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6-3.転移者秘密会合

「ところで、()()ってなんですか?」

「それ、私も気になってたわ」

 球形の物体を見ながら、グレイが言った。

「あぁ、それな……」

 軽く説明してみる。

 まぁ、説明と言っても、俺もよくわかってないけど。

 転移者かどうかもわかっていない、ゴルディのことを言うのもどうかとは思ったのだが。まぁ、伝えていたほうが後々楽かな。


 で、伝えた後の彼らの反応。

「「ちょっと意味わからない」」

 まぁ、そうなるよな。

 俺たちの世界にいた機械生命体、なんて言われてもな。

 これはちょっと、本人に喋って貰うのがいいかな?

「おーい。ゴルディ」

「なんだ?というか、先に迎えに来てほしいんだが」

「「え?」」

 ふふふ、二人が驚いている。

 まぁ、声だけなんだが。

「えー。こちらが機械生命体のゴルディさんです。どうやら向こうの世界の俺の親父の友人らしいです」

「「えぇ!?」」


「ちょ、ちょっとまって。そもそも機械生命体って何?私、向こうの世界にいた時にそんなもの聞いたことないわ。いくら何でも、そんな巨大ロボットが居れば話題になりそうなものだけど」

「僕もそんなもの……、あ、いや。ちょっと待ってください」

 ん?グレイが何かを言い澱む。

 なんだ?何か心当たりがあるのか?

「実は僕、昔から変な夢を見るんですよ」

 え?なに?人生相談か何か?

「夢の中だと僕は所謂一般市民で……あ、今も一般市民ですけど」

「一般市民?次期伯爵様は、随分謙虚だな」

  「ちょ、神獣様。からかわないでくださいよ」

「え?次期伯爵?は!?まさか貴方、転移者の力を利用して伯爵令嬢を手篭めに……」

「違うよ!?」

 氷室さん、突っ込むところそこか?

 まぁ、最初に話の腰を折ったのは俺だが。

「まぁ、冗談はさておき、グレイ。その夢がなんなんだ?」

「あ、はい。実は夢の中で何度か、所謂、魔法少女的なものや、戦隊ヒーローに会ったことがあるんです」



 ……はい?


 一瞬、思考が停止してしまった。

 え、なに、この子。

 本気で言ってんの?

 いや、待てよ。

 あくまで夢。夢の話だ。


「え、……っと。うん。どんな夢でも見るのはその人の自由よね。うん」

 ほら、氷室さんも若干呆れた感じじゃないか。

 しかし、氷室さん。寝てる間に見る夢は制御できないと思うぞ。

 いや、なんだっけ。

 何度も同じ夢を観測、記録することによって夢の中の町を固定させる。

 とかそんな話があったような。

 フロイトだっけ?ユングだっけ?

 多分、昔やったゲームか漫画か何かだろうな。

 正直、何の作品だったか覚えてないので、なんか中途半端にふわっとしているが。

「あの、すみません。割と真面目な話なので」

 氷室さんが怒られた。

 よかった。口にしなくて。

「で?その夢が何なんだ?」

「あ、そうでした。その夢で、なにか宝石のようなものを手に入れたのですが」

 夢で手に入れた?

「ちょっと待って。まさかあなた、夢で出た物品を保管していたの?」

「は、はい。まぁ、それ自体は元の世界の部屋にあるんですけど」

 んん?

 いやまて。

 おかしいだろ。

 夢で出たものを拾った?

 それを持って帰った?

 なんだそりゃ?


 いや、冷静に考えてみよう。

 この場合アニメや漫画ではどうだったか。

 パターンとしては実は夢ではなかったパターン。

 つまり、俺の居た世界は巨大ロボットに魔法少女的な物や戦隊がいたということになる。

 いや、ねぇよ。

 いくら何でもそれはねぇよ。

 少なくとも俺は出会ったことはない。

 というか、そんなものあればニュースにでもなっていそうなものだが。

 そんなニュース見たことないがなぁ。


 他のパターンとしてはグレイが特殊な人間だったパターン。

 例えば夢の中に入れたりとか。

 が、これを聞く限りは本人に自覚はないようなのでそれもないかな?

 ちょっとだけ可能性が残っているといったところか。


「呆れたわ。そんな怪しいものよく保管してたわね」

「いや、まぁ。なんとなく置いていたと言いますか」

 ふーん。

 まぁ。確かに俺でもなんとなく置いてるかもな。

「まぁ。危ないものじゃなさそうだし。心配なら回収させてもいいんじゃないか?」

「そうね。回収してもらうのが……」

 今度は氷室さんが固まった。

 なんだ?何か変なこと言ったか?

「って、ちょっとまって。回収ってどういうこと?」

 え?そこ?

「いや、俺たちの代わりに向こうに転移した人がいただろ?そいつらに回収してもらえばいいんじゃないの?」

 グレイが微妙そうな顔をしている。

 そういえば、帝国の兵を捕虜にした時も微妙そうな顔をしていたな?

「いや、向こうと連絡なんて取れないでしょ。いったいどうするつもりよ」

 んん?

 いや、取れるだろう。

 世界間通信とやらで。


 って、いや待てよ?

 あの女神のすることだ。

 もしかしたら、世界間通信は俺たちだけなのか?

