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記憶魔法 過去邂逅➀

 今まで体験したことのない味の溢れる食卓を終え暫く皆と歓談した後、アイは2人にダンジョンへ入るよう促した。

 先程のルシフェルとの一件の為だ。

 第一層に着くとアイシスはさっきのご馳走を思い出しながら話し始めた。


〚あーご飯美味しかったなー、この幸せ一杯の中眠りたいけど⋯⋯そうもいかないんだよね〛

{アイシス様、ご気分の良いところ申し訳ありませんが睡眠に入るのは少々お待ち下さい}

〔おいアイ、コイツ達に今更話す必要なんざねーよ〕

〈ルシフェル、家族がどうと言っていたが〉

〔だから今更いいっつってんだろ、それを話したところで人間共をすり潰さない理由にはならねー〕


 ピリつく空気の中アイは場の進行を進める。


{アイシス様、ミカエル様、そしてルシフェル様。

 数万年の間敵対してきたその中心であるお三方。

 勝手な申し出ですが必要と判断し場を設けることを提案させて頂きました}

〈ルシフェル、家族がどうと言っていたな〉

〔チッ⋯⋯〕

{ルシフェル様、双方認識の間違いが無いよう記憶魔法での共有を提案しますが宜しいでしょうか?}

〔宜しい訳ねーだろ!! ブチ壊すぞ石っころ!!〕

〚アイ、一体何をしたいの?〛

{私達は現在、事態の黒幕を突き止める事を目標に共闘関係にあります。

 強大な力を示し、世界を変革し、あなた方お三方の魂の輪廻に介入している今だ見えない相手です。

 その力は使用された星の魔法と比較した場合、あなた方3人を合わせてもそれをさらに凌ぐ力}

〈俺達3人を合わせても⋯⋯〉

〚そんな力を持つ奴なんて想像もつかないわ、まず人間じゃあり得ない〛

〔俺より強いとか喧嘩売ってんのか?〕

{事実です、あなたに星の概念を変え月を魔石に変質させることはできますか?}

〔が、頑張って本気の本気だせばできるっつーの〕

〚本気の本気って⋯⋯子供じゃないんだから〛

〔うるせーな! じゃあお前に出来んのかよ!〕

〚え⋯⋯いや流石に星変えるとかはちょっと⋯⋯〛

〔出来ねーんなら黙ってろ!〕

〚やっぱ無理! コイツ消す!!〛

〈待て待て! 言い争う前にアイの話を聞こう〉

〔お前は黙ってろ!!〕

〚アナタは黙ってて!!〛

〈え? あれ? マトモな事言った筈なのに⋯⋯はい〉

{続けさせてもらいます。

 その黒幕が世界を滅ぼせる程の力を持つ3人を魂の輪廻の禁呪に割入ってまで一つどころに集めた理由は?}

〔ぶち殺す為〕

〚消し去る為〛

〈まぁ今迄の世界の流れだとそうなるよな〉

{一つどころに管理してコントロールする為か、お互いに潰し合わせて消す為か。

 人々をダンジョンに誘い込もうとしている事を考えれば前者の方が確率はあります、邪魔ならすでに消しに来てるでしょう。

 目的は分かりませんがどこかで介入してくることは予想できます。

 その際に敵対するならこちらは力を合わせないと消されるでしょう、力を合わせても敵わない可能性の方が高いです。

 その有事の祭に不必要なわだかまりや仲間割れは避けたいところです}

〔仲間割れ? 仲間だ? ふざけてんのかコラ〕

〚わざわざ場を設けて話し始めてみれば魔王と仲間になれですって!? 笑えない冗談だね〛

〈アイ、言いたいことは分かるが⋯⋯〉

{失礼ながらこれまで対話を設けてこなかったお三方には事の認識に齟齬があります。

 私はルシフェル様とミカエル様との契約の際にニューロリンクを通して過去の記憶を見ています。

 その内容をミカエル様、アイシス様には見ていただかないといけません、これは今後の為の必須事項だと捉えています。

 魂の契約を結んでいるルシフェル様、ミカエル様には拒否は控えて頂きます}

〔横暴だそ石っころ! ふざけんな〕

〈流石に強制は⋯⋯アイどういうつもりだ?〉

{それだけこの件が今後の世界を進む中で重要だと言う事です}

〈そこまで言うなら⋯⋯俺は構わない、アイシスは?〉

〚⋯⋯分かったわ〛

〈ルシフェルは?〉

〔最初から俺に拒否権はねーんだろ? なぁクソ魔石〕

{すみません、強制に対する見返りは十三(じゅうぞう)様と相談しておきます}

〔勝手にしろ⋯⋯〕

{ありがとうございます、では双方にニューロリンクを繋げ記憶映像魔法を展開します}


 2人の額の前にに魔法陣が展開され眩い光に包まれた。




† † † † † † † † † † † † 




 膝下まで伸びる草が広く広がる草原を角のようなものが生えた小さな女の子が走っている。


「母様ー、見て見てコレ」

