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バトルマスター

 世界中がこぞってパンゲアオンラインに殺到している中、十三と月穂は祠ダンジョンに定期調査を兼ねて探索をしていた。


「くれぐれも深層への亀裂には近づくでないぞ」


 事あるごとにイレギュラーが発生するこの2人を懸念して正源にはきっちりと釘をさされた。

 その後ダンジョンに入り順調に最深部のボスへと辿りついていた。


「変化は感じられなかったね、戦利品も変わり映えなしか」

「あぁ、魔物の種類も同じだし内部も変わってない」

「後は最後のボスゴーレムだけだね」

「気を引き締めていくぞ」


 ボス部屋中央に座していたゴーレムはまるでモンクのような石の衣装を纏った姿をしていた。


「近接系かな」

「ポイね、アイあれは知ってる?」


 月穂の胸から下げられたアイはキラリと光り応えた。


{あのゴーレムは近接戦闘特化 ボスゴーレム Ver【バトルマスター】です。

 ゴーレム特有の防御力を放棄した古代石材技術を用いた柔軟な石で構成されています。魔法も放棄されており代わりに魔素をオーラに転換して戦闘を行う特殊タイプです}


「オーラを⋯⋯」

「手強そうだね」

「月穂、遠距離先制と自身に防護城壁を」「分かった。

 『星を包む母なる水よ 全てを遮る水流を持って 包み護る水宮となれ⋯⋯【水ノ離宮】』


 月穂は水の防護膜を張ってから得意の光魔法をバトルマスターに放つ。


『穢れ無き太陽の力を集め放て⋯⋯【光牙】』


 放たれた光線はバトルマスターを貫き後方の壁を穿った。

 ゴーレムの胸には穴が空いていた。


「ダメ、ボスゴーレムにはやっぱり効かないみたい」


 以前のボスゴーレム達同様、自身で身体の一部を変形させて穴を開けて光線をいなしていた。


「ゴーレムと魔法は相性悪いねやっぱり、私はサポートにまわるね」

「頼む」


 十三は腰を落とし気を練りオレンジ色の魔闘気を発動させると、バトルマスターはそれに呼応するように動き出し同じようにオーラを噴出させた。


「すこいオーラだな、威圧感が半端な⋯」


 決して気を抜いていた訳ではない、気付いた時には壁に向かってぶっ飛ばされていた。


「グッ⋯⋯!!」

「十三!!」


 吹き飛ばされながら視界に入ったバトルマスターの姿を見て分かった。


(あの態勢⋯⋯俺は蹴りを食らったのか?)


 壁に激突し石と共に地面へ崩れ落ちる。

 直ぐに立ち上がり追撃に備えようとするがゴーレムはその場から動いてい。

 次が来る前に十三は後ろ足を地面に叩きつけた。


【水鏡八卦】


 足元から蜘蛛の巣上にオーラが地を這い八卦の陣を描く。

 着いて行けなかったスピードに対処する為に自動カウンター技を発動させ、さらに魔瞳術を発動させる。


(燃費悪いが仕方ない、スピードとクセに少し慣れさせてもらう)


 八卦が展開されるのを見てゴーレムはその場から消え、次の瞬間には重い蹴りが構えた十三の左腕に食い込んでいた。


(グッ⋯⋯魔眼の空間認識でもギリギリか⋯⋯自動カウンター無かったら間に合ってなかった)


 ゴーレムは今度は身体を捻り、さっきの蹴りで発生した反動を利用し、さらに逆手でオーラを噴出させて身体を回転させソバットを入れる。

 さらに間髪入れずオーラの反動を利用して回転をあげた連撃を叩き込んできた

 十三は連撃に耐える為、腕に地属性の粒子を纏わせる。

 ゴーレムの連撃が徐々に最適化されスピードが上がってきた。


(まだ上がるのか!?)


