七話 一通の手紙と花流し
7話目です。
よろしくお願いします。
その頃のダリアは、朝一のパンの配達が丁度終わったらしく、次の準備をしていた。
「あ、ダリアさん。今日もお疲れ様です。」
店の会計をしている青年が声をかけた。開店の9時までまだ時間があったので、どうやら今は店内を掃除していたそうだ。
「あぁ、おはよう。キリト。ヨルやジョシュアは今は何をやっていた? 」
「ヨルなら、ガーベラさんともう作り始めですよ。ジョシュアはまだ起きてきません。多分、来たらラッピングからだと思います。」
「そうか、なら起こしてくるよ。開店前にはいないと困るしな。」
ダリアはパンのカゴを棚の脇に置き、奥の階段を上がろうとしたとき、キリトは何かを思い出して呼び止めた。
「あ、そうそう。手紙をもらいましたよ。ダリアさん宛らしいです。」
と、紫のシーリングスタンプで留められた、質の良さそうな封筒を渡した。
ダリアは受け取るや否や、
「コスモスめ。」
と低く溢して、それから、まだ起きてこないジョシュアを起こしに二階へ上がった。
それから2日後の朝、朝は早朝から賑わい始めた。
今日は6月29日、クリスタンは建国570周年を迎える丁度一週間前で、当日の祭りのために国民それぞれが準備をし始める。祭りは王城のパーティーや、街のパレードなどがあるが、貴族も平民も関係なく参加するのは、《花流し》というクリスタンの伝統的な行事だ。
《花流し》というのは、花の冠を作って、川や海に投げ入れ、流すというもの。使う花は自分が好きな花だったりして、昔の人は花言葉を気にするらしい。だから、花屋さんなんかは色んな国から珍しい花や例年人気の花を店に並べる。
「私、今年はどうしようかな。」
コスモスは、左のピアスを気にしながら呟く。
「団長は去年は確か、ご自分の名前のコスモス一色じゃありませんでしたか。」
団員の騎士がそう返してくれて、去年のことを思い出した。まぁ、コスモスの花言葉は《調和》だし、良いことがあり過ぎて、後々悪いことばかり重りたくないから、プラマイゼロになりますように、と願ったんだけど。
「花流しで祈願が叶ったことないかも。なんか、毎年自分が流れて行くのを見て複雑な気持ちになる。」
「はは、ただの行事ですから。あ、コーヒー淹れますか? 先日は大変だったでしょう。」
「今日もだよ。まぁ、お願いしようかな。」
「わかりました。」
「さて、もう一踏ん張りかな」
昨日は寝ずに仕事に明け暮れたお陰で、溜まった分の仕事は終わりが見えてきたこと。それでも祭りのこの準備期間や、当日の交通整理や、夜遊びの取り締まりなど、まだまだやる事はある。
お疲れ様でした。
では、8話目も行けたらどうかお願いします。