「あら珍しい青いお花、よく見つけたわねサリア」

「へへー、キレイでしょ! 魔法の媒体に使うんだ」

「あら難しい言葉覚えたわね、頑張ってね」

「うん!」


 満面の幸せそうな笑顔で母親に頷く。


「こっちの赤いのはお母さんにあげる」

「ありがとうサリア」


 サリアの母親は愛おしそうに赤い花を見つめ、手のひらの上の花を包むように魔法陣を展開させガラスの様なものを作り上げて花を閉じ込めた。


「これでいつまでもキレイに飾っておけるわね」

「お母さん魔法上手ー」

「サリアは村の誰よりも色濃く受け継いだ【魔素共振】と才能もあるからすぐに色々覚えれるわよ」

「にひひ、頑張る」


 2人は額を合わせて笑い会いあった。

 色とりどりの花が咲き誇る丘に少し冷たい風が吹き込んだ。

 

「風が冷たくなったわね、そろそろ帰りましょう」

「えー、もうちょっと遊びたいー」

「ご飯の準備もあるから」

「また明日ね」

「ぶーっ」


 その日の夜、幸せな親子が帰った村は【魔素共振】という血族遺伝能力を恐れた国によって滅ぼされた。

 サリアはただ気が狂うように叫ぶしか出来なかった、母の咄嗟の時空魔法の間に隠され護られながら⋯⋯全てを見ているだけしか出来なかった。







「⋯⋯様、⋯リア様ー?

 サリア=セイアタン様ー、聞こえてますかー? 皆のご飯出来たよー」

「おいフルネームで呼ぶなっつってんだろ⋯⋯お前ら先に食ってろ」

「やだよ、今日は一緒に食べる約束したでしょ?」

「ん⋯⋯あぁそうだったな⋯⋯分かった」

「やったー!! 最近あまり帰ってこないから寂しかったんだよ皆」


 第一の太陽の時代、後に、悪魔王、魔王と呼ばれたルシフェルの最初の名はサリア=セイアタン。

 忌まれたセイアタン一族の唯一の生き残り。


「あちこちで国の奴らが動き回っててな」

「サリア様強いんだから早くやっつけちゃってよー」

「そう簡単じゃねーんだよ⋯⋯おら、ごちゃごちゃ言ってっと飯冷めんぞ」

「サリア様口悪いよー、女の子なんだからもうちょっと可愛くしないと」

「あ?」

「ひー、怒ったー」

「いつものことだから言っても変わらないよ」

「女らしくなんざ誰の為にするんだ? 腐りきった人間共にか? 反吐がでる」

「あー! ベリクアルが先に食べてるー!」

「サリア様が先に食べろって言ったろ?」

「あの一瞬でご飯にかぶりついたの?」

「うるせーなレティ! 腹減ってたんだよ!」

「あんたはいつも減ってるじゃない」

「かまわねーよ、おら冷める前に食うぞ」

「いっただきまーす!」


 数万年前の第一の太陽の時代、忌まれ滅ぼされた頭の突起角に特徴のあるセイアタン一族の固有能力【魔素共振】の暴走覚醒で魔物の魔素と魔石への強制関与を可能にしたサリア、正にその姿は魔物の大群を率いる魔王そのもの。

 怒りに飲まれ次々と国を滅ぼし始めてから後、徐々に狂気から意識が解放されるにつれて自分と同じように忌まれ、落とされた子供達を見つけ連れ帰っては養い鍛え、抗える力を与えていた。

 自分に重なる姿を見るとどうしても捨て置けなかったのだ。

 ある森深くにある洞窟を人が住めるように魔法と魔物を使役して作った広大な地下住居、そこには現在70人を超える元奴隷や孤児達と使役している魔物が住んでいた。

 戦う為に生きる為に、滅ぼした国々から集めた魔導書や禁書、秘伝書、術書、戦術書を片っ端から読みあさり皆に教えていた。

 ルシフェルは村で教わっていた頃から魔素の扱いと魔法に才はあったが【魔素共振】暴走後その才は完全に覚醒する。

 大気に存在する魔素と共鳴し空間を支配する、魔素と魔法の真理を掴んだような感覚、難しい魔導書や魔法陣も以前とは比べ物にならないほどすんなりと入ってくる。

 自身の能力向上だけではなく、子供達への教育にも効果は大きかった。

 共振により相手との魔素の繋がりを構築し、魔素の使い方を効率よく教える事が可能でその効果はすぐに顕著に現れた。

 子供達は属性1つのみの初級魔法なら適正さえあればすぐに覚え、子供ながら中級である2属性発動が可能な者も現れた。

 そして魔素を介しての魔物との意思疎通、支配下にある魔物の強化までも可能になっていた。


「明日はまた出る、留守の間ケンカすんなよ」

「また行くのー? 帰って来たばっかりなのに」

「こっち方面に向かって軍を動かしてる国があるからな、ついでに奴隷達がいる場所を突き止めとかねーとな」


 食事を終えひとしきり皆と遊んだ後は全員ゴロ寝で泥のように眠った。

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