 ついに自動カウンターが追い抜かれゴーレムの蹴りが十三の腹にめり込み吹き飛ばされた。

 壁に衝突する直前、ゴーレムは驚愕のスピードで十三の横に追いつき上から背中にエルボーを叩き込み十三は壁に激突する事なく地面にめり込んだ。


「グァ!!」


 次の瞬間、地面から衝撃の反動で浮いた十三を蹴り上げ天井に埋め込んだ。


「グハッ⋯⋯」

「十三⋯⋯」

{十三様、先程までの攻防からあのゴーレムのスピードとパワーは少なく見積もっても十三様と30%程の差があります。

 サポートが必要ですか?}

「グッ⋯⋯いや⋯⋯アイ⋯⋯お前は月穂⋯⋯を⋯⋯護れ」

{分かりました、しかし危険と判断した場合は戦闘に参加、場合によっては強制的に代理戦闘モードへと移行します}


 ゴーレムは天井にめり込んだ十三を見上げたまま立っている。


(毎回思うけど⋯⋯ここ初心者試練の祠だよな⋯⋯? ボスだけ戦闘力と能力の桁がおかしいんだよ⋯⋯!)


 十三は天井に張り付いたまま心の中で悪態をつき、気、魔素、オーラを全開で巡らせる。

 赤黒く変色していた目や髪の毛を波立たせ、頭の上に同色の光輪を発現させる。

 ゴーレムが膝を曲げて跳躍しようとする直前、十三は天井を蹴りゴーレムへ彗星のように軌跡を残して強襲する。

 互いの拳がぶつかる直前、十三は一瞬で左手からオーラを噴出させ軌道をずらし、ギリギリでゴーレムの拳を顔の横にやり過ごすと右足のオーラを足場に反動をつけ、さらに勢いを上乗せして拳を叩き込んだ。


「ガゴン!」


 と重い音が鳴りゴーレムは地面へと戻され土煙と共に埋もれた。


「うし⋯⋯まずは一発!」


 地面に立った十三は直ぐにオーラを練り直す。


(目を離すな⋯⋯対応できなかったとはいえカウンター技に頼るのは悪手だった⋯⋯五感全てで知覚出来ないといずれやられる⋯⋯)


 土煙からゆらりとゴーレムが立ち上がってきた。


(魔眼のおかげで空間把握はできている⋯⋯奴の動きの全てを神経研ぎ澄まして捉えるのんだ!)


 土煙が霧散したと同時に視界の右端に揺らぎを捉えた。


「グハッ!」


 ゴーレムの左拳が横腹にめり込む。


(返しが来る⋯⋯もっと集中しろ)


 右の拳がストレートに腹を狙ってくる。


「ゲハッ!」


 身体をくの字に折られさらに下からの蹴りが鳩尾を狙う。


 ドン!!


 腕をクロスさせて蹴りを防いだ。


(狙いが分かったから防げた⋯⋯が、次は⋯⋯)


 少し浮き上がった身体を上からエルボーで落としにきた。

 クロスして下からの蹴りを防いでいた左手からオーラを強く短く放出し横に逃れてエルボーは空を切った。


「フーッ⋯フーッ⋯⋯」

(組み合ってる方が読みやすい⋯⋯けど⋯⋯嵐の中に飛び込んで行くのは中々キツイな)


 ゆらりとゴーレムは十三へ向き直ると構えを変えた。


(!?⋯⋯あの構え⋯⋯古武術!?)


「ゴーレムの構え⋯⋯十三と同じ」


 まるで鏡合わせのように向かい合う。


(まさか俺の古武術を⋯⋯この短期間で!? いや⋯⋯逆にこれは好都合、古武術の動きなら知っている、先が読める。

 それに相手はゴーレム、無機物は魔素をオーラに変換できても生体特有の気は練れない)


 驚いたがすぐに勝機とみて気を練り直す、が次の瞬間その考えが誤りだと気付く。

 ゴーレムはノーモーションでゆらりと、まるで歩くように十三の横に立ち並ぶ。

 全身の毛が逆立った。

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