表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終焉と英雄と  作者: Slonay
1章1節『終わりの始まり』
9/23

8.『愛』

 ──暗闇に放り込まれ、自我を取り戻す。


 「──」


 言葉が出ない。弥生はいつも正義の味方で、可愛くて、そんなあの子に、あんな顔を、


 ──あんな、辛そうな顔をさせた。


 「──、俺は、罪人だ」


 暗闇の中、むなしい声が響き渡る。


 「俺は、弥生を傷つけた」

 「それだけじゃない。俺は、子供を見殺しにした」

 「人を殺して、何が生きたいだ」

 「弥生にあんな顔をさせて、あんな声を出させて、それでなにが弥生のためだ」

 「絆叡人。お前に生きる資格はない」

 「俺に、生きる資格はない」

 「クズ()に、生きる権利はない」

 「死なせてくれ」

 「死なせてくれ」

 「…殺してくれ」

 「…殺して、くれ」

 「──、…いや、それも甘えだ」

 「今更人に殺されようとするなんて、甘えだ」

 「俺は、一人で死ねばいい」

 「ほかの人の手を煩わせるな」

 「黙って、一人で死ね、絆叡人」

 「一人で死ね」

 「黙って死ね」

 「自分で死ね」

 「人に、弥生に殺されようとするな」

 「一人で──いや、独りで、死ね」


 自分への嫌悪感が、際限なく募る。


 「お前はクズだ」

 「正真正銘のクズだ」

 「一人の子供を見捨てて、弥生の声も無視して」

 「お前に生きる権利はない」

 「殺してもらう権利はない」

 「だから、独りで死ね」

 「一人で死なせてくれ」


 絶望の、どん底に堕ちる。

 「死なせてくれ」

 「死なせてくれ」

 「死なせてくれ」

 「死なせてくれ」

 「死なせてくれ」

 「死なせてくれ」

 「死なせてくれ」

 「死なせてくれ」

 「死なせてくれ」

 「死なせてくれ」

 「死なせてくれ」

 「死なせてくれ」

 「死なせてくれ」

 「死なせてくれ」

 「死なせてくれ」

 「死なせてくれ」

 「死なせてくれ」

 「死なせてくれ」

 「死なせてくれ」

 「死なせてくれ」

 「死なせてくれ」

 「死なせてくれ」

 「死なせてくれ」

 「死なせてくれ」


 ──だが。


 「────もう、死なせない」


 声が、した。


 「────もう、死にたいんだ」


 俺がそう言うと、


 「──それでも、死なないで」


 そう、声は言った。

「死なないで」と、そう、言ってくれたのだ。


━━━━━━━━━


 「────」


 ───気が付くと、俺は「戻されて」いた。


 そう、「戻されて」、いた。


 ──じゃあ、今の、声は、なんだ。今の、声は──


 「きみを、…叡人くんを、失いたくない」

 「────」

 「お願い…死なないで」


 ────弥生が、泣きながら、俺に縋り付いてきていた。


 …ああ、情けなくなる。俺はまたも弥生を悲しませているのか。

 もう何度弥生を悲しませているんだ。


 ──ああ、やっぱり、俺は死ぬべきだ。


 「死なせて、くれ」


 そう、懇願する。


 「ダメ、死なないで、叡人くんが死んだら、私はどうすればいいの」


 でも、弥生は、死なないでと訴えかけてくる。

 でも俺は、そんな言葉に甘えてはいけない。


 ──俺は、罪人だから。許されてはいけない、人間だから。


 「俺は、俺を許さない」

 「それならわたしが、叡人くんを許します」


 即答だった。

 なんで、俺のことを許そうとするんだ。俺は弥生に、一番許されてはいけない人間なんだ。


 「お願いだから、死なないで」


 やめろ。やめてくれ。俺は死ぬべき人間なんだ。


 「わたしが、叡人くんに死なれたくないのは当たり前だよ」


 当たり前なわけがない。現に、弥生は一度俺のことを殺した。


 「────。叡人くんは、なんで、死にたいの?」

 「────。────。弥生を、悲しませたから」

 「わたしは、叡人くんが死んだほうが悲しいよ」

 「それでも、だめなんだ」

 「──。なんで、だめなの?」

 「俺が、許されてはいけない、罪人だからだ」

 「────」

 「俺は弥生を悲しませただけじゃない。──子供を、見殺しにしたんだ」

 「────」

 「だから、俺を、死なせてくれ」


 ────もう、いいだろう。ここまで言ったんだ。彼女も、俺のことを──




 「──。わたしは、叡人くんを、死なせたくない」




 ──言葉を、失った。


 「──なん、で」


 「それは──、


 一拍置いた後、彼女はそれ(・・)を口にする。



 



 「それは、わたしが叡人くんのこと、好きだから」




 ─────え?


 「好きな人を、死なせたくない」


 「────」


 「それって、当たり前の、ことでしょ?」


 ─────。


 ─────。


 ─────。


 ─────。


 ─────。


 ─────。


 ─────。


 ─────。


 言葉の意味をかみ砕き、飲み込むまでに数秒かかった。


 「──は」


 考えてみると、アホらしい。

 最初の周回で、彼女は言いかけていたではないか。

 ──否、最初だけではなく、それからも、ずっと。


 ────「好きだ」、と。


 「俺の、ことを…?」

 「好きだった。ずっと、前から」

 「なんで、俺なんか」

 「わたしが、叡人くんのこと、好きだから」


 答えになっていない。だが、それは彼女らしい答えだった。


 「──俺なんかで、いいのか?」

 「叡人くんが、いいの」


 即答だった。涙が、出てきた。


 「お、俺みたいな、クズでも、い、いいのか?」


 「叡人くんはクズじゃないよ。絶対に。だから、死なないで」


 もう、我慢、できなかった。


 「ありがとう、弥生」


 「────」


 そう言って弥生に、顔を、近づけていく。


 「俺も、ずっと前から、好きだった」


 「──ありがとう」


 2人の、顔の距離がだんだん近づく。

 「好きだよ、弥生」

 「わたしも、叡人くん」


 そして──、


 「──んっ」


 ──初めてのキスは、涙で濡れていたが、とても甘く、甘く、とろけそうだった。

お互いの体温を、直に感じる。柔らかく、温かい。俺は、その柔らかな唇を夢中で貪った。

その甘い唇を貪って、貪って──


 ──やがて、永遠にも思えるその時間は、どちらともなく離れることで、終わりを迎える。


 ──俺は、その温もりを一生、忘れることはないだろう。


 「大好き、叡人くん」

 「ああ、俺もだ」


 2人はそのまま言葉を交わし──、


 ──直後に黒い風に切り裂かれた。

 このお話はいわゆるターニングポイントに当たります。いやぁ初々しいですねぇ(いろんな意味で)。

重なる死の中でついに弥生に見捨てられた叡人。そんなどん底の彼を救ったのは・・・といったところでしょうか。あとがきというものをあまりよくわかっていないので、どんなことを書けばいいのかがわかりません。ただ、温かく見守っていただけるとありがたいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