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アイシス

 掻き消えた魔素の中心部から声が聞こえた。


〚ふぁあ⋯⋯奴の寝首をかこうと思って今まで表に出なかったたけど起こされちゃったか⋯⋯まぁ危機的状況みたいだし仕方ないか。

 さて、現実には初めましてだね月穂(ゆえ)さん、私はアイシス、やっと会えて嬉しいとこだけどとりあえず今は心層でゆっくりしてて、ちょっと準備運動しないといけないから後で話そう〛


 月穂の瞳は蒼くそして金色に輝き、頭上に展開していた光輪は輝きを増し、二重構造になりそこには古代の魔象形文字が細かく刻まれている。


〚さて、変わった魔石の大賢者さん⋯⋯アイだっけ?〛

{はい、強制的に覚醒させてしまい申し訳ありません、この状況をリスク無く確実に打破出来る手が他に有りませんでした}

〚私の事は例の2人から聞いてたんだよね〛

{はい、全てではありませんが古代から収集しているデータにも貴方の事が数多くあります}

〚滅びた時代を幾度も救うことの出来なかった虚像の英雄とか?〛

{いえ、逆です。

 貴方やミカエル様方がその都度世界を舞台に戦わなければ今頃は人の世は残って無かったのは事実です}

〚まぁその元凶が今は目の前の彼の中にいるんだけど、私が世界を救う為に奴を彼と共に消し去る選択をしないとでも?〛

{貴方にはその決定も可能です}

〚じゃあミカド、あー今は後世での名前のミカエルを使ってるんだっけ? 何で奴を消さずに馴れ合ってるのか分からないけど、奴が世界を滅ぼす前に私が遠慮なく消させてもらうわ〛


 思考加速の中でやりとりをしているアイシスとアイを、事態を一瞬把握出来ずバトルマスターは動かずに少し様子を伺っていたが、直ぐに脅威対象を月穂に切り替えて構えを取る。

 次の瞬間には月穂の顔の前に拳が迫っていた。

 しかしその拳が月穂に届く事はなかった。


〚人が話してる時は邪魔しない事、覚えときなさい人形さん〛


 アイシスの顔とバトルマスターの拳の間には障壁が貼られていた。

 月穂の水の障壁魔法【水ノ離宮】、まだ未熟な彼女が張ったそれにそれほどの耐衝撃効果は無かったが、それをアイシスがすでに強化していた。

 水の膜がまるで隔絶された空間の壁のように微動だにすることなく佇んでいた。

 バトルマスターは流れるような連撃をオーラを込めて放つがその薄い水膜を破ることは出来なかった。


〚終わり? じゃあ準備運動始めるね〛


 スッと両手を開いて前に突き出すと異なる属性が4つ親指以外の8本の指に灯される。

 初級属性の火、水、無、そして中級魔法の重と光を合わせた時空魔法。


〚月穂さんにレクチャーも兼ねてちょっとだけ説明しようか。

 まぁ片方の手だけでも可能なんだけど、同じ構成を右と左で同質同量でやると消費魔素と難易度は跳ね上がるけど威力と安定力が増すんだよね、左右の構成や調整が少しでもズレると魔法と周囲が消し飛んじゃうし、この魔法の対処法が無いわけでもないから保険として私はいつもやるんだ。

 準備運動ついでに威力も上げて奴もまとめて消えてくれれば万々歳〛

(アイシスさん!? 十三(じゅうぞう)は!? 十三ごと消してしまうんですか!?)

〚彼の中の奴は世界を滅ぼす元凶、これまでに幾度も戦い幾度も世界が滅亡と再生を繰り返す事になった。

 何をおいても必ず消さなければならない対象でしかないわ〛

(そんな⋯⋯アイ! 止めて!!)

