十五話 試合の直前
十五話です。
よろしくお願いします。
アザミをどう説得しようか悩みながら、アイスココアを啜った時、一人の騎士が隣に座るコスモスに耳打ちした。
「えーホントに言ってる? アザミ知ってるの?」
「多分知らないかと。先程のことでしたので。会場内にいる団長は、コスモス団長含めて3名いらっしゃってて、」
その騎士と話を聞いたコスモスは、やけに切羽詰まったように慌てていて、何か問題が発生したらしい。とゆうか、コスモスは何でもかんでもすぐに慌てるから、とりあえずは何とかはなるだろう。
「第一と、第七の団長がいらっしゃるのですが、どちらも既に酔ってしまったみたいで、陛下の御前になんて」
騎士が指さした方で、第一の団長は貴族に囲まれ、酒を注がれては赤い顔でゲラゲラと高笑いしていた。また、第七の団長は泥酔しきって、端のソファーでぐったりと死んでいた。
「第一って! テディ兄さん何やってるの! 第七のおっさんも昼間から酒なんて飲まないでよ。護衛任務あるじゃん、、、え、待って。じゃあ私が出ないといけないの?」
「、、、そうなります。」
「え、ムリムリムリムリ。毎年アザミ容赦ないもん」
と、手を横に振りまくり、全力で拒否る。
「会場の皆様、14時から余興試合が行われます。会場中央部で行いますので、道を開けてください。」
陛下の横に立っていたコールマンが声をあげ、参加者達が従って、道を開けるために席を立ち始めた。そのテーブルと椅子をメイド達が奥へと閉まっていくのを、コスモスは見届けた。
「ねぇ、無理だって。死んじゃう」
「第八の団長ではありませんか。名家生まれのご自分を信じて!」
下っ端の騎士もだいぶ焦っているみたいで、もはやコスモスを説得するしかないみたいだ。コスモスも頭がパンク寸前で、あまりにも面白い光景だった。
「ふふ」
「今笑ったね!」
「ごめんごめん。面白くてついな。ははは、どれくらい困ってんのかは知らないけど」
「、、、他人事だと思って。」
コスモスは髪をぐしゃぐしゃに掻きむしって絶望している。先程までケーキを食べるのにカッコつけて、優雅に時間をかけていたやつとはまるで別人だ。
「それは本当か」
アザミのもとにも1人の騎士が伝えに行き、事態が伝わった。
どうやら、試合の相手役だった第二の団長が、街の巡回中に酔った町人に川に落とされたらしく、不意のことで捻挫してしまい、試合に出られないらしい。
「ですから、代役を。」
と、2人が話していると、話が聞こえていないコールマンがそれを切るように言葉を発した。
「では騎士様、中央へお越しください。」
アザミはそれを聞いて、一歩踏み出した。
「き、騎士長っ」
「心配するな。第八の団長が見えた。チキンのあいつも中央から声をかければ、否が応にも前に出てくるだろう。」
と残し、中央へ向かって歩き出し、試合を観ようと集まった観客達がアザミの道を開ける。
まじか、あいつコスモスが断れないようにあそこから声をかけるのか。さすがに可哀想だ。
「、、、うーわ、死刑宣告」
コスモスもそれを察したようで、ガタガタと震えて、すっかり黙り込んでいる。
アザミの前に相手が現れないので、国王陛下は少し心配したように顔を曇らせ、伝令に来た騎士に言う。
「先程の話、私にも聞こえたが、代役をまだ決めていないというのは、本当かね。」
聞かれた騎士は嘘をつくわけにもいかず、少しを間を開けて、
「はい」
とだけ言った。
「では、今年は無しにして構わん。私の趣味趣向にすぎないのだから。これ一つ無くともお客人は許してくれるだろう。」
陛下はコールマンに試合を中止にするよう伝え、コールマンが言葉を発しようとした時、アザミが声を出した。
「来い。お前だ。」
その言葉にコスモスは、ビクッと反応して俯いていたが、数秒のうちに覚悟が決まったのか、席を立つ。が、さらにアザミは付け加えた。
「お前だ。ダリア」
「は?」
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