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6-4.三頭の竜

 突然だが、ファンタジー世界において、最強の存在といえば何を思いつくだろうか。


 リッチーやヴァンパイアといった、死という概念を乗り越えた不死者たちの王だろうか。

 はたまた、超越者といったイメージの強い、天使や悪魔といった存在だろうか。

 人によっては、なんでも取り込んでしまうスライムこそ、というかもしれない。

 強者としてよく描かれる、蜘蛛や九尾の狐、不死鳥なんかを思いつく人もいるかもしれない。

 いやいや、人間こそが最強であると主張する人もいるかもしれない。


 しかし、おそらくほとんどの作品で最強の一角と称されているのは、やはりドラゴンだろう。


 強靭な肉体と尾、空を飛ぶための翼、全てを引き裂く爪と牙、属性のブレスや魔法を使い、知識は人間以上。寿命は作品によって違うが、基本的には人間より遥かに長い時を生きる。

 形状としては両手が羽になっているワイバーンタイプ。四足のずっしりとした身体の西洋タイプ。長い身体を持つ東洋タイプなど。

 様々いるが、共通するのはいずれも、滅多に人に姿を見せず、その巣には財宝を蓄えている。といったイメージだ。


 東洋タイプのドラゴンは龍と呼ばれ吉兆の象徴。

 西洋タイプのドラゴンは竜と呼ばれ悪の象徴。

 その性質は違えど、強者であることには違いない。





 この世界では、六大種族や魔物とは別の種族として扱われている。

 母神によって作られた半精霊といった存在で、人族や魔族からは畏怖の象徴として扱われている。

 数はワイバーン型を除けば、確認されているだけで約350個体程度。

 約100個体は、クレアナ聖国という国の北に位置する内海、トラウリオン海にあるドラゴニス島に生息している。

 約350個体のうち、ドラゴン社会での上位存在は15体。

 人間社会に深く食い込み、人間と交流のある個体が5体。

『龍王』と呼ばれる、長老が3体。

 ただし、これらは人間が交流のある個体からの情報らしく、実際数は不明。

 ドラゴニス島を除けば判明している巣の数は8か所。いずれも人間たちが容易には近づけない場所にある。

 彼らは財宝のほかに知識にも貪欲で、おそらく最先端の知識を有している。


 これがこの世界のドラゴンだ。

 これはシャルロッテさんの教科書に書いてあった。






 で、そのドラゴン。

 今、3体のドラゴンがこの城にいる。

 場所は中庭。

 うん。これは西洋タイプのドラゴンだな。

 とか、割と冷静に考えられている自分が怖い。

 いや、だってめっちゃ威圧感ある。

 俺の知識に当てはめるなら、レッドドラゴンという奴だろうか。

 見上げるほどの巨躯、威圧感を与える翼と赤い鱗。

 太い尻尾に牙と爪。

 赤い瞳がこちらを睨んでいる。



 正直、ちびりそうです。

 え?冷静じゃなかったのかって?

 いやいや、冷静でも怖いもんは怖い。

 三頭、ん?三頭?三匹?

 まぁ、いいや。

 とにかく三頭の竜が俺を見下ろしている。

 こんな状況、誰だって耐えられないだろ?


 てか、集まった人間の中でなんで俺が先頭なのさ。

 シャルロッテさんやマリアゲルテさんどころか、じぃやさんやヴィゴーレまでも俺を盾にするように後ろに立っている。

 いや、俺今、ポーションイーターだから、完全に場違いだと思うのよ。


 ちなみにこの場にバロンやノブナガ、氷室さんたちはいない。

 居たら確実にややこしくなる。

 俺の直感がそう告げている。

 多分、ノブナガのようにおまけに厄介ごとを連れてくる気がする。

 そんな気がするのだ。





「汝が、新たなる神か」

 ドラゴンが喋った。

 口の動きと言葉があってない気がするが。

 確実に先頭のドラゴンが喋った。

 というか、誰が神だ。

 吾輩は猫だ。

「新たな神かと問うておる」

 違うよ。

 とはいっても、この状態じゃぁ喋れないしなぁ。

「ふむ。言葉が通じてないのか?」

 通じてるけど俺が喋れないんだよ。

「父う……、長老様。もしかして、彼は喋れないのでは?」

 ようやく気付いてくれた。

「長老、言葉が通じないのでは交渉は不可能では?」

 うん?なんだ。

 交渉?

 なんか交渉したいことがあったのか?俺に?

「うぅむ。喋れないのでは流石に」

 こっそり、『鑑定の魔眼』。さて、どう出るかな?






