3.都合良い時って後が怖いよね
「なぁメリンちゃんよ、いつから王国はリビングメイル何て従えるようになったんだ?人手不足か?人里で飼う分には燃費が悪いと思うが」
「知らねぇよぉおおおおおおおおおおお!!!!」
私たちは絶賛3体の鎧に追われています。
*遡ること30分前
「もしかしてですが姫様起きるまで面倒見てたら基本給×200%×起きるまでにかかった月のボーナスってのも無いんですか...?」
「無いな!お前アラーム代わりにでもされたんだろう」
「...あぁぁぁあああああああああああ!!!!う"ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!」
「黙れ」
「痛っぁい!」
「ここからは隠密作戦だ、まず地下道を使って国外へ出る」
「ばだぢのお"ぎゅう"り"ょう"」
「建国した暁にはお前を金融大臣の地位に就けよう」
「い"ぎだい"!!」
ということで姫様の案内の元コソコソと隠れながら地下道の入口へ向かったのはいいんですがやけに人影が少ないのです、5階にある姫様の寝室から3階まで1度も人とすれ違っていません。
「やけに穏やかですねぇ、衛兵の1人も見当たらないし今日遠征訓練なんてあったかなぁ」
「外の情報を知らない程度につきっきりということか、お前眠剤でも飲ませてたんじゃないだろな」
「流石に私もそんなことしませんよー、夜眠花を枕元に置いてただけですよ」
「しばくぞ」
流星の如き拳が私の顔面に不時着するその時だった。
アナウンスと警報が鳴り響く。
「警報、警報、賊が侵入した模様。これは国家反逆に当たる直ちに殺害せよ」
「衛兵もいないのに賊とかマズくないですかね?」
「いやあちらは何もマズくないぞ」
「それはどういう...」
「あそこだ!姫を騙るなんたる不敬な賊だ!殺っちまぇ!」
「へ?へ?」
「そういうことだ、逃げるぞ」
直後姫に手を引っ張られ大窓から飛び出される。
体にふわりとした浮遊感、なんてのは無く下からくる風で息がしにくい。
「んごっふごごー」
「丁度いい、どちらにせよ下に用があるなら最短で行こうじゃないか!ハッハァ!!」
何言ってんの死ぬよ死ぬんだよベチャッだよあーあもっとおいしいご飯食べたかったなぁ
あー死ぬ間際なのに考えることないなぁ、はぁ死にたくないなぁ
「後で礼はするから力を貸せ風喰らい共!」
下から当たる風で何言ってるか聞き取れなかったけどそんな感じのことを姫様が言った。
すると間近に迫った地面が少し傾く。
いや地面が傾いたのではない私たちが傾いたのだ。
下に落ちていくだけの私たちの体がゆっくりと地面と平行になっていく。
わけわかんないわかんないわけわかんなーーーい!!
「そう焦るな、下向き落ちているのが横向きに落ち始めただけだ」
「もっとわかんないよ!あっ、喋れる」
「ついでに言うと減速もしている、ほら足をついてブレーキかけろ城壁にキスしたいのか」
ずざざざざざざざざざざざぁ。
案外簡単に止まった。
「たっ、助かったぁ」
「まだ助かったわけじゃないぞ、ほら走れ走れ」
あぁ追われてましたねはいそーですね!捕まりゃ即死ですよねはぁぁー。
よし走ろ。
諦めと共に足を動かし姫様の案内に従って廃棄物用の焼却炉へ行く。
気でも狂ったのか焼却炉に入っていく姫様。
いやまてまてまてまて
「ここが入口だ汚れるのは仕方ないだろう」
「そういう意味じゃねぇよいやこの際考えても意味ないか、もうどこでも連れてってください」
「んじゃここでおしっこして」
「.........はい」
じょろろろろろ。
キュイン!
一瞬の視界の暗転の後焼却炉の外に見えていた城が消えてなくなり暗い石造りの壁が現れた。
なるほど、これが転移ってやつか。
「恥じらいもしないんだな」
「もうどーでもいいですはよ行きましょ」
「言い忘れたがランタンがない」
「簡単な炎魔法なら使えますよ、ほらっ」
ぼうっ。
揺らめく炎が二人と3つの兜を照らし出す。
私の目線より上の高さにヨロイカブト3つ。
中身は見えず。
されど動く。
ギギギとこちらに向き直る。
「あぅ」
現在に至る。
「ガシャコンガシャコンガシャコンうるせぇよ!来んなぁああああ!」
「こうもめちゃくちゃに走ると道がわからんな、やはりな間違えたすまん」
なんと行き止まり。
退路も無し。
「間違えたじゃねぇよあーーーーまた詰んだーーーー」
「あぁやっぱ嬢ちゃんじゃねぇか久しぶりだな」
ん?
「元気にしてたか?」
「体は大きいのに胸は相変わらず小さいな」
「うっさい、でもこの馴れ馴れしい感じは...自称姫様近衛隊の人達?」
「自称はいらねぇけどそうだぜ」
なんとリビングメイルだと思っていたのは近衛隊(笑)の人たちだったのだ。
暗いしよく見てなかったが観察してみればあの人たちが着ていた鎧だ。
「なんでこんなところに?」
「おうおう聞いてくれ!うちらがいつも通り訓練してたらよ急に大臣に呼び出されたと思ったら後ろからズドンと3人とも刺されてあっけなくでな、そのまま焼却炉にポイ。唯一意識がギリギリ残ってた俺があそこで小便してここに来たってわけ。んで気づいたら俺はスケルトンにロイがリングメイルにリックがゴーストにと3人とも化け物になっちまって全員肉体がないから小便でなくて戻れねーからどうせならいずれ来るだろう姫様待ってたってとこよ」
「なんだやっぱ化け物じゃん」
「いいじゃねぇかよ暗くてもよく見えるぜ、ところで姫様は一緒じゃないのか?」
「姫様そこにいるじゃん」
「んん?馬鹿言え冗談だろ。影武者にしても下手だなぁ。姫様はもっとペターンキュッショボーンだろこんな発育言い訳ないだろうが、そっかまだ寝てんのか?」
「あー...」
「頭を垂れて平伏しろ、ジェイク、ロイ、リック」
私ですら知らない名前を言われ何かを確信しガクガク震えだす鎧たち。
歴戦の鎧達に1か所ずつ大きなへこみが刻まれたのは言うまでもない。
*TIPS
姫とメリンちゃんが味わった横向き落下は速度のついた自転車に乗ってるような感覚である。
誰しも1度はブレーキを使わず足だけで自転車止めたことがあるだろう、アレぢゃよ。




