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6-1.二人目、もしくは三人目

 宴会の翌日。

 ちょっと気になったことがあったので街の端っこに来てみた。

 城壁の外側は少しだけ地面が残ってはいるが、予想通りほぼ城壁の範囲と同じみたいだな。

 城壁はこの空飛ぶ大地の範囲みたいだな。

 まぁ、もともとが山の中腹にある台地みたいなところだったけど、おそらくこの山の位置に後からこの城が地面ごと乗っかって形成されたのだろう。

 いったん飛んで、側面から下部分へ移動した。

 石だな。

 なんの変哲もない。

 こんなものが宙に浮くなんてな。正直信じられん。


「多夢和……いや、アレクシス」

 ん?

 ゴルディの声がする。

「この声、ゴルディか?どうやってしゃべっているんだ?」

「この天空城はいわば私の体だ。天空城の範囲内なら、声を伝える事が出来る。それよりも、魔力供給されたので分体の作成が出きるようになった。後で上の部屋に迎えに来てくれ」

「分体?」

「あー、なんだ。小さな私と思ってもらえれば問題ない。意思疏通も容易になる」

 あれかな?

 アニメでよくみる妖精的なものかな?

 いや、勇者シリーズだと、融合前の本体か?

「了解。後で迎えにいくよ」

「頼む」

 はー。

 そしたら、先にそっちを済ませてしまおうかな。




 おや?

 ふと、下を見ると人が一人居た。

 髪の長い、冒険者っぽい人だ。

 革製と思われる胸当てに、普通の剣より細身の剣を装備した、所謂軽装剣士と言うやつだろうか。

 あー、これは多分、皇都の冒険者で帰ってきたら宙に浮いてて登れなくなったのかな?

 どうしよう。送ってやった方が良いのだろうか。

 でもなぁ。

 一人送ると俺も俺もと増えて仕事が増えるのよな。きっと。

 それにしても、さっきから少女に睨まれている気がする。

 だってほら。バッチリ目があってるもん。

 仕方ない。

 行ってみるか。

 言葉は通じないだろうけど、最悪、問答無用で咥えて飛べばいい。上の町に下ろしてさっさと逃げれば何も問題ないだろう。

 そう思って嫌々ながら、下に降りた。



 近くで見るとやっぱり冒険者っぽい。

 というのが、この子、籠を持っている。

 その籠が、ギルドで支給されているものなのだ。

 ギルドのワッペンの入った籠で、主に凡庸の採取クエストの際に渡されるものらしい。

 要はこれだけ取って来いって籠だな。

 ってことは、この子、採取クエストに行ってたのかな?

 まぁ、女の子だしな。

 討伐クエストでバンバン魔獣倒すようなクエストは受けないか。

 わかる。わかるぞ。怖いもんな魔獣。ハンマーヘッドヘッジホッグみたいな魔獣が出てくると思うとな。

 ってそういえば、そういうクエストばかり受けそうな少女を数人知ってるな。

 エルフ侍の妹に、ガラハドの相棒も少女といえる年齢だろう。


 とりあえずさっさと上に運んでやるか。

 俺はヴォルケーノに姿を変えて、少女を乗せようと近づく。

「……この事態。貴方がやったの?」

 ん?

 話しかけられた。

「いや、俺じゃないけど……」

 いや、答えてもニャーとしか喋れないんだが。

 昨日、ゴルディの翻訳機で普通に喋ったから忘れていた。


「貴方、魔物ね。皇都をこんなにしてしまうなんて。覚悟はいいかしら?」

 少女が鞄を投げ捨て、細身の剣を構える。

 投げられた鞄からは何か草の様なものがこぼれ落ちてしまう。


 いや、こいつ、何か勘違いしてないか?

 もしかして、俺が皇都を襲って空に飛ばしたとか思っているのか?

「まさか皇都がこんな形で壊滅するとは思わなかったわ。きっと、貴方が女神の言っていた『災厄』ね」


 ……ん?

 ちょっとまて。今、聞き捨てならないこと言わなかったか?

「覚悟しなさ……」

「閃光さん!大丈夫ですか!?」

 なんか増えた。

 うーん。見た目的に冒険者だよな?

 こいつらも。

 見るからに駆け出し……。

 って感じでもないのもいた。

 風貌はベテラン戦士。

 髭を生やしたダンディズム。

 腕を組んでこちらを睨んでいる。

 が、目が死んでいた。

 今にも「俺、この戦いが終わったら……」と言って、死亡フラグをたてそうな雰囲気だ。

「皆は下がっていなさい。こいつは、今の貴方達じゃ無理。正直、守れる自信もない」

「わ、わかりました。お気をつけて!」

 冒険者風の男女がそう言って下がっていく。

 いや、やらないよ?

