表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

2 殿下視点

続いては殿下視点です。


 私の婚約者が死んだ。誰の目から見ても明らかな自殺であった。


 私は何か間違えてしまったのだろうか。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 彼女に初めて会ったのは5歳のとき。その前に兄のオーディスと知り合い、彼女の話をよく聞いていた。曰く、ものすごい我儘な娘で使用人を奴隷のようにこき使っている、と。だからこそ私は彼女に会うのがとても憂鬱だった。初めて会った時、大人しそうで何も言わない彼女を見てこのような子が本当に我儘なのだろうかと思ったが、オーディスの言葉を思い出した。

 

 「ルイーサはお前に気に入れらようとして、大人しくするはずだから騙されるなよ」と、


 この婚約も彼女の我儘でなされたものだという。なら、オーディスの話は本当なのだなと思ってしまった。この時、ルイーサの話をきちんと聞いていれば何か違ったのかもしれないな。今更後悔しても無くなった命は戻らないが。


 私に媚びてくるルイーサに嫌気がさし、何度も国王に婚約破棄の申し出もした。しかし、彼女は王妃教育を真面目に受け、国王や王妃の信頼を勝ち取っていた。だから、私がどんなに彼女の本性を明かしても婚約破棄は認められなかった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 そんな時アイリスに出会った。彼女は平民だったが、ルイーサとは違い優しく明るい子であった。だからなのだろう、私はアイリスに惹かれていった。その頃にはルイーサとの交流は最低限で、思い返せば婚約者としての務めは義務でしかなく、私的なものは何も贈っていなかった。


 ある日、アイリスが泣いていた。話を聞いてみれば、持ち物が壊されていたりしているのだという。私がなんとかしようと言っても、彼女は自分に至らないところがあるはずだから、と自らの責任だと言った。この時私は、真に王妃にふさわしいのはルイーサのように残虐な人間ではなく彼女のような人物なのではないかと思い始めた。


 運命の歯車はすでに消えてなくなった


 ルイーサと婚約破棄をしようと考えていた頃、アイリスが濡れていて少し傷がついていた。何事かと思えば、急に水をかけられ魔法で切られたという。流石にやりすぎだと思い、ルイーサに苦言をしたが彼女は知らないの一点張り。愛想が尽きて私はルイーサに婚約破棄を突きつけることを心に決めた。アイリスや側近たちと話し合い、私の両親である国王と王妃の邪魔が入らない学園でのパーティーで彼女を断罪することにした。

 

 パーティーの前日にもアイリスは裏の者たちによって殺されかけていたところで、一歩遅ければ彼女に2度と会えなくなるところだった。おそらく私からのエスコートの知らせがなくアイリスに嫉妬してでの行為だったのだろう。例え、公爵令嬢であったとしても許せる行為ではない。


 証拠は揃っていた、ーはずだった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 「ルイーサ・アードラー!お前との婚約を破棄する!!!」

 私は言い逃れができないよう、大きな声でルイーサに婚約破棄を言い放った。

彼女はなぜ自分がそんなことを言われるのか分からんとばかりに首を傾げ扇を口に当て、淑女らしく丁寧な言葉でなぜかと聞いてきた。今更淑女ぶったところで自らの罪はばれているというのに。


 私はそんな彼女の態度に腹をたて、冷静さを失った。


 「巫山戯るな!お前はアイリスに嫉妬し、彼女を虐めていただろう!」


 隣でアイリスが涙目になりながら、謝ってくれるだけでいいという。それに比べてなぜあの女は自らの罪を認めないのだろう。ここまでするつもりはなかったが、全員の前で罪を言えばあいつも反省するだろうと思い私は、ルイーサの罪をパーティーに来ていた人全員に明かした。


 「なんと優しいのだ、、それに比べてルイーサ!お前は彼女に嫉妬し持ち物を壊す、話しかけても無視をする、挙げ句の果てに裏の人間に彼女を襲わせただろう!私たちがあと少しでも遅かったら彼女は殺されていたぞ!」


 それでも彼女は罪を認めない。なぜだ。あいつ以外にアイリスにそんなことする人間はいないというのに。


「そうですか、、信じてくださらないのですね。いいえ、わかっておりました。殿下が私の話など聞いてくださらないということを。婚約者である私でさえお名前を呼ばせていただいたことはないのに、アイリスさんとは愛称を呼び合う仲なのですね。」


 どきっとした。確かに私は婚約者であるルイーサに愛称はおろか名前を呼ぶことを許可していない。しかしそれがなんだというのだ。そんなに呼びたいのなら私に許可を取ればよかったのだ。


 「アダルヘルム・フォン・アインホルン様たとえ、嫌われていると分かっていても5歳に初めて会った時から殿下のことをお慕いしておりました。将来貴方様のために王妃教育も10年以上続けてきましたが、それも全て無駄だったようですね。・・・・・・・」


 何を言われたのか理解できなかった。彼女が執着していたのは王子である私であって私自身ではない。そのはずだった。今彼女はなんと言った。私を、俺を慕っていると?彼女が王妃教育を頑張っていたのは俺のためだったと?いつの日か母が言っていた。彼女の教育を受けている姿は素晴らしく、誰かのためでなければあれほど頑張ることは無理だと。俺はあの時自分のために頑張っているだけだろうと話をまともに聞かなかった。信じたくなかった。自分が彼女に愛されていたということに。だが、思い返せば思い返すほど、彼女に愛されていたかもしれないと思うばかりだ。他の3人も呆然としている。


 ここまで俺たちのことを思っていてくれた人に何をした?話を聞かないだけでなく。時には無視もした。贈り物も送らない月もあったし、出かける予定を直前にキャンセルすることもあった。どう償えばいいのだ。ではアイリスを虐めていたという話は嘘だったのか?思い返せば彼女は静かで進んで人を虐めるような人だったのか?わからない、彼女のことを理解するには話をしなさすぎたのだ。


 「パーティーに来てくださった皆様。私ごとでお祝いの場を騒がしくして申し訳ございません。」

彼女が会場の人に謝罪をした。ここでも驚いた。彼女は周りに目を配れる人だったのだ。


 すると、彼女はどこからか出したナイフを持っていた。なぜだ?なぜ今ナイフを取り出すのか。

  

 彼女は静かに微笑んで、心臓にナイフを突き立てた。


 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 それからのことはよく覚えていない。ただ漠然となぜこうなってしまったのだろうか考えていた。理由はわかっている。俺が今まで彼女の話を一度たりともちゃんと聞いたことがないからだ。彼女の好きな花も、食べ物も、得意な魔法も、苦手なことも。俺は彼女のことを何も知らない。幼かったあの時彼女は俺に語りかけていてくれたはずだ。それを蔑ろにしたのは俺自身だ。


 懺悔する相手も、許しを乞う相手も居ず、やり切れない日々を過ごしていた。


 翌る日、私たちは彼女の部屋を訪れた。そこにあったのは、、

読んでくれてありがとうございます。まだまだ他視点が続きます。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