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神様、巫女を心配する

今日は引き続き2話目を投稿。

 どうも、先日より神になりました私です。

 私の住む社には巫女がおります。名をヒナキと言いまして、彼女はとても働き者なのです。

 敷地の管理は勿論、供物の管理や社の運営、私の言葉を人々に伝えるのも役目です。今もほら、社の前を箒を使って掃除しています。忙しさに体調を崩さないか心配でなりません。


「あっ賢人様。おはようございます」

「おはようございます。今朝も精が出ますね」

「はい、これも賢人様に仕える者の役目ですから」


 ヒナキが私に気が付いたようです。箒を動かしていた手を止めて挨拶をしてくださったので、私も挨拶を返しました。せっかくの機会ですから私の懸念を彼女に伝えることにしましょう。


「勤勉なのは良いことですが、働きすぎてはいけません。過労は健康を害し、寿命を縮めてしまいます。ヒナキの体が心配です。幾人か手伝いを増やしてはどうですか?」

「お心遣い痛み入ります。しかしながら私以外の者は賢人様の姿を拝することができません。それでは知らずのうちに失礼を働いてしまうやもしれません」


 ヒナキは申し訳なさそうに言いました。私と、私に失礼を働いてしまった者、そのどちらのことも考えて言葉を紡いだのでしょう。私は心の底から、彼女が私に仕えてくれたことに感謝しました。

 しかし現状のまま行けば、いつかヒナキは体調を崩すでしょう。今の彼女の仕事量をどうにかして減らさなければ、きっと訪れる未来です。やはりヒナキを説得しなければなりません。どうすれば納得してもらえるのでしょうか。


「ヒナキの心配も分かります。ですからヒナキはヒナキにしか出来ないことをすれば良いのです。私の住む社の掃除や私との語らいはヒナキにしか出来ません」

「ですが、それでは……」

「逆にヒナキではなくても出来ることは、その人に任せてしまえば良いのです。敷地内の掃除などは、その最たる例ではありませんか?」


 私は短い間に考えをまとめてヒナキの説得を試みました。彼女は私の言葉を噛み締めるように俯いています。やがて顔を上げると、そこにはいつもより穏やかな様子のヒナキが微笑んでいました。疲労の色濃い顔に幾分の余裕が生まれたようです。


「賢人様の仰る通りです。それならば私は賢人様の世話に専念できますし、そうすれば他の者が賢人様に接する機会は最低限、失礼を働くこともないでしょう」


 ヒナキの話では以前から奉仕を希望する声はあったのだとか。しかし私に失礼があってはいけないと断っていたらしいのです。


「考えてみれば当然のことでした。疲労は人の目を曇らせるのですね」


 ヒナキは「失礼します」と私に断りをいれて社務所に駆けて行きました。純白の巫女服の袖、そして栗色の結った髪が揺れています。きっと手伝いを募集する準備をするのでしょう。

 私に仕える巫女の健康が守られる予感に安堵した私は、機嫌を良く自分の社に戻ったのでした。

巫女装束は和風なものを想定しています。朱色は入っておりません。

ヒナキさんは美人で、老若男女問わず参拝者からの人気も高いです。しかしヒナキさんは賢人様一筋ですから、彼女に告白した方々はことごとく玉砕したことでしょう。

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