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花の英雄譚〜The Flower Heroes〜  作者: 金川都
一、消えた英雄
7/29

六話 夜の席

6話目です。

めちゃめちゃ長いです。

ご了承ください。切り方がわからず、、、

「ふぅ、今日も疲れた」

 昼間は書類がどっさり置かれていた机も、夜にはスッキリ片付いた。コスモスは久々に勤務時間内に仕事が終わって、いつもなら存在しない時間をどうしようかと考えていた。


「珍しいな。今日は捗ったのか」

「まぁね、今日は私がアザミの仕事を受け持ってあげようか」

「そうだな。では、これを頼もうか」

 アザミが渡してきたのは、来年の「騎士団入団試験における計画書」と書かれた冊子で、完成が終わっているため、見直して印を記すだけのものだった。

「おーけー。あ、今日どっかに飲みに行かない? 明日は休暇なんでしょ」

 私は自分が調子をいいことを理由に、そうアザミに聞いてみた。

「早く終われば付き合ってやる」

「やった」

と、机には体を向けて筆を握った。


 夜中、基地を抜けて二人で酒場へ向かった。酒場はとっくに混んでいて、酔った男たちがゲラゲラ笑い、看板娘は呆れながらも酒を注ぎ足していた。

「はい、乾杯」

 アザミは合わせてグラスを重ねて、一口飲んだ。


「最近仕事が遅いから、少し心配していたが、今日を見て安心したよ」

「あぁ、そうだったんだね」

 なかなか寝付けない日ばかりで、昼間は眠くなっていたけど、仕事に支障をきたしていたとは思っていなかった。思えば、最近やけにアザミが優しかったような?

「私もこの役職について間もないが、お前もそれなり負担があるだろう。有給は正騎士よりはある。構わず使ってもらって構わない」

「ううん、大事な時に使うよ。それにお互い様だからね」

「あぁ」


 アザミの黒髪はテーブルのランプでオレンジ色に照らされて綺麗だったし、目も大きくて、本当にこんな可愛い顔の女が一国の騎士長だなんて、誰が信じるのだろう。黙ってれば可愛いんだけど。

「よかった。黙って仕事を減らしていたんだが、もう元の量に戻してもいいよな」

 鬼上司め。減らしてくれていたのは有難いけど、通知がないとただの嫌がらせだ。

 だが、気を遣わせてしまったのを取り返したい思いもあったので、

「いいよ。それが通常業務なんだから」

と、後ろからサイドに流した長い三つ編みの気をいじりながらか、そう返した。


 しばらくして、

「陛下から直接話があったそうだが、何のご命令だった? 」

 と、アザミに聞かれて私は、いや、まぁ、などの言葉が出たが、済んだことならいいだろうと思い、王命の内容や、3年戻らない英雄ダリアのことをアザミに話した。アザミが直接ダリアに会うことなんてないよう、この後大喧嘩にならないよう、そう祈りながら。


「やはり生きてたな、当然だが。〈まだ戻る気がない〉というならば、その気があるらしいが」

「でももういいんだ。私は強制させたかっただけかもしれない。あの子は今までの戦争で誰よりも戦い過ぎたんだよ。みんなの分も戦って、戦って、バリス対戦でとうとう傷ついてしまったんだよ。休ませてあげよう」

 そうだ、ダリアはたった数年のうちに成果を挙げすぎた。三陣目で敵将を討ち、それからの戦だってそう。戦うほど戦神の名は広まり、それはダリアを苦しめてきた。聞いた噂によると、ウォート=アモネの最期を見たのはダリアだったらしい。自分の手に戦の勝敗がかかっていて、その最中に友人を亡くした、ようなものだ。どれだけそれが彼女を苦しめたか、私にはわからない。


 一息ついた頃、アザミはまた一口飲んで言った。

「どこにいる」

「言わないよ。君たち顔を合わせたら喧嘩になりそうだもん」

「子供か」

 つっこまれたけど、昔はそうだったんだけどな。と子供に入る年齢の頃を思い出す。

「なら手紙を書く。それでいいだろう」

 手紙ならまぁ、なんて思ったりして、顔は合わせないようなので、住所を教えてあげた。本当はアザミもあのパン屋さんのことは知ってるけど、住所を細かくは知らなかったらしい。

 そうそう、ダリアのお姉さんのパン屋さんは王都では一番有名で、国宝なんてあだ名もあるくらいなんだった。お店は毎日混んでいて、どんな嵐の日だって国民は買いに行くのだそう。姉妹揃って各方面で活躍できるのは大した血だと思う。


「じゃあ、また明後日ね。久々にお家に帰れるんじゃない? 」

「あぁ、一日だがゆっくり休む。次の日からまた忙しいしな」

「建国記念日の祭りの準備だったね」

「お前も忙しくなる。うかれた輩が増えるだろうから、取り締まりの方は任せる」

「うん」

 背を向けてアザミは基地とは真逆の方へ歩いて行き、次第に見えなくなった。あの黒髪は何でも反射するようで、今度は月明かりの青白い光に染まっていた。


「あぁ、もうこんな時間か」

 ポケットから出した銀色の懐中時計は間もなく午前3時を指そうとしていた。明日も私は仕事があるのに、どうして飲みになんか誘ったんだろう。

お疲れ様でした。

7話目も行っちゃいます?

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