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終焉と英雄と  作者: Slonay
1章1節『終わりの始まり』
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3.『現実、そして遡行』

 ──暗闇に光が差し込む。いや、光が現れたといったほうが正解か。


 その光には色があり、動きがあり、それは──



 ──現実世界そのものだった。



━━━━━━━━━



 叡人は目の前に現れた光に困惑した。何故ならそれはスクリーンのような形をしており──、


 ──そのスクリーンの中には自分と、死んだはずの弥生が話している光景が映ったからだ。


 「なぁ、弥生」


 スクリーンの中の自分はそういって、彼女としたはずの話を繰り返していく。それに対する彼女の反応も、一度見たことのある反応で。


 と、ここで叡人はこれが「今さっきの自分たち」を見せられていることに気づいた。


 気づいたが──、


 「それが何だっていうんだよ…」


 困惑を抱えながら、しかしスクリーンの中の場面は進んでいく。


 弥生への告白シーンは、自分で見ていて恥ずかしくなってくるほどドラマチックでロマンチックで、それこそ一本のドラマにできそうだった。できそうだったが──


 しかし、そんなシーンも一瞬で砕かれる。


 横から突っ込んできたトラックに轢かれる弥生。血飛沫が舞い、彼女はトラックに引きずられてグチャグチャの肉塊となっていく。


 弥生の前で絶叫し、目を背け、それが終わった後、ふらふらと弥生に近寄る叡人。だが、彼女に触れる前に血を撒き散らして吹っ飛ぶ手首。


 それをしたのは、黒い風のような何かだった。


 その後「それ」は一度通り過ぎたように見えたが、その後激痛にのたうち回る叡人を──


 ──漫画のように、「縦に」真っ二つにした。



━━━━━━━━━



 スクリーンに映っていた映像が終わると、ようやく自分の状況が把握出来てきた。


 映像で叡人は謎の黒い風のような何かに殺されていた。つまり、


 「俺は、死んだのか…ってことは、ここは…」


 ──死後の世界。

 ここがこのような暗闇なのも死後の世界と考えれば納得がいく。ただ──、


 「でも、なんで死んだのに意識があるんだ?」


 そう、あの映像が正しければ、叡人は死んだはずなのだ。意識があるのはおかしい。


 もし仮にこの空間が死後にたどり着く場所なのだとしたら、叡人は永遠に意識を保ったまま、この空間に存在することになる。そう、永遠に。


 「考えただけでゾッとするな…」


 と、そこまで考えたところで、なにか違和感があることに気づいた。


 「──?なんだ?」


 なにか、違和感がある。それは、ささやかな、しかし確実な変化。それが起こっているのはわかるが、なぜかその違和感を認識できない。


 その違和感を形にしようと、暗闇の中、周りを見渡し──、


 「──え?」


 ──スクリーンに映し出されていた映像が、逆再生されていくのが見えた。


 それは、帰り道に弥生と話す前まで、恐らく塾を出るところまで、どんどんどんどん、逆再生されていく。


 ──そう、それはまるで、「時間」そのものが巻き戻されているかのようで。


 「なんで、巻き戻って…」


 叡人は困惑する。だが、変化はそれだけにとどまらなかった。


 「え、ちょっ、まっ──」


 叡人の体が、スクリーンに吸い込まれていくのだ。

 「時間(とき)」を遡る、スクリーンの中へ。


 ──そうして彼は、時間を遡る。


 そして彼は遡った先で、「死」以上の、さらなる絶望と出会う。


 ──これは、彼が英雄となる戦いの、始まりであった。

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