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1-7.陰謀の香り

 窓から跳んだ俺は近くにあった木へと飛び移る。

 猫の身体ってすごいな。

 結構高い位置から跳んだのに、全然身体に衝撃が来なかった。

 あの部屋は3階にあったのか。

 そういえば食堂も2階にあった。

 おっと、そうだ。構造把握は後だ。

 今は兵士兵士。



 お、いたいた。

 兵士はなにやら木箱を大量に運んでいた。

 木の上からなるべく目立たないように追跡してみる。

 うん。気づかれないもんだねぇ。

 お、なんか地下へ続く階段に入っていった。

 階段の前には兵士が二人か。

 ふむふむ。ちょっと監視してみるか?

「なぁ、いったいこんなに大量になに運び込んでるんだ?」

「なんだ、しらねぇのか。あれは鬼殺しって言うポーションだよ」

「鬼殺し?」

「レベルアップポーションの別称だそうだ」

「へぇー。なんかワクワクする名前のポーションじゃねぇか」

「だろ?」

 レベルアップポーション?名前からしてレベルが上がるんだろうな。

「で?何でそのポーションがこんな馬鹿みたいに運び込まれてるんだ?」

「そりゃお前、隊長の命令だからだろ」

「いや、そうじゃなくてなんで隊長はこんな命令をしたかってことを聞きたいんだが」

「馬鹿野郎!そんなこと俺が知るわけないじゃねぇか!」

「だよなぁー」

 よくもまぁペラペラと。

 こいつら兵士失格だろ。

「で?実際のところは?」

 お?何?続くの?

「へっへっへっ。よくわかったな。実は俺も情報貰ってんのよ。何でも今回のこれは隊長発案じゃねぇらしいのよ」

「へぇ~。じゃぁ、誰の発案なんだ?」

「それが分からねぇのよ。ただかなり上の方だってことは分かってるんだが」

「上の方?まさか姫様とか?」

「ないない。姫様はお二人とも軍事とか興味ねぇだろ。詳しくはしらねぇが、ドメイン伯爵のご命令だそうだ」

「ドメイン伯爵って…あの権力馬鹿の?」

「しーっ!声がでかい!お偉方に聞かれたらどうする!?死にたいのか!」

 聞こえてますよー。

「ともかく、何か軍事活動をするためにここに集めてるらしいって事を聞いたのよ」

「うわぁー。やな事聞いたわ」

「まぁ、お互い忘れたほうが身の為こった」

「…そうする。お前も余計なことに首を突っ込むなよ。相棒」

「あいよ。…相棒」



 ばっちり聞こえてますよー。

 で、情報を整理するとこれはドメインとか言う伯爵が指示していることらしい。

 そして一般の兵士には報せてないのか。

 シャルロッテさんたちは軍事には無関心みたいなことも言ってたな。

 伯爵ってやつは隠れて軍事行動してるのか。だとすると目的は何だろう?

 よくあるパターンだと爵位の簒奪やクーデターの準備ってところか。いわいる陰謀ってやつだ。あとはシャルロッテさんたちが関与しないのをいいことに、軍事力を背景に勢力拡大かな?

 では陰謀を行わなければいけない理由は?

