金魚
「やあ、お前、元気にしてたの、んー?」
腰を落として、水槽をのぞくと、赤い金魚が、こちらを見つめ返している。
「遊びに来たよ、私のことを覚えてるの?」
ぽわぽわしながら、口をパクパクして、ふふふ、可愛い。
「この子たちって、あの縁日のだよね?」
「そうだよ」
ふーん、もしかして、案外、大切に思ってくれていたりするのかな。
「ねぇ、名前とか、つけてる?」
「そいつの名前は、ヒレ」
付けてた!
「あははは、金魚だから、ヒレって」
でも、そっかそっか、名前つけてたかあ、結構、大切にしてくれてるんだ。
「じゃあ、あっちの子は?」
「ロース」
・・・そうでもないのか?
首をかしげるそぶりが、ガラスに映り、それが、ふと目にとまって、つい前髪に手を伸ばしたら。
「髪、切ったの?、似合ってるよ」
後ろから、かけられた声に、振り向けず、ひたすら水槽をみつめてしまう。
んー、んー、んーっ。
ああっ、もしかして、こらっ、なにを笑ってるんだよ、こいつめ。
水槽からこっちを見ている、その鼻先を、ピンっと指ではじく。
なにさ、赤い顔なんてしちゃってさ。