四話 ダリアの嘘
四話です。
よろしくお願いします。
三日ぶりの謁見の間に、陛下を前にダリアも私も膝をついて、口を開いた。
「コスモス=ステラ。王命の通り、英雄ダリア=カルミュアを連れて参りました。」
通常であれば、陛下がそれに対して返答するはずが、先に言葉を発したのはダリアだった。
「いいえ。私は英雄ダリアの友人にございます。本人からこの場へ赴くよう依頼され、騎士様について参ったのです。」
思わず、下を向いていたのを顔を上げてダリアを見た。私にとってそんなわかりやすすぎるほどの嘘を、ダリアは陛下についた。
「して、名前は何という」
「はい、ウォート=アモネと申します」
ダリアは全く別の人物の名を口にした。陛下を前に肝の座りすぎている。私はダリアが処刑されないかと思い、心臓がやけにうるさかった。
陛下は名を聞いて、一瞬悩まれたようで口元を一度も触って仰った。
「そうか、ご苦労であった。英雄はこれぬと」
「はい、彼女は三年前の対戦で、何も出来ぬまま敗戦にしてしまったことを悔いております。陛下の前へなど、赴いて再び祖国に忠義を尽くすこともままならないかと。」
「なるほど。我らはあの者に頼りすぎていたのやもしらぬ。コスモス、苦労をかけた。常務へ戻るように」
陛下はダリアの虚言を鵜呑みにして、真剣に捉えられたようで、それが何というか、哀れに思ってしまった。それ故か、私のそれ以降の陛下を慰めるように発した言葉もきっと聞こえないほど小さかったのかもしれない。
「滅相もございません。」
「ウォートと言ったな。英雄ダリア=カルミュアに、すまなかったと伝えてはくれぬだろうか」
「承知致しました。」
陛下とダリアが話している時、私はどんな顔をして、傅いていただろうか。
私の王命任務は終わった。そして、きっとダリアが騎士団に戻ることももうないのだろう。
ありがとうございました。
五話もよろしくお願い致します。