{アイシス様、此度の世界の混乱にルシフェル様は関わっておりません。

 現在、黒幕を突き止める為に共闘をしています}

〚共闘? 冗談にも程があるわ! 奴が本当に関わってない証拠と裏切らない確約はどこにあるの!?〛

{ミカエル様も含め、魂の契約を結びました。

 ルシフェル様には虚偽も裏切りも不可能です、契約を犯した時点で虚無魔法により魂を消滅させる事になっています。

 これが契約内容です、ご確認下さい}


 アイはそう言って魔素で構成した契約書をバラバラとアイシスの顔の横に展開させる。


〚⋯⋯〛


 その間にもバトルマスターは障壁に向かって連撃を繰り出し続けていた。


〚五月蝿い、邪魔しないで大人しく待ってなさい〛


 残っていた親指に精と無の混合属性、中級魔法の創造を灯すと小さな魔法陣を展開させる。


【バルタロンカ】


 輝く鎖がまるで元からそこにあったかのように一瞬にしてバトルマスターに絡みつく。


(古代語! しかも詠唱破棄⋯⋯それも8つもの他の属性を灯しながら⋯⋯)


〚確かに契約を見る限りバカな事は出来そうにないけど、それでも奴のこれまでの悪行を許して共闘とか不可能よ!〛

{過去も含め、実はその黒幕がいてルシフェル様は知らず動かされていたとしてもですか?}

〚!?〛

{ルシフェル様とミカエル様、双方共に十三様の魂に混在させたのは誰か。

 ルシフェル様自らそんな事をする意味も利も有りません。

 禁呪魔法の魂の輪廻に強制介在、星々の軌跡を利用した途方もない年月を費やして準備してきた星系魔法、概念系魔法を使い月を魔石に変質させてまでの魔素の補充と拡散、ダンジョンの復活と生成、そして呼吸法や魔素等の人類へのレクチャーと解放。

 黒幕の意図や目的は今までの世界に影響を及ぼしてきたルシフェル様の人類への憎悪と滅亡願望とは全く違います。

 人類、生物を強化、成長を促しダンジョンへ導こうとしています。

 その意図は分かりません、このような星を強制的に変化させる事が出来るような者が善であるかは不明です。

 アイシス様、相手はあまりにも不気味で強大です。

 ルシフェル様の怒りの矛先は現在は黒幕へと向いています、もしルシフェル様が現在の世界滅亡への行動を取る意思がないのであれば、破れない契約のもと世界最強の一角との共闘は有意義だと考えています}

〚だとしても⋯⋯〛

{疑念も御もっともです、しかし世界を動かす黒幕が他にいる事実と真の滅びが待ち受けているかもしれない懸念があるのも事実。

 ルシフェル様の件、人類滅亡の危惧を取り払ってからでは叶いませんか?}

〚んー! ズルイ!! 人類滅亡を引き合いに出されたら返事選択出来ないじゃない!〛

{すみません、しかし黒幕の件は必須です、何がなんでも突き止めて計画や目的を知らなければいけません}

〚んー! んー!! んー!!!

 わーかったよ! ミカドもそうなの? でも少しでも奴が変なことし始めたら秒で消すからね!! 腐っても悪魔王と呼ばれた奴だもの〛

{その時はお手伝いします}


 とてつもない力を有する未知の相手から人類を守る為にと説得され、アイシスは不満ながらも渋々頷いた。


〚この不満、ぶつけさせてもらうよゴーレムさん〛


 アイシスは両手の指に灯した8の属性を輝か詠唱と魔法陣構築に入る。

 古代語で詠唱をしながら指をまるで楽器でも奏でるように美しく空を踊らせて魔法陣を構築させていく。

 大小、円、多角、帯状等様々な魔法陣が描かれ球体の魔法陣の中に埋め込まれていく。


(とてつもない量の詠唱と魔法陣⋯⋯こんなのどうやって!? しかも両手同時に2つなんて⋯⋯)

〚久しぶりだから時間かかっちゃったな〛


 2つの球体魔法陣の中には無数の魔法陣が蠢き、まるで小さな宇宙が存在しているかのような美しい様相になっていた。

 アイシスは光る鎖に絡めとられ身動きの出来ないバトルマスターに視線を流すとニコリと笑う。


〚鬱憤ばらしの相手ありがとう、そしてごめんね。

反界魔法⋯⋯【カグラストロン】〛


 2つの球体魔法陣がバトルマスターを挟む様に回転し始めると周囲に時空結界が多重に展開される。

 徐々に球体はバトルマスターへと収束されていき1つに重なる。

 瞬間、結界内で1粒の光が生まれると共に大爆発を起こし結界内の全ての物質を消し飛ばした。

 球体の中にはもはや何も存在していない、虚無の様な空間だけが残されやがて結界が収縮しまるで何も最初から無かったように掻き消えた。


〚あー、スッキリした〛


 満面の笑みでバトルマスターが居たはずの空間をアイシスは見つめ、驚愕に口が開いたままの月穂が心層から見つめていた。

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