 …分からん。俺は漫画やアニメで見るのは好きだが、考察や展開を読むというのは苦手だった。楽しめりゃいいじゃん。と思ってしまうタイプだ。

 とりあえず、内容については考えないことにした。

 というか、よく考えれば俺はただの猫だ。知ったところでどうしようもない。どうしようもないのだが…


「おーい。交代の時間だ」

「お、助かるよ」

 見張りの兵士たちが交代していく。

 お調子者とうかつな兵士が引き上げ、なんか怖い顔の兵士が3人来た。

 なんかニヤニヤした嫌なやつらだ。

 アイコンタクトで3人のうち2人がその場に残り、1人が階段の中へ消えていった。

 いやぁ、怪しい。実に怪しい。

 持っているランタンは3つだが、1つは点灯していない。

 普通、警備の…、いや、警備じゃなくても不備のあるランタンを持ってこないだろう。

 あと、階段に降りて言った1人、バンダナを口に巻いていかにも悪者です、って感じだ。

「おい」

「あぁ、分かってる」

 残った2人はさらにアイコンタクトをとって1人は林の中へ、もう1人は扉の3歩程度前で待機している。

 ちょっと地下に降りた1人が気になったので扉の前にいる兵士の後ろを通って階段を下りる。

 すぐ後ろを通り抜けたのに意外と気づかれないもんだ。

 ちょっと警備ザルすぎじゃない?それとも猫の体が優秀なのだろうか?

 思えばどんな足場でもほとんど音が立たない。

 そして木や窓から飛び降りても平気な身体能力。

 夜目も効けば鼻も効く。耳も聞こえがいい。

 非力なことと両手が使えないことを除けば割といい体だ。

 って、そういえば女神さんがくれた能力って何だっけ?

 あの時は怒りと呆れでよく聞いてなかった。

 んー、何とか知るすべがあるといいんだけど。

 俺が見てた作品だと、ステータスをチェックするような魔法やコマンド、鏡なんかのアイテムがあった気がする。

 とりあえず、前の兵士についていきながら、何かないかチェックしていく。

 おや?よく見ると視界の右上に何かある。

 四角が二重になったようなマークだ。

 いや、まさかそんな…。

 俺の知る限りそのマークはパソコン上の操作でウインドウモードという機能を使用するときに切り替えるためのマークだ。

 ひとつのディスプレイの中に複数のアプリやソフトが表示されるようにする機能だ。

 しかし、どうやったら押せるんだろう?

 とか考えていると勝手に押されたようだ。

 視界の右側を三分の一ほど占有しゲームのステータスのUIのようなものが出た。

 えーとなになに?

 状態、スキル、アイテムのタブがあるが、状態、スキルは明るくなっており、アイテムは暗くなっている。

 今は状態に焦点が合っているようだ。

 状態のタブの中には筋力や敏捷などよくRPGで聞く単語が並んでいた。

 名前の表示もあり、アレクシスと表示されていた。

 いや、そこは多夢和にしてほしかった。

 さらに名前の下に、種族名としてポーションイーターと書かれていた。

 ん?なんだこれ?状態の下の方に点滅している項目がある。

 メールのマークが書いてあるからメールか?

 点滅マークをクリックするように意識してみる。

 すると別窓が小さく開いて内容を見せてくれた。


[from]女神

[件名]なし

[本文]ひとまずは無事の到着、お疲れ様です。

 とりあえず、なにか魔法を使えるまでの間、あなたの補佐をするために、この機能を使用してください。何かあれば世界間連絡の際にお知らせください。ではよろしくお願いします。


 っておい!そういう機能つけたならそのことを教えてくれないとわかんねぇじゃん!ゲームみたいにチュートリアルつけろとは言わんが、せめてこういうことは文章じゃなくて言葉で伝えてほしかった。

 おっと、そうだ。特典の能力を確認しておこう。

 俺はUIのスキルの欄を選んでみた。


[固有スキル]

 魅了の魔眼

 鑑定の魔眼

 心身転魔

[獲得スキル]

 影魔法

 気配寸断

 盗む

 魅了

 薬剤耐性


 うわ、こっちも使い方とかスキルの説明とかなにもないのか。

 たぶんこの固有スキルって言うのが俺のもらったスキルか?

 獲得スキルってのは何だろう?もしかして魔獣特有のスキルだろうか?

 影魔法ってあるし、何か魔法が使えたりするんだろうか?

 使い方分からんけどな。

 もしかして、この気配寸断ってののおかげでさっきも気づかれなかったのかな?




 考えながら歩いていたせいか、俺は小さな石が足元にあることに気づかなかった。

 カランと乾いた音が地下の通路に響く。その音に兵士が振り向いた。

 やばっ!?



「だれだ!!」

9/1 改稿

一段下げの機能を教えていただいたので、全文改稿いたしました。ありがとうございます。

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