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花束を摘む  作者: 金川都
一、消えた英雄
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十六話 騎士長と町人

十六話です。

よろしくお願いします。

 アザミが何を言ってるのかわからなくて、思考が止まった。コスモスも驚いていて、目を丸くしてこっちを見ていた。

 観客達もアザミを見る方、こちらに目を向け始め、注目が集まる。


「コスモス、剣を借りる。」

「え、えぇ? 本当に行くのかい?」

「しょうがないだろ。んな大勢の前で、陛下の前であいつが指名しやがったんだからな。パンの代金だけじゃ、足りないな。これは」


 何だか、私はとても苛ついていたから、コスモスはただ腰にぶら下げている金の装飾の剣を黙って私に持たせた。

 私が席を立って中央へ向かう時、観客達はアザミの時のように道を開けた。ただ、私を見るなり、

『あのパン屋の子じゃ、』

『どうしてあの子なんだ。』

とか、そんな小さい声が通り過ぎる私の耳に入ってきた。


 私が中央へ近づくほど、アザミの顔が鮮明に見えて、同時にまたいらない考えばかり浮かぶ。


 なんで、こいつは私を求めた。もう私が、英雄・戦神がいる時代じゃないんだよ。必要としなくていいじゃないか。これからはお前たちが、アザミが、コスモスが、昔に戻らないように誰かを守っていくんだ。

 こんな平和な世に私の居場所は、戦場はないのに。どうして。


 

 

 


 コスモスが心配そうに見守る中、アザミとダリアは中央に立ち、剣を鞘から抜く。


「クリスタンが騎士団騎士長、アザミ=ユリオプス。」

「、、、ダリア=カルミュア」


 戦えそうに見えなかったダリアが、どうやらぶつかる気があるのを見て、コールマンがドラを鳴らして言う。

「始め!」


 その言葉と同時にアザミとダリアの剣がぶつかった。重なる金属音は、やはり剣を持ったことがない人間には出せないほど重く、それがダリアの現役時代を物語るものだった。

 それに観客達は内心演出では、と疑う者もいた。けれども、ただ1人コスモスだけは気難しい顔をしていた。


「アザミは手加減してるねど、ダリアは必死だ」

 ぽろっとそう零したコスモスの言葉を聞いて、近くにいた騎士は、戸惑いを混ぜながら応えた。

「それはそうでしょう。騎士長やあなたのご友人か存じ上げませんが、騎士長と対等に剣を交えるなど、剣を扱ったことがあるだけでは、本気でなんて戦えないでしょう。」

「ダリアはあんなに弱くないよ。」

「え」

(どうしちゃったんだろう。前に剣が持てなくなっていたけれど、それはとっくに克服したんじゃなかったのかい。)



「チッ」

 圧倒されて、ダリアは膝をついた。剣が重なる重さが異常にあり、避けていないと潰されそうになる。

 当時、筋肉ゴリラと陰で言ったことがあるが、今はそんな優しいものではない。威厳があり、存在感があり、やっぱりこいつは騎士長だ、なんて改めて思う。


「そうかお前、剣を捨ててから随分弱くなったな」

 アザミはコスモスが言っていたように、容赦なんてなく、ただムシャクシャした気持ちをぶつけるように剣を振る。


 コスモスは座っていた席をとうに離れ、中央を囲む円の最前列まで来て試合を眺めていた。

(まさか君、見知った人には剣を振れないのか。前に窮地の私を助けてくれた時は、あの強さがあったのに)



『戦で私が剣を振った分、仲間にそれが降りかかっていると思うと剣が重く感じるんだ』

(だから、、、)


 それを知らないはずのアザミは、まるで知っているかのようにダリアを煽った。

「ただ耐えるだけで反撃もない。そんなに自分が強いか。自分の剣の才が、私に剣を振ることを拒むか。」


 観客達ははじめは、騎士と町人が戦う異色の光景を楽しんでいたが、次第にそれはダリアを心配するようになり、アザミに恐怖を覚えた。

『パン屋の娘に何をさせているんだ』

『もう疲れているじゃない』

『充分楽しめたよ』

などと周囲から発せられる。

お疲れ様でした。

次話もよろしくお願いします。

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