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解放

 世界中に異界ダンジョンへのゲートが産まれ始めてから1週間、世界は混乱に陥ったままだった。

 【夢袖(ゆめつぐみ)】【DoS】などの組織が国と共同で場所や数の調査と確保を試みているが、ゲートは突然に家の敷地内やオフィス、山や川の中、どこにでも秩序無く現れた為その殆どがまだ把握できていない。

 その間にもフォロワー数や人気と注目を得たいSNSインフルエンサーや、度胸試し、怖いもの見たさでゲートに入る一般の人々が後を立たず、この一週間で世界で数十万人の行方不明者が出ており、物流や経済も停滞し、治安も崩れ始め莫大な損害が出始めていた。

 それでもまだ電気や水、ネット等のライフラインはなんとか国主導で確保はできている状態だった。

 各国共にある程度把握出来るまでの間、不要不急の外出禁止とゲートへの侵入禁止令を発令させるが、外出が出来ない以外は直接何も被害が出ていない為に一般市民の危機意識が思った程高くなくあまり効果を上げていなかった。


 裏の世界では物理的に人が足りずゲート管理と封印は遅々として進んでいない。

 そんな中、パンゲア創世記内での吸血姫マリアにより世界の隠された歴史と呼吸法や魔素、魔法の存在が世界中で拡散されてしまい裏の世界も混乱に陥る事態だった 。 人々はそんな裏事情も何も知らず吸血姫に熱中していた。

 彼女の呼吸法サポートが始まってからまだスキル獲得者は出ていない。

 ゲームシステムのサポートがあるとはいえやはり相当難しいようだ。

 掲示板やコミュニティでは考察が繰り返され議論されていた。


「スキルの呼吸音、独特だったよな」

「大量の酸素を運用するみたいだけど普通に大きく吸ってもあんな音鳴らないよ」

「何かコツがあるんだろうけどねー⋯⋯」

「口笛や自転車みたいに1回できたら忘れないって言ってたね」

「右の肺で吸って左の肺で吐くんだ!」

「いや逆だ!」

「空気から酸素だけを吸い込むんだよ」

「それ呼吸法でどうにかなるもんじゃないだろ」

「運動という運動を全くしてない弱肺民でもできるのかな?」

「それよりサポートの途中にサラリと言ってた【成功した時の最初の一呼吸、予想の上をいく苦痛だから覚悟はしとくように】が怖くてしょうがないんだけど」

「そんなもん何もかもマリア様のご褒美の前では何の障害にもならんわ!」

「俺はこの新世界ゴールドラッシュの波にのるぜ!」

「過呼吸で倒れそうになったんだけど⋯⋯」


 そしてそんな騒動の中、国の規制をくぐり抜け1つの動画がアップされた。

 ダンジョンドロップのメッセージプレートを世界に公表したお面の戦闘集団からのダンジョン攻略続編。

 魔法、オーラ、様々な異能を駆使してダンジョンを攻略してゆく内容は衝撃的だったが、そらよりも今回注目を集めたのはドロップアイテムだった。

 1人がザックリ切れていた腕にドロップした小瓶の液体をかける、すると少し煙を上げながらパックリ開いた傷口が綺麗に閉じてしまった。

 キラキラと中に炎が見える石を魔物に投げると一瞬で魔物が炎に包まれたり、宙に浮かび煌々と光を放つ石や、炎を纏った短剣、明らかに許容量を超えた物が吸い込まれていくカバン。

 全てがファンタジー世界の空想のアイテム達。


「ヤバイのキターッ!!!

「傷口グロ!! アウトー!! おえっ⋯⋯」

「あれポーションか!!?」

「マ、マジックバック⋯⋯⋯⋯」


 お面の1人が話し始める。


「こんなの序の口、攻略進めるととんでもアイテムで溢れかえるぜ」

「仮想世界のゲームで暴露されたように、呼吸法や魔法は裏の世界では周知の事実、奴らは秩序を守る為と言いながら太古から存在する歴史と異界ダンジョン、そこで手に入るアイテムを独占してたんだぜ、とんでもねー奴らだろ?」

「我々は簡単に言えばそいつらの反組織勢力、少数故に抑えられてきたがそれもここまで。

 魔素とダンジョンが表に出てきた今、俺達は隠してきた奴らから全てを全人類に解放する、我々に付いて来たい者は仮想世界で呼吸法を見につけろ、全てはそれからだ」

「あー後な、壊れた物流やら経済やら世界やらを心配してる奴ら、この先の世界でそれは異界の遺物がひっくり返すから心配すんな。

 これから先は潜り、狩り、神秘を持ち帰る、それが繁栄への近道だ。

 今までなんで表にそんな遺物やアイテムが出てこなかったかって?

 表世界に魔素が無かったからだ。

 魔素が存在しない場所ではそれらはただのガラクタ骨董品でしかない」


 暴走者達はこの混乱した世界を逆手に取り、世界を悪に、自分達をヒーローに仕立て上げようとしていた。


「国はずっと隠してたのか!?」

「だから権力は信用できねーんだよ!!」

「解放⋯⋯解放軍⋯⋯」

「おれは入るぞ!! 権力者に良いように動かされる世界なんざもうゴメンだ!!」

「マリアちゃんもこっち側かな?」

「ファンタジー世界万歳!!」

「俺達は冒険者になれるのか?」

「アニメや小説見すぎだろ! って言いたいけど⋯⋯現実なんだよなこれ」

「俺、病気の妹の為にエリクサー取りに行くんだ」

「フラグ立てるのはやめとけよー、マジで死ぬんだから」


 お面の1人は一呼吸入れて改めて話し始めた。


「古代から様々な遺物やアイテム、魔法や能力が魔素絡みで数多く存在したが、そっち方面に詳しくない者は日本のファンタジーアニメや漫画、小説を読んでパンゲアとかいう仮想空間のゲームを呼吸法取得も兼ねて慣れておくといい。

 此度の世界改変、どうやってかは知らないが首謀者は世界に馴染みやすくする為かは知らないがそういった世界観、いわゆるファンタジーゲームの様な仕様を取り入れている節がある。

 まぁ追々分かってくるだろうが、魔素や魔法を扱うにはイメージが重要になってくるからそういう知識は入れておいた方がいいと言う事だ」

「頑張ってね皆ー、近々また攻略配信するから見逃さないでねー、キャハハ!」


 あまり喋ってなかった女性の予告で配信は終わった。

 その後、パンゲアオンラインをプレイする為に世界中がドリームダイバーを発注した。

 世界が混乱し経済、物流が止まっているに関わらすドリームダイバーは在庫切れを見せる素振りもなく世界中に届けられた。

 誰がどうやってこの事態の中届けたのか、家のチャイムが鳴ると玄関前に【DREeM】社のロゴが入った箱が置かれていたが、配送者の姿を見たものは誰もいなかった。

 そんな不気味な企業を不審に思ってドリームダイバーを購入しない者も多数いた。


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