十九話 騎士長と戦神
十九話です。
よろしくお願いします。
アザミは背を向けて円の中央まで戻っていき、私もそれについて歩いて、円の中央まで来た時向かい合った。
「すまないが、開始の合図をもう一度やってはくれないだろうか。」
アザミがコールマンにそうお願いすると、コールマンは戸惑いを見せながら、頷いた。
「そ、それでは改めて、、、始め!」
今度はアザミが動かなかったので、ダリアが仕掛けた。鳴り響く剣の掠れる音は、先程とは打って変わって軽い音になった。おそらく双方の剣撃があまりぶつかっていないからだ。
「すごい、」
コスモスが一つ呟く。剣撃がぶつからないというのは、アザミが避けられているのと、ダリアの動きが速いことを意味する。
ダリアの現役を知る者は皆口を揃える。ただ速いと。それだけなのにダリアは強かった。今も。
「騎士長が圧されている」
と、1人会場の見張り役の騎士が声に出した。
もはやそれは1人ではなく会場の観客は、パン屋の娘が騎士長を推していることを理解した。
重なる金属音の中、ついに勝負が決まった。アザミの剣が吹き飛ばされ、アザミが飛んでいく剣を目で追った時、既にダリアの剣は喉元でピタリと止められていた。
勝負が決まったことを知ると、アザミは肩の力を抜いて自分の負けを受け入れた。
「さっきのままでやってれば、お前が勝っただろうに。敵に塩を送りやがって。手加減なんてするかよ。」
「いや、それでいい」
試合にすっかり見入っていたコールマンはただ陛下の横に立ち尽くしていたので、陛下が気を遣われて、
「勝敗が決まったようだよ」
と、お声をかけた。
「は、はい。申し訳ございません。」
一つ咳をして、喉を整えて再び大声を発す。
「そこまで! 勝者ダリア=カルミュア!」
その声を聞いた観客達は、無我夢中になっていたことに気がついて、そこに立つダリアに拍手を送った。
『すごいなぁ、君』
『やっぱり演出なのかしら』
ダリアはアザミの喉元から剣を下ろして、声をかけてくれた観客達に腰を低くして、慣れないような礼を何度もした。
お疲れ様でした。
次話もよろしくお願いします。




