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英雄2人と魔王

 

 アイシスは時空が半円形に歪んだ箇所が落ち着き、時空魔法の防護膜が収縮して消えるのを待ってから、バトルマスターが居たはずの所へと近付いた。


〚なんだろ?〛


 まだ少し燻ぶる魔法痕を見るとバトルマスターの衣装の拳までカバーしている腕部分と脛からつま先までの武闘家用の靴の様なものが落ちていた。


〚これは彼が使えそうだね〛

{アイシス様、強制覚醒の手段をとった事お詫びします、ありがとうございました}

〚いいよそれは、それより彼の状態は?〛

{致命傷は避けていますが臓器に損傷がありますので治癒が必要です}

〚分かったわ〛


 アイシスはまるで相手の痒いところをかくような軽い感じで治癒魔法を瞬時に展開させた。


「ぐっ⋯⋯う⋯⋯」

〚どう? 楽になった?〛

「ありがとう月穂(ゆえ)⋯⋯」

〚私は月穂さんじゃないわよ〛

「え? どういう⋯⋯」

〚あなたの中にも2人いるでしょ? それと同じ、私の名はアイシス。

 ミカド⋯⋯じゃなくてミカエルの仲間〛

「そっか、月穂の中の⋯⋯ありがとうございました」

〚お礼はいいよ、それよりミカエル出してくれるかな?〛

「ミカエルを? 分かりました」


 言われるまま十三(十三)は心層に落ち、ミカエルを起こした。


〈ん⋯⋯んん⋯⋯〉

〚起きなさいミカド、ていうかあの危機的状況で中で寝てたのあなた?〛

〈おはよう月穂さん⋯⋯ん⋯⋯あれ? え? この気配、感覚⋯⋯まさか!!〉

〚そのまさかよ、久しぶりねミカド〛

〈アイシス!! 良かった! 起きたのか!〉


 直ぐに月穂ではない事に気付いたミカエルはガバッ! とアイシスに抱きついた。


〚ちょっと苦しい⋯⋯〛

〈良かった! この時代でもちゃんと会えた⋯⋯本当に⋯⋯うぐっ⋯⋯〉

〚もう、泣かないのミカド〛

〈そう言うお前も泣いてるじゃないか〉


 2人は暫く抱擁を重ね互いの存在を確かめる。


〈転生毎だけど今回のイレギュラーでどうなるか心配だったんだよ、月穂さんの中にいるだろう事は気付いたんだけど起きてこなかったから⋯⋯もしかしたら⋯⋯と〉

〚数万年の腐れ縁よ、途切れる気なんかしないわ〛

〈ははは、そうだよな〉

〚それはそうと⋯⋯

 奴も⋯⋯いるんでしょ?

 何で消さないの?〛


 アイシスは急に鋭い目つきで疑問を飛ばしてきた。


〈それにはいくつかの事情があって⋯⋯〉

〔ゲームが原因だろうが〕

〈ちょ!?〉

〚!? 今の⋯⋯奴!?〛

〔うるせーな、別に何もしねーから騒ぐな〕

〚人類の敵!! 今すぐ消してやる!!〛

〈ちょっと! 落ち着けアイシス!!〉

〚コイツにどれだけの人達が殺されたのか忘れたの!? 世界を何度も滅ぼされてるのよ!! 人類の敵よ!! 私達は滅びの記憶を後世に伝える為に禁忌を犯してまでそれを遺伝の舟に刻み込んだのよ!!

 家族を⋯⋯皆を返しなさいよ!!〛

〈相変わらず五月蝿い女だな⋯⋯

 昔からテメーが一番嫌いなんだよ、いいぜ相手してやる〉

{お待ちください、アイシス様が中にいるとはいえ月穂様のお体です、危害が及ぶ行為は契約違反となりルシフェル様の魂の消滅を意味します}

〈チッ⋯⋯やる気なのはあっちだぜ?〉

{どうかアイシス様も苦しいとは思いますが気を静めて下さい}


 契約違反を騙されてはルシフェルもどうしようもない為、両手を上げて害意が無い事を示す。


〈人類の敵だ? 家族を返せだ? じゃあお前らクズ人類共が先に虫をすり潰す様に皆殺しにした俺の家族と村を返してくれんだよなー?〉

〚何? 何の事??〛

〈ケッ⋯⋯隠蔽して知ろうともしなかった偽善者共が、権力と偽善を盾にした正義ごっこは楽しかったか?〉

〈一体何の話を⋯⋯〉

{ルシフェル様、その件は今はそこまででお願いします。

 後ほど時間をとって話し合いの場を}

〈チッ⋯⋯〉

{アイシス様も知る必要がある事です、よろしいてすか?}

〚わ⋯⋯分かったわ〛


 ルシフェルの暴走、最初はコントロール下に無かったとはいえ今まで善と悪として対峙し対話という対話をしてこなかった双方、この距離で戦闘こそすれ会話をする事自体がこれまでほぼ無かった。


