二十四話 移籍の話
第二章です。
二十四話、よろしくお願いします。
(私は14年間、庶民の中ではやや裕福な家庭であったことをいいことに、だらだらと生きた。
が、5年前に父が事故死、二年前に母が病死。最悪なことに両親の死が重なり、姉と私は取り残された。姉は近所の友人らと共に、自分のパン屋で日々働いている。私は手伝いをしていたが、どうも手先が器用でなかったらしく、向いていないらしい。
そんな時、姉が子供の頃から喧嘩の強い私にいいのでは、と『騎士』の入団試験のビラを見せてくれた。高給(年功序列)と、寮部屋+3食付き。
迷わずに即決した。)
騎士団に入団して9ヶ月経った。ダリアは早朝に訓練場のベンチで訓練の時を待っていた。
「この剣、そろそろ変えようかな。」
鞘から抜いてみたその剣は、刃こぼれが厳しく、柄の部分に巻いた布もまるでボロ雑巾のように汚れている。
騎士に就いた後もダリアは貧乏性から抜け出せず、その剣を入隊してからずっと使い続けている。
「剣一本で金貨5枚は分は高いよな。初任給めっちゃ削れるし」
ダリアは剣を鞘に納めて、自分の横に立てかけると、一度大きく伸びをして、ため息をついた。
(一年ぐらい経っても、相変わらず人と話さない。まず騎士団の年齢層が広すぎるんだよな。女自体が少ないし、同年代なんて早々見つかるわけないか)
「お、ダリア」
そこには顎髭をたくわえた中年層ぐらいの男が立っていた。
「あ、団長」
「騎士長から言われたことをすっかり忘れててな。すごい急なんだけど、お前今日から第八に移籍になったから」
「は?」
ダリアはあまりにも唐突なことだったので、瞬間的に立ち上がって、団長にジリジリと詰め寄った。
「え、は? なんで、なんでですか。急すぎんだろ」
「だから、急って言ったろ。ごめんごめん。」
呆れてダリアは額にシワを寄せて、嫌そうな顔をした。それ見て団長は機嫌を取るように返した。
「ちゃんと訳があるから安心しろ。騎士長はな、この第三で若いのがお前だけだからってんで、同年代のいる第八に移籍させれば、少しは気が楽にでかるだろうってさ。」
「とか言ってもう一年過ぎてんだよなぁ。いい加減慣れたよ。」
「まぁまぁ。せっかくのご厚情なんだか。有り難く思えよ。」
押し付けがましいような移籍命令をあまり良く思えなかったダリアは、もう少し愚痴ってやろうかと思ったが、面倒よくも宥めてくれる団長に免じて、
「わかりました」
とだけ言った。
「訓練行く前に第八の団長のとこへ行ってこい。第八のバッチ貰うと思うからさ。」
「あぁ、そうか。じゃあ、これ」
ダリアは入隊後にもらった第三所属の証であるバッチを団長に返そうと、鞘の紐から外そうとした。
「いや、それは記念に持っとけよ。使い回しじゃないから」
「、、、そうする。お世話になりました、レックス団長。」
「元気でやれよ。あと、問題は起こすな。」
「はは、大丈夫だよ」
ダリアは意地悪そうに一つ笑うと、剣を肩にトントンと叩きながら、手を振ってその場を後にした。
お疲れ様でした。
次話もよろしくお願いします。




