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花束を摘む  作者: 金川都
一、消えた英雄
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二十三話 帰る場所

第一章終わりです。

二十三話もよろしくお願いします。

「え、早いね。まだ訓練まで30分くらいあるけど。寮の部屋1回見てきたら? 鍵渡すよ」

 コスモスは支度を済ませていて、今は自室で早くから事務仕事に手をつけていたらしい。


「いや、鍵はまだ持ってるから、さっき来る前に見てきた。で、復帰なら私はまだ、第八のままらしいけど、今の第八の団長は誰だ?」

「え、私だけど」


『クリスタンが第八騎士団長、、、』

と、城は赴いた時確かにコスモスは言っていた。


「あーそうだった」

「別に訓練ま内容なんて変わってないから、普通に参加しなよ。私は事務仕事あるから、あんまり顔出せないかもしれないけど。」

「わかった」


 ダリアはそれからどこへ行くのか、コスモスにはわからなかったが、遠ざかるダリアに一つ声をかけた。

「そうそう。君が復帰するのを聞いた騎士達が昨晩盛り上がってたよ。訓練前に相手でもしてあげなよ。」

「考えとくー」

 ダリアは振り返りもせずに、ただ手を振ってその場を後にした。




 ダリアは城の周りの、騎士の名が刻まれた石碑に来ていた。

「なんだよ、好きなのか。お前」

「そのまま返す。」

 アザミも横にいて、考えてることは同じだった。


「悪かったな、騎士長なのに負かして。」

「煽ってんのか。まぁ、陛下も満足してくださったから、何も思うことはない。」

「そうか。」


 不意に風が吹いて、伸びた髪が視界を遮った時、改めて3年経った現実を見た気がした。自分もアザミも大人になったけれど、昔のままの石碑がなんだか、過去は過去のままと言いたげだった。

 この世に不変のものなど存在しない。もちろん、石碑だって少しずつ劣化している。所々に生えた苔がそれを証明している。


 しばらく黙ってた私をアザミは不審に思ったのか、

「充電中か?」

と聞いてきた。

「まぁな」

とだけ返して、そろそろ訓練の準備でもしようとした時、コスモスが遠くから走ってきた。


「ダリアごめーん。いなかった分の生活費の契約切ってあったから、もう一回やんないとダメなのー。言うの忘れてたから、これ書いてー」

 コスモスの手には紙とペンがあって、えらくめんどくさそうなもので、字がズラリと並んでいたのは遠目でもわかった。


「あぁ、やっぱりアザミか。待ち合わせでもしてた?」

「してない、たまたまだ。」

 アザミはキッパリ返した。特に他意はないが、あまりにも即答だったので、ダリアは一瞬眉をぴくりとさせた。



 石碑の前に3人が立ってる状況を見て、コスモスは首を傾けて言った。

「改めて見ると、大人になったねぇ」

「一応20代だからな。」

「ははは、まぁそうか。」

 3年経って、見た目も変わり、景色も変わった。だが、ダリアにとって2人は何も変わっていなかった。全てが変わっていく中で、コスモスとアザミは当時と変わらずに接してくれたことに安心感を抱いた。



「あ、そうそう。ダリア」

 コスモスが何かを思い出したようで、ダリアに話を振った。

「なんだよ」


 太陽が昇り、街は起き始め、今日が始まる瞬間、コスモスとアザミは一度顔を見合わせて、ダリアの方を向いて、声を重ねた。

「おかえり」


 そこは実家でもなく、王城の敷地の片隅の広場であり、建物もなく、日が直接降り注いでいる。到底帰る場所とは思えない。けれど、

「ただいま」


 そこは、バリス大戦後最後にいた場所だ。一度終えた場所で、一から始め直す。英雄・ダリア=カルミュアはここに帰還した。

 それを『一、消えた英雄』の締めとする。




 これは、残酷な世界で、幸せを祈りながら戦う騎士達の物語。


一章長くなりましたが、お疲れ様でした。

二章もよろしくお願いします。

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