 確認してみるか。

「あー。一応、聞いておきたいんだけど、女神の力で向こうと通信したりとかは?」

 俺の言葉に、グレイと氷室さんが顔を見合わせる。

「「ないですね(わね)」」

 おうふ。

 やっぱりあの女神適当なことしてんなぁ。



「ところで、二人とも。転移されたってことは、例の能力、何貰ったの?」

 交流は進み。

 よくもまぁ。我ながら3時間くらいぐだぐだと話してたものだ。

「私は、光と風魔法、雷魔法の力、それと時間制限があるけど身体能力の大幅な強化能力よそっちは?」

 うむ。なるほど。わかりやすい能力。

「えっと。ごめんなさい。僕よくわかってないです。多分、対雑魚集団戦、処刑人、九死に一生、死亡フラグあたりだとは思うんだけど……」

「え、何そのラインナップ……。字面的にすごく危ない人じゃない」

「ですよね……。正直、効果も実感ないですし」

 うん。君のスキルは確かにね。

 けど、スキルのせいかどうかは知らないけど、死亡フラグはちょいちょい発動してると思うぞ。

 お前、うかつな発言しすぎだし。

 ちらり。

 二人がこちらを見た。

 あ、俺の能力か。

「あ、もしかして、俺?ぶっちゃけ、俺こそわからんよ。あえて言うならこの可愛さかな?」

「「……」」

 え、なに。その沈黙。

「おい、なんだよその反応」

「いや、だって……ねぇ」

「ですよね」

「まぁ、冗談はさておき。俺はどうも魔物になってるのが特典みたいだな」

 言葉がわかるのはスキルによる効果っぽいし、レベルはポーション飲んだからだし。

「なんか、女神から獣人の祖となれ、とは言われてるんだけどな」

 今のところ、俺の召喚したネコのボスにしかなってない気もする。

「獣人の祖って、どうするつもりなの?」

「うっ!そ、それは……」

 嫌な、いや嫌ではないんだが、こう俺の中の倫理観にそぐわないことを思い出してしまった。

「そういえば、魔物って人間に寄生して繁殖するタイプもいるんですよね」

「えっ!?」

 おい、ばか。やめろ。

 俺の中ではそれは棚上げにしてるんだから!

「貴方、まさか人間を襲って……」

「違う!断じて違う!少なくとも俺にその気はない!」

「まぁ、神獣様、人型にも慣れますもんね。そういうことするとしても、人型になってからですよね」

 おぃぃぃい!?余計なこと言うなよ!?

 俺のイメージが崩れるだろ!

 氷室さんは肩を抱えて若干俺から距離を取り始めた。

「いや!しないから!襲わないから!!」

「い、いや。別にいいと思うわ、よ?趣向は人それぞれだし……」

「だから襲わねぇよ!」




 そんな感じのやり取りをして、今は夕方。既に日は傾き部屋に長い影を差し込んでいる時間帯。

 話を始めて既に5時間程経過している。

 出会ったときは昼前だったが、既に夕方の5時頃。

 まぁ、正確な時間はわからんのだが。

 ともかく、じぃやさんに潜ませた影から、彼が慌てて移動していることが分かった。

 目的の場所は、多分ここだ。

「ん?なんか城の中があわただしくなってきたな。二人とも、今日は一旦、これまでとしよう」

「なぜそんなことがわかるの?」

 氷室さんが疑問を投げるが、それに応える暇はない。

「とりあえず、納得してくれ。あと、翻訳機のことは、バロンとノブナガ以外にはとりあえず、喋らないように。俺の心の平穏のために」

 このことが漏れると、シャルロッテさんたちが入り浸りかねない。

 ゴルディにもそのことは言い含めてある。

 今、翻訳のオンオフ機能を作ってもらっている最中なのだ。

 って、しまった。

 ゴルディの分身を迎えに行かなきゃいけないんだったっけ。

 忘れていた。

「あ、しまった。この方たちどうしましょう」

 グレイが部屋の隅に積んだ人たちを指さしながら、こちらに問いかけてきた。

 しまった。

 そっちもすっかり忘れていた。

「あー、グレイ。悪い。オットマンたち呼んで彼女と一緒に医務室……、いやギルドとかの方がいいか。とにかく、休めるところに送ってやってくれ。理由は……、まぁ、強力な魔物が現れて、『閃光』は退治に成功ってことにしといたらいいだろ」

「わかりました」

「いいの?そんな嘘をついて」

「いいの。後で面倒なことになるよりは」

 正直、説明が面倒だ。

「あ、そうだ。これ持っていけ。多少の証明にはなるだろ」

 俺は空間魔法から、あるものを取り出す。

 以前倒したテールハンマーヘッジホッグ。そのツノだ。

 先週、取りに行っていたのだ。

 俺だってただゴロゴロしていたわけではない。

 していたわけではないのだ。

「え?ちょ。それ空間まほ……」

「とりあえず、今は納得してくれ。この話はこれで終わり!」

「……分かったわ」




 ガタン!

 扉が荒々しく開かれる。

「失礼いたします。アレクシス様、一大事にございます」

 入ってきたのは勿論じぃやさんだ。

 そのじぃやさんから、とんでもない言葉が発せられた。


「この天空城に、ドラゴンが向かってきております」








 ド、ドラゴン。だと!?

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