[パーソナル]

 名前『ファルバロ』

 種族『竜種・レッドドラゴン』

 種族ランク『A』『宝石級』『天災級』ほか

 冒険者ランク『-』

 職業『-』

 称号『龍王』『龍主』

 レベル『48』

 好物『ヤギ』


[ステータス]

 体力『S』

 潜在魔力『S』

 筋力『S』

 防御『S』

 敏捷『A』

 魔力『S』

 知力『A』

 器用『B』

 対魔力『S』

 統率『A』

 運『B』


[状態]


[習得スキル]

『神託』(レベル:A)

『ブレス(属性)』(レベル:A)

『爪激』(レベル:A)

『尻尾攻撃』(レベル:A)

『火魔法』(レベル:A)

『飛翔の衣』(レベル:A)

 etc、etc……



[パーソナル]

 名前『トラキス』

 種族『竜種・レッドドラゴン』

 種族ランク『B』『白金級』『災害級』ほか

 冒険者ランク『-』

 職業『-』

 称号『』『』

 レベル『40』

 好物『ヤギ』


[ステータス]

 体力『A』

 潜在魔力『A』

 筋力『B』

 防御『A』

 敏捷『A』

 魔力『S』

 知力『A』

 器用『B』

 対魔力『S』

 統率『A』

 運『B』


[状態]


[習得スキル]

『ブレス(属性)』(レベル:A)

『爪激』(レベル:A)

『尻尾攻撃』(レベル:A)

『火魔法』(レベル:A)

『飛翔の衣』(レベル:A)

 etc、etc……



[パーソナル]

 名前『ハグレオン』

 種族『竜種・クリムゾンドラゴン』

 種族ランク『B』『白金級』『災害級』ほか

 冒険者ランク『-』

 職業『-』

 称号『-』

 レベル『41』

 好物『ヤギ』


[ステータス]

 体力『A』

 潜在魔力『A』

 筋力『A』

 防御『B』

 敏捷『S』

 魔力『A』

 知力『A』

 器用『B』

 対魔力『S』

 統率『B』

 運『A』



[状態]


[習得スキル]

『ブレス(属性)』(レベル:A)

『爪激』(レベル:A)

『尻尾攻撃』(レベル:A)

『火魔法』(レベル:A)

『飛翔の衣』(レベル:A)

 etc、etc……





 ステータスたっか!?

 なんだこれ。

 流石ドラゴン。

 ていうか、ステータスが微妙に違うな。

 個体差があるってことはやっぱり魔物や魔獣とは違うのだろうな。



 この世界の魔物や魔獣は個体差が小さく、同種族内でステータスはほぼ固定となっている。

 勿論、小さいといってもステータスの個体差はあるが、せいぜい同じランクの範囲内だ。

 これに当たらない、大きく成長した個体が別種として確立するのか?

 人間や魔族はこれに当たらない。

 種族のステータスよりも個体差が大きいのだ。


 魔物辞典の端っこにそう書いてあった。

 どうもこの記述は後世に追加されたものらしく、走り書きで書かれていたのだが。

 この辞典を常用していた研究者でもいたのかね。


 この記述は俺に衝撃を与えた。

 この理屈でいうと、俺は魔物ではなく、どちらかと言うと人間に近くなる。

 しかし、俺の召喚したフォレストキャット達は能力的には大差はない。

 つまり、フォレストキャットに成れる俺の体は間違いなく魔物だ。

 だけれども、ステータスだけは人間と言うことになる。

 詰まりどう言うことかと言うと……。




 わからん。



 まぁ、わからないことをグダグダ考えても仕方がないので今はこの事は保留しておいたのだ。


 それよりも今はこの状況だ。

 俺はしゃべれないし。

 どうしたものかね。


「しかし、ここで人と生活していると言うことは少なくとも人語、いや、ドリス語だったか。これは聞き取れているはずだ。トラキス、ハグレオン。このお方の身の回りのお世話をしろ。いずれ、会話ができるようになるやも知れん。交渉はその時で良い」

「か、かしこまりました」

「承知いたしました」

 なんか知らんが、納得してくれたようだ。

 先頭の竜は翼を広げ、さっさと飛び立ってしまった。



 えぇ。世話って。

 別に要らないんだけど。

「そういうことだ。人の子よ。良しなに頼む」

「い、いや。それはよいのですが。……あの、申し訳ありませんが、そのような巨体ではここでの生活は……」

「なんだ、そんなことか」

 二頭の竜の姿が光り、目をつむる。

 目を開けた後、そこにいたのは。



「これでよいか」

「あの、おかしくないでしょうか?」



 赤い髪をした、二人の少女であった。

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