリと見て少し微笑む。


「大丈夫! 頑張るよ!」


と目で言われた気がした。強い人だ、と十三は思った。


 月穂は正源と共に地下に降りるとすでにそこには十和呼と美沙もいた。


「お母さん?」

「待ってたわよ月穂、一緒に手伝ってあげるから頑張ろうね」

「私も手伝うわ月穂さん」


 この薄暗い地下で未知のものを学ぶ不安があったが二人の登場で吹き飛んだ。


「ありがとうお母さん、十和呼さん。地下だしちょっと不安だったんだけど元気出ちゃった」


月穂は心からの感謝を笑顔で二人に伝え、そして軽く頷く。


「いつでも大丈夫です! 始めて下さい!」

「迷いの無い良い目じゃ、では始めるか。まずは魔素について話そうかの」


 月穂は思わずゴクリとツバを飲む。


「その起源は夢に現れる先祖達の時代。空から降ってきた隕石群が元だと伝わっておる。

 それが月からなのか火星からなのか、他の天体や銀河からなのかは不明。それまでは魔素はこの地球には存在しておらんかった。外からもたらされた何かが特定の石や鉱物など反応し、結合し、魔素を生み出し始めたとされておる」

「地球の外から⋯⋯」

「そしてそれまでの世界を塗り替えた。ある程度は見たじゃろう夢の世界の有様じゃ。

 異形が生まれ、魔獣が闊歩し、異能をもたらす。

 その中心、原因たるものが魔素。その名の通り魔の素、魔の素粒子。

 魔物、魔力、魔法、魔石、魔獣、魔人、悪魔、魔神、魔界……

 想像し得る魔とつくものにほぼ関わる魔の元凶じゃ。現代科学での研究が裏の世界では極秘に継承者である一族により世界中で行われておる。

 

 今現在、発見が予想されておる元素、元素と超重元素は120番まで。


 法則外番付  122番

 元素記号 Mm マナリウム


 魔を生む物とされるが利便性もかなりある。

 何よりこの第五の太陽の世代をあの夢のような戦いの場で滅ぼさないようにと研究は進められておるものじゃ」


 月穂は息をするのを忘れてポカンとしている。思考が途中からまとまらなくなったからだ。


(え? 夢の元凶の素? それがここから漏れ出てる? そういえば魔素を取り込む鍛錬って言ってたような⋯⋯

 そんな物を取り込む⋯⋯聞くからにやばそうだけど大丈夫なのかなそれ?)


 月穂が思考の渦に捕らわれているのを見てとった正源は少し間を置いてからまた話し出す。


「ここは今現在、魔素が放出されている世界中に点在している数ある内の一つ。

 幾度の戦いと滅亡を経験した人類が継承と共に受け継いで管理してきた魔窟、現代で策定されている国際基準で言うと英語で統一されておる。

 ダンジョンというやつじゃ」


(もうまるっきりゲームみたい、もしかしたら一族の夢からある程度本や物語になってきたのかな?)


「話をしてても実感はなかろうから実際に感じてみた方が早いじゃろう、美沙さんお願いできるかの?」

「はい。じゃあ月穂、しっかりと見とくのよ」


(え? お母さん?)


 1歩前に出て真呼吸をし、ゆっくりと息を吸う美沙。髪の毛がゆっくりざわめき始める。

 そして⋯⋯言葉を放つ。


『契約者、美沙の名の元に顕現せよ⋯⋯《焔狐》』


 足元に青く光る円陣が浮き上がり、ブワリと青い炎が立ち上がる。

 見つめているうちに炎をが凝縮し、美沙の手に炎でできた狐が乗っていた。

 しかも毛? 火? づくろいをしている。


 月穂の思考が完全に止まった。

本作上、元素 法則外番付  121番 は

ダークマターです●



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