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終焉と英雄と  作者: Slonay
1章1節『終わりの始まり』
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6.『絶望』

 ──時を遡った先に、彼女の存在がある。


 だから、何をすればいいのかわからなくても、


 ──俺は、彼女を守る。


 そう、決意を新たに、彼は遡っていく。


 ──その決意が、悪意によって、その悪辣さをもって、踏み躙られることを知らずに。



━━━━━━━━━


 「──お待たせ、じゃ、行こうか」


 「──、ああ、行こうか」


 その声に一瞬喪失しそうになった自我が現実に戻ってきた。


 ──どうやら俺には、運命を打開することを求められているらしい。


 まだ完全にはわかっていないが、俺は某ラノベ主人公のような権能、「死に戻り」のような力を手に入れたらしい。しかも現実世界で。これだけ聞くと希望が見えるかもしれないが、


 ──その権能のトリガーはみなさんご存じ「死」だ。ただただ受け入れるわけにはいかず、さらにその権能には、いくつかの違い(便利機能)があったのだ。


 つまり俺が何を言いたいかというと、


 ──「怪しい」。または、「危険」。


 こういうモノ(死に戻り)違い(便利機能)があったら、さすがにペナルティがついてくる危険性がある。便利は便利だが、頼り切りにはならない。劣化版持ちの某主人公もそういっていたし。


 ──だが、そうと決めていても「劣化版」と言っている時点で、優越感があることに彼自身は気づいていない。気づいて、いなかった。



 ──その優越感から生まれた、わずかな余裕が、「絶望」を呼び寄せる。


━━━━━━━━━


 ──弥生と話しながら、いつもと少し違うルートをとり、あの場所から離れていく。

離れれば脅威がなくなるのは実証済みだ。


 もう彼女があのようなことになるのはごめんだし、当然自分も死にたくない。


 そんな思いを抱きながら弥生と話していると、ふと周囲の違和感に気づく。


 「何か、道に見覚えが……」


 その道はまるで──、


 「あっ!!」


 「きゃっ!」


 あることに気づき、立ち止まる。

 背中にぶつかった弥生が悲鳴を上げるが、構っている場合ではない。



 道が、同じなのだ。



 ──彼女が死ぬところへ向かう道と。


 俺は確かに間違いなく、普段は行かない道へと行ったはずなのに。


 それが、どうして──


 「──人くん?叡人くん!」


 気づけば俺は反対に向かって走っていた。


 弥生の手をつかんで。


 走って、走って、走って、走って────


 「ねぇ、叡人くん!聞いてる?ねぇ、叡人くんってば!」


 そう言われ、強引に引っ張られて、俺はようやく弥生を引きずるように走っていたことに気づいた。

 説明もなく、いきなり手をつかまれて反転して走りだされたのだ。彼女も困惑するだろう。


 「あ、あぁ、ごめん」

 「私は別にいいけど…、どうしたの?なんか今日の叡人くん、変だよ?」

 「そうだね…ほんと、


 ごめん、と言おうとして顔をあげて、言葉を失った。


 ──地獄への道が、またも目の前に広がっていたからだ。


 「──ッ!弥生、ごめん!説明は後でする!」


 そう叫び、右へ左へ、とにかく行けるところへ、行ったことのない場所や、路地裏まで行った。


 そのおかげか、いつの間にか交差点に立っていた。交差点は帰り道にない。だから、そこで安心して、心を落ち着かせようと、周囲を見渡して──


 ──だが、運命は、世界は非情…否、悪辣だった。


 「──うそ、だろ」


 ──交差点の四方向、すべてが地獄への道になっていた。

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