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花束を摘む  作者: 金川都
一、消えた英雄
21/29

二十話 ひと段落終える

二十話です。よろしくお願いします。

「コスモス、返すよ」

「う、うん」

 ダリアは借りた剣を鞘に納めて、コスモスの前に突き出したので、コスモスはただ受け取ったが、その後ダリアが観客の間を割って入ろうとするので、心配になって呼び止めた。


「どこへ行くんだい」

「こんな格好じゃ騎士だと思われないだろ。国家公務員らしい身なりじゃないとな。着替えてくるだけさ。」

 その言葉は、明らかにする騎士に戻ると意味していたので、試合前とは違う主張のダリアにコスモスは戸惑った。

 そして、ダリアは振り返りざまに疑問をぶつけた。


「あ、そんなすぐには無理か。もっかい入団試験やんないとダメか」

「いや、お前は騎士団内では行方不明者とされている。当然解雇もされていなければ、寮の部屋も残っている。好きなタイミングでいい。」


 少し離れたところで、アザミが飛ばされた剣を拾いながら、ダリアにそう返した。

「そう、か。」

 ダリアはそのままコスモスとアザミがいる会場を出ようとしたとき、バッと振り返った。


 まだ何かあるのかとコスモスはそちらを見つめた。ダリアは、観客が避けた広く空いた道の真ん中で、陛下へ向かって片膝をつき、胸に右手を添えて大声で言う。

「陛下、先日陛下の前で嘘偽りを申し上げてしまったことを深くお詫び致します。私は友人の言葉に耳を傾けようともせず、この3年背を向けて参りました。今日をもって、改めてこの国に、国王陛下に、そしてこの国の民に真に忠誠を誓います。また、一から新たに陛下の、そして国民の剣となり、盾となります。どうか、お許しを。」


 しかし、ダリアは赦しをもらおうとは思わなかった。陛下に嘘をつくことは紛れもなく罪に値することだったから。だから、断罪を受けてから騎士団に戻ろうとしていた。

 嘘をついていることを知っているコスモスは顔を青くしていたが、アザミは顔色を変えずにただ黙っていた。


「よく尽くすように」

 俯いていたダリアは、陛下の尊顔を見上げた。

 咎められるべき罪を見逃されたことが、受け入れられずダリアは目を丸くした。

 それを見守る者も、普通ならあり得ないものを信じられなかった。


「なぜ」

 ダリアはしばらくの沈黙の後にそう聞いた。陛下は穏やかに笑われて、驚くダリアに何のことはないのだと伝える。

「知っていたからだ。お前がウォート=アモネという者ではないことは、会った時から知っていた。ダリアという英雄と呼ばれた娘を私は知っていたからだ。並々ならぬわけを無理矢理口に出そうとするとき、誰しも偽りを口にするだろう。それは問われるべき罪でない。よく尽くすように。」


 ただの庶民生まれの騎士に陛下はそう言った。

「はい。」

 ダリアは真っ直ぐ陛下を見て、重く言う。立ち上がり際に一度礼をして、今度は本当に会場から出て行った。


 それから、観客達は中央に空いた穴を塞ぐようにして、何事もなかったように再びパーティーに戻り、賑わいが戻った。



「たまには騎士長が負ける演出も悪くはないなぁ」

 陛下の横へ戻ってきたアザミに陛下はそう言った。

「陛下がご満足であれば、私共にとっても嬉しいことであります。」

 アザミは余裕の笑みを見せてそう応えた。アザミは陛下がどれだけ優しく、甘いお人好しな方なのかを最初から知っていたので、ダリアが謝罪を述べたときも顔色をかけなかったのだ。

お疲れ様でした。

次話もよろしくお願いします。

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