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本と同級生のミッシングリンク

作者: 川里隼生

 僕と偶然にも目が合ったクラスメイトの西川さいかわしおりさんは、そのときちょうど本屋の推理小説と恋愛小説の間の通路から出てくるところだった。西川さんはどちらの棚を眺めていたのだろう。取るに足らないことだが、なぜか無性に気になった。


 西川さんはフットサルのセミプロ選手だ。そのことからスポーツ関係の本に絞り込んでみると、『スコアラーの事件簿』と『届け! サービスエース』が目に留まった。『スコアラーの事件簿』は秋に実写ドラマ化される、プロ野球の記録員が主人公の推理小説。『届け! サービスエース』は冬にアニメ映画が公開される、ある高校バレーボール部の恋愛群像劇。どちらも中高生に人気だ。


 書店に並ぶ文庫本の宣伝文句は見事なもので、僕がもっと読書に興味を持っていれば二冊とも持ってレジに直行していただろう。どのような物語なのか、想像が膨らむ。その後に「読んで確かめよう」ではなく「僕ならこう描くな」と考えてしまうのが、僕の悪い癖だ。


 確か、西川さんは何かのインタビューか年度始めの自己紹介かで推理小説が好きだと言っていた。それを考えると『スコアラーの事件簿』などが入った推理小説の棚を見ていたのだろう。西川さんは手ぶらだったし、棚にも空きがないことから、何も買ってはいないようだ。しかしもし、西川さんに恋愛小説への興味があったとしたら。普段の西川さんとは少し違った可愛らしい一面があったとしたら。


 僕は恋愛小説の棚を見つめる。こちらもみっちりと本が入れられている。その内の一冊を手に取った。何人かの作家による短編集だ。『ピヴォへの声援』は僕が描いた。フットサルのフォーメーションで最前線に立ち、最も積極的にゴールを狙うのがピヴォ。西川さんもピヴォだ。こっそり、西川さんをモデルにしたキャラクターを登場させている。僕の作品が恋愛小説と西川さんの架け橋になれたら素敵だな、と考えながら、そっと本を棚に戻した。

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