十三話 私が決めたこと
十三です。
どーぞ。
アザミは、特に反応もなく、平然と言った。
「なんだ。先程からいたというのに。懐かしいよな、それ。」
急に現実に戻ることについていけなくて、戸惑いを見せたが、すぐに立て直して返した。
「そうだな。で、代金よこせ。こんなクソ忙しい日にゆっくりできるかよ。」
「ふぅ、もう戻らないと言うなら、今日だけでもいいじゃないか。」
否定しまくっても、一向に引かずに淡々と話を続けるあたり、昔のままだ。
今日だけという単語がいたく気になったので、仕方ないから、お姉ちゃんに怒られるだろうけど、配達をしばしサボることにした。
「では、少し待っててくれ。試合があるんだ。すぐに終わるが、それまでは会場の中で何か食べているといい。これを持っていれば、何を食べて飲んでも何も言われないだろうから。どうせ配達で昼もまともに食べてないんだろ。」
アザミからバッチのような赤い装飾を手渡された。
「あれ、外にいないからどうしたのかと思った。」
「遅いんだよ」
コスモスが遅れてきた。
こいつがゆっくりしてたせいで、私はお姉ちゃんに怒られる運命と、めんどくさいアザミとの楽しい楽しいお話が待っているというのに。
会場の中では、アザミから貰ったバッチのおかげで、ウェイターには一度振り向かれるが何も言われなかった。客の中には商人も混じっていたので、案外馴染めるものだ。とりあえず、飲み物はアルコール臭かったが、食べ物はさすが王城と言わんばかりの豪華なものばかりだった。
お腹が空いていた私が、肉や果実にかぶりついているのをただ見ていたコスモスが、何かを思い出したらしい。
「あ、代金もらってくるね」
「無理だよ。あいつ陛下の横にいるし、試合まで動く気ないだろうな」
「あぁ、そうか」
それから隣に座って、疑問を投げた。
「で、なんでここにいるの? 会場で飲食できるのって、お偉いさんか街の貢献者ぐらいなんだけど。普通招待されるのはガーベラさんじゃない?」
「お姉ちゃんは毎年断ってる。暇がないってな。私を招き入れたのはアザミだ。」
コスモスは、うっそ、えーとか、だいぶ大袈裟に驚いていたが、まぁいい。
「さっきアザミに見つかった。代金もよこさずに、ただ話をしようだってさ。」
「なるほどね、だから待ってるんだね。」
最悪な空気になるだろう。私はきっと曖昧に返すだけだろうから、黒白つけたいアザミは怒るはずだ。これでもう顔も合わせることさえ無いまま終わるんだ。アザミとも、コスモスとも。
「あぁ、そうさ。待ちたくもないけどな。」
「酷いなぁ。君に会いたがっていたのはホントなのに。」
コスモスはそのまま席を立って、ケーキを持ってくるね、と私をその席に残した。
はぁ、とため息と共に私は自分に一つ決心した。騎士には戻らず、剣を振らず、忠誠を誓わず、このままのんびり生きよう。モノ好きな英雄の友人がいつまでもその影を探すなら、太陽など消してしまおう、と。
お疲れ様でした、
次話もよろしくお願いします。