 勝手に人を悪魔みたいに言うなよ。

 あ、人じゃなくて猫だったわ。


 少女が武器を構える。

「行くわよ!」

 って、速っ!!

 速さはリヴィアーデさんやバルクス以上か!!

 俺の頬を細剣が掠める。

 切る事より突くことに特化した細身の剣は何度も俺を襲ってくる。

 その全てをギリギリで避けながら考える。

 いやー、本当に早いわ。

 レベル高くてよかったわ。

 人間だったころなら見えてすらないだろうなぁ。

 が。

 俺は『鑑定の魔眼』を発動する。




[パーソナル]

 名前『氷室彩音』

 種族『人間』

 種族ランク『-』

 冒険者ランク『B』『白金級』『災害級』

 職業『冒険者』

 称号『閃光』

 レベル『21』

 好物『蜂蜜』


[ステータス]

 体力『B』

 潜在魔力『A』

 筋力『C』

 防御『C』

 敏捷『A+』

 魔力『B+』

 知力『B』

 器用『C+』

 対魔力『C』

 統率『C』

 運『B』


[状態]



[習得スキル]

『閃光と雷鳴』(レベル:EX)

『硝子の法衣』(レベル:S)

『光魔法』(レベル:S)

『風魔法』(レベル:S)

『雷魔法』(レベル:S)

『細剣』(レベル:C)

『短剣』(レベル:D)

『片手剣』(レベル:D)

『片手盾』(レベル:C)

『生活魔法』(レベル:C)

『炊事』(レベル:B)

『洗濯』(レベル:C)

『掃除』(レベル:C)

『金銭管理』(レベル:D)


 etc、etc…


 やっぱり、名前も漢字だし、この『硝子の法衣』って、あれだよな。

 転移者特有のチートスキル。

『閃光と雷鳴』もそれっぽいけど、現状じゃなんとも。

 それにしても、スキルのレベルが高いな。

 EXとか、俺以外で初めて見た。

 魔法系もSばかりだし、グレイとは全然違うな。

 そう考えていた俺の目の前に急に盾が現れた。

 あぶなっ!?


「今のを避けるなんて……、完全にタイミングをつかんだと思ったのだけど」


 今のは……剣檄の間に盾による裏拳を挟んだのか。

 なるほど、盾ってそういう使い方も出来るんだな。

 戦闘慣れしてるみたいだし、早く決着を着けたいんだが。

 さて、どうしたものかな。

 会話はできないしなぁ。


 仕方ない。

 悪いけど、戦闘不能にさせてもらおう。

 そうと決まれば、アレがいいかな。

 俺は鳴き声に『威嚇』と『恐怖攻撃』を乗せる。

 今まで何度もお世話になったスキルだ。

 しかし。


「なんて気迫……。やっぱり、貴方が……」


 効かなかった。

 まぁ、ヴィゴーレにも効かなかったし、一定以上の強さの人間には効かないのかもな。


「これは、本気で行くしかないわね」


 やばい。なんか知らんが、本気になったらしい。


「時間がないから、一瞬で片づけるわ」


 時間がない?どういうこっちゃ?

 いや、そうじゃない。

 どうにかこの場を丸く収める方法は……。


 あ、そうだ!この手があった!

 今からでも間に合うか?

 えぇい。考えも仕方がない!

 やるしかない!


「『硝子の法衣』発動」


 赤系のオーラが彼女から沸き立ち、ぶわっと彼女のきれいな長髪が広がって逆立つ。

 なんというか、ヤバい雰囲気だ。


「行くわよ!」


 彼女が飛び込んでくる。

 迷っている暇はない。

 俺は姿を変えるように意識する。

 ポーションイーター。


「っ!?」

 ほぼ、猫のそれを見て、彼女の顔に、一瞬の動揺が産まれた。


 勝機!!


 ごろん、と転がり目一杯媚びる。

 にゃぁぁん。

 恥もプライドも外聞も投げ捨てた、中身おっさんの、全力の媚びを見るがいい!

 ……なんか悲しくなってきた。

 にゃぁぁん。

「うっ!」

 効いてる効いてる。

 ふふふ、さすがにこの姿の俺は攻撃できないだろう。



 俺は若干、5分程彼女の足元で媚びまくった。

 そして、ようやく彼女は剣を納めたのであった。


 さぁ、存分に撫でるがよい!

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