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花束を摘む  作者: 金川都
一、消えた英雄
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十一話 鬼に、祭りに、花に

十一話です。

よろしくお願いします。

 基地に戻った時、私の席にアザミが座っていた。

「こんな時に遅刻とはいい度胸だな、お前」


 ダリアの家では一度も時計なんか見てなかった。ゆっくりしていたけれど、私の時計は確かに10時半を過ぎている。訓練は朝8時から。2時間の大遅刻だ。そりゃ上司は怒る。


「昨日は何をしていた。」

「お泊まり。誘わなくてごめんね。」

 アザミは一つため息をついたので、私がどこへ行っていたのか、すぐに分かったのを察した。


「戻る気、ないのかもね」

アザミは眉をひそめて、私の顔をじっと見た。

 そうだった、ダリアを騎士に無理矢理戻そうとするのはもうやめると言ったのは私だ。多分脳内では、何言ってたんだコイツとか思ってんのかな。


「頭大丈夫か。」

「もうちょっと優しく言ってよ。」

 私の机にある書類をトントンとまとめて、アザミが席を立った。

「では、もう会うことはなくなるということだな。」

「まぁ、そうなるね。」

 アザミは率直に言った。昔、張り合っていたダリアがもう戻らないかもしれないことを、悲しく思ったのかもしれない。


「死に別れするよりはいいでしょ。」

 顔色を伺って、アザミの寂しさを和らげたくて出た言葉は、あまりに無責任だった。途中、後悔すらするほどに。

 それらほんの少しだけアザミを不機嫌にさせた。

「当たり前だ。まぁ、それならそれで仕方あるまい。お前が遅刻してる間の分の事務仕事は、私が片付けておいた。また溜てるつもりだったのか?」

「いやいや、その辺は感謝しかないや。ありがと。君の分で私にできるものがあるなら、さりげなく混ぜておいてよ。」

「わかった。」



 結局、建国記念日まであっという間で、その間の王都は賑わいが濃くなり、例年通りハメを外しすぎた住人が基地を行ったり来たり。それが余計仕事になって、時計なんて見る間もなかった。


「はぁ、間に合わないかと思った。」

 建国記念日当日、ようやく花流しで流す花冠が完成した。悩んで悩んで、それでも決まらなかったので、去年と同じコスモスの花だけにした。

 嫌な予感がしていた私は、花言葉の〈調和〉を自分には当てずに、とりあえずアザミとダリアが穏便にこの先を乗り越えられるようにとだけ願って、早朝の解放された海に思い切り投げ込んだ。


 呆気なく私の花流しの儀式が終わって、やっぱり思うことは、私という花があの波にさらわれて、遠くの方で沈んだ時は虚しいということだ。

「さ、帰ろ」


 朝日に向かって一つ伸びをして、帰ろうとした時にまだ浮かんでいる花冠があった。当然、自分のは先ほど沈んだのを見たので、きっと誰かが同じように投げ入れたのだろう。

 その花をよく見ると、オトギリソウとアネモネの花の2種で、蕾がちらほら見えた。オトギリソウの黄色と、アネモネのピンクと紫の色は本当に相性が悪く見えて仕方がなくて、一度見たきり、沈むのも見ずに仕事に戻った。



 昼下がり巡回に回った時、街はすっかり祭りムードで、どの通りにもパレードが行進していた。川なんか花流しでみんなが一斉に投げるもんだから、水面なんて見えなくて、いろんな花の色で埋まっていた。そこに一体いくつ私が流れたのやら。

 さて、時計台は13時を指す直前。そろそろ王城に行くとしよう。配達を済ませたダリアがアザミから離れたくて仕方ないが、代金をまだもらっていないから帰れない、みたいなそんな状況だろうから。


お疲れ様でした。

次話もよろしくお願いします。

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