{では一旦地上へ戻りましょう。

 これまでの経緯と今の状況説明、そして上にいる皆さんにアイシス様を紹介もせねばなりません。

 申し訳ありませんが一時皆さん心層へと戻って下さい}

〚分かったわ、全て後で説明してもらうわよ〛

〈ああ、アイシス本当に会えて良かった、また後でな〉

〔俺は寝る〕


 皆が心層に落ちると十三と月穂は顔を合わせる。


「ごめんね、また何も出来なくて」

「いや、予想を遥かに超えてあのゴーレムが強すぎたんだよ。

 何で爺ちゃんの技使ってくるのか、後で爺ちゃんに聞いてみないと」

「帰ろう、皆のとこに」

「あぁ、⋯⋯あれ? 何か落ちてる」


 十三は鈍く光る地面に落ちている物を拾い上げた。


「何だこりゃ?」

「ルービックキューブ?」


 落ちていたのは素材のよく分からない鈍く光る多面体だった。


「1⋯2⋯3⋯⋯⋯⋯11⋯⋯13面体? どうやって作られてるんだコレ?」

「アイ分かるコレ?」

{私のデータにはありません、鑑定を通しましたが素材、用途、効果、全て不明です}

「アイにも分からないのか? 何だよこれ」

「一応持っとく?」

「一応ドロップ品だしとっておこう」

「じゃエルフポーチに入れとくね」


 月穂マジックバックのエルフのポーチに入れると帰還ゲートを開いて地上へと戻っていった。





「ただいまー」

「おかえりお兄ちゃん、月穂さん」

「朱里、皆は?」

「もう食卓にいるよ、一緒に食べよ」

「分かった、すぐ行くよ」

「私も着替えたらいくね」


 どうやら既に夕食の準備が終わり食べ始めようとするところだったらしい。

 十三と月穂は汚れた服からすぐ着替えて客間へと向かった。


「おかえり二人共、座って座って」

「冷める前に食べましょ」

「わー、美味しそー!」


 いただきますをして食べようとすると、


〚月穂さん!! ちょっと待ったー!!〛

「うわ!」

「どうしたの月穂?」

「え? あーえっと⋯⋯」

〚いきなりゴメンね⋯⋯食事⋯⋯一万年以上前ぶりに起きて⋯⋯だから⋯⋯あの⋯⋯〛

「食べたいの?」

〚その⋯⋯は、ハイ⋯⋯〛

「ちょっと月穂どうしたの急に独り言⋯⋯ダンジョンで頭打った?」

「紹介もしないとだし良いよ、代わってあげる」

〚ありがとう月穂さん!! 大好き!!〛

「紹介? 誰の事言ってるの?」

「アイシスさんて言うんだけど、十三の中のミカエルさんやルシフェルさんと同じように私の中にも眠っていたの、今日の探索で十三の危機に起きて助けてもらったんだ。

 いいよ、代わろうアイシスさん。

 私は眠っておくから」


 スッと目を閉じると今度はゆっくり目を開けると青い月穂の瞳ではなくその大部分が金色だった。


〚初めまして、アイシスです。

 ミカエルとは数万年来の仲間です、宜しくお願いします〛


 皆、一斉に挨拶する。


「ミカエルさんもだけど私達のご先祖様⋯⋯だよね、おばあちゃんのおばあちゃんのもっともっと昔の」


 朱里が無邪気に嬉しそうに質問した。


〚そうだね、でも私達だけから過去の滅びを、夢を語り継いでもらったわけじゃない。

 他の仲間の血筋の人達もいる。

 でも分かるわ、ここにいる人達は私とミカエルの血と夢を受け継いでいる。

 遠い遠い子孫たち、こうして会えて本当に嬉しい〛

「アイシス様、お会い出来て光栄です。

 ささ、ご飯も冷めてしまいますので話しは食べながらでもしましょう」

〚うん、そうしよう〛


 並べられた様々な色とりどりの食事にアイシスは最初の手をつけるか迷った。


「どれも今まで見たことのない料理と香り! どれから食べたらいいの!?」

「じゃあまずはきっちりと出汁を取ったお味噌汁からどうぞ」

「お味噌汁?」

「その手前にあるスープだよ、お箸使えないだろうからスプーン使うか直接口付けて飲んで」

「これね、分かった」


 スプーンを掴み、すくって一口飲む。


「んー!!!」

「大丈夫アイシスさん!? 熱かった!?」

「違うの! 少ししょっぱいのに優しくていい香りが広がって⋯⋯んー!! 美味しい!!!」

「良かったわお口にあったようで」

「こっちの茶色い岩みたいなの、コレは何?」

「これは唐揚げ、鳥の肉を衣を付けて油で揚げたものよ」


 興味津々にフォークで刺して口に運ぶ。


「んー!!? カリカリの中にジュワーって美味しいのが詰まってる! たまんないー!! こっちは? こっちは!?」

「こっちはサパっていう魚のの味噌煮」

「!? 魚の臭みが無い⋯⋯昔の魚はみんな臭みがあってあんまり好きじゃなかったんだけどコレは⋯⋯」


 アイシスは色とりどりの久しぶりの食事に歓喜に震えながら子孫⋯⋯遠い血のつながる家族との時間を過ごした。


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