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1-6.宮廷料理

 本日2回目の昼寝から復帰し、長いあくびをする。

 起きたらシャルロッテさんの勉強は終わっていた。

 ちょっと夕日が眩しくて目を細める。

 って夕日!?

 いったいどんだけ眠ってたんだ。

 ふと顔を上げるとシャルロッテさんと目が合った。

「おはようございます」

 つい挨拶してしまった。

 シャルロッテさん、もしかして俺が起きるまで待ってたのかな?

 どっかに置いておいてくれてもよかったのに。

「ふふふ。おはようございます。アレク」

 シャルロッテさんの細くて白い指が俺の頭をなでる。

 あー。撫で方が心地いい。動物の扱いに慣れているのだろうか?


「失礼します。姫様」


 頭の上に置かれた心地よさに再びうとうとしていると、いつからそこにいたのかじぃやさんから声をかけられた。

 だから怖いって。相変わらず忍者みたいな人だ。

「姫様、お食事のご用意が整いましたのでお呼びに参りました」

「ありがとう。じぃや」

「アレクシス様のものもご用意させておりますので、食堂の方へお越しください」

 じぃやさん。俺の分も用意してくれたのか。ありがとう。



 食堂についた俺達の前には長い机に、フランス料理で使うような空の食器のセットがおかれていた。

 まるで貴族の食卓みたいだ。あ、お姫様だったか。

「姉様~!」

 バタン!!

 盛大に食堂のドアが開かれた。いや、壊された。

 なに、ドア蹴飛ばしでもしたのか?ドアの蝶番のとこ外れてる!どんな勢いで開いたらそうなるのか。

 昼間みたいに怒られるぞ。

「マリア!!」

 ほら。

「マリアゲルテ様、ここはお食事の場ですのでご自重ください」

「おっ?」

 ひょいっと、後ろから現れたじぃやさんが持ち上げる。

 すげぇなじぃや。女性とはいえ鎧着た人間を片手で持ち上げてる。

「ごめんなさい。じぃや」

 持ち上げられたらすっかり大人しくなった。

「それにしても、その筋力まったく衰えないわね。何の冗談かしら」

「影ながらお二人をお守りするため、鍛錬は欠かさずしておりますから」

「頼もしいわ。まったく。そろそろ下ろしてくれない?」

「は。失礼致しました」

 下ろされたマリアゲルテさんは、トテトテといった感じでシャルロッテさんの向かいの席に座った。

「じぃや、今日のメニューは?」

「はい。本日は、菜園で採れたアルマ草とトゥーベの実のサラダ、シャトワの港で取れたガッツェと菜園のガル芋のスープ、同じくシャトワの港で取れたラバーニャをソテーにしたもの、城下で飼育されているウーマのステーキとなっております。アレクシス様にはウーマのステーキとガル芋のスープをご用意させていただきました」

「あ、私、ウーマの肉、好物なのよ。ありがとう、じぃや」

「感謝のお言葉、光栄にございます。マリアゲルテ様」

 感謝の言葉を述べたじぃやさんの言葉に続いて、メイドたちが料理やワインを運び込んでくる。

 おぉ、皿の上に銀色のドーム状のやつがついていて、なんか高級料理っぽい。

 どんな料理かと期待していると、俺がひょいっと持ち上げられ、シャルロッテさんの隣の席の机の上に乗せられた。そして各人の前に料理が置かれた。

 俺の前には湯気の上がったステーキ。

 ここへきて素朴な疑問が浮かんだ。

 猫舌とか言うけど、今の俺はどうなんだろう?

 あと俺、マナーとか知らないんだけど、今猫だしテーブルマナーとか気にしなくても大丈夫だよね?

「では、いただきましょうか」

 シャルロッテさんの言葉を合図に、マリアゲルテさんが待ってましたとばかりにフォークに手を伸ばした。

 この二人はコース形式で出てくるのか。

 俺も目の前に出されたステーキに口をつける。

 うん。こりゃ牛肉だ。ただ焼かれただけの牛肉。ソースも香辛料も振られていない。

 ウーマとは牛の一種だろう。ややこしい名前しやがって。

 だが、出されたステーキは猫の口でも食べられるよう細かく切ってある。料理人とじぃやさんに感謝だ。

 そうして出されたステーキを食べていると、ふと、俺はまだ空席のいわゆる誕生日席に置かれた空の皿が気になった。その視線に気づいたのか、シャルロッテさんが答えてくれた。

「あぁ、お父様の席ですね。すみません。お父様は日ごろから体調が悪くて、めったにお食事をご一緒できないんですよ」

 そうなのか。

 シャルロッテさんが姫ということは、その父親は国王ということだろう。

 ファンタジー世界の体調不良がどういったものかは知らないが、食事も一緒に出来ないほどとなると相当だろう。

「まぁ、私も最後にお父様とお会いしたのなんて、もう一年近く前だしねー」

 マリアゲルテさんが言う。

 相当体調が優れないようだ。

 まぁ、知らない人間のことを心配しても仕方ないことだが、なんとなく心の中で元気になることを祈っておいた。

 にゃーん。






 食事を終えて、俺はシャルロッテさんに連れられ、俺にあてがわれた部屋へと連れて行かれた。

 なにこれすっげ!

 40畳くらいの石の部屋に絨毯が隙間なく敷き詰められ、質素ながらも仕立てのいい家具が並べられている。

 猫と人間の体の比率的にもすごくでかく感じる。

 さらにそこにキングサイズのベッドがこれでもかと存在感を主張している。

 この部屋は先ほどのシャルロッテさんの隣に位置している。

 シャルロッテさんの部屋も大概広かったが、正直、猫の体にこの広さは贅沢すぎると思う。

 で、シャルロッテさんはというと昼間のドレスとは違い、清楚なイメージのする白のスリップを着用している。

 え?なんで?ここに泊まる?まじですか。

 あと、シャルロッテさんの後ろにマリアゲルテさんがいる。

 こちらはかわいらしいピンクのちょっと長めのキャミソールにショーツという組み合わせだ。

 え、マリアゲルテさんも泊まるんだ。なして?

 まぁ、女の子に囲まれて寝るのも悪くはない。

 だがしかし!今の俺は猫!何も楽しめない!いや正確には感触しか楽しめない!

 そして二人が俺を抱きこんだままベッドに入る。

 このまま寝る気か!?いや、感触は非常に楽しめているんだけど!

 苦しい!!絞まってる絞まってる!


 昼寝を2回もしたこともあってか、ベッドに入っていてもぜんぜん眠くなかった。

 俺は必死に二人の腕の中から抜け出した。

 実はちょっとこの部屋で気になるところがあったんだ。

 俺は天井を見る。天井には絵画?とりあえず壮大な壁画みたいなのがあった。

 猫の目ってすごいな。こんなに暗いのによく見える。

 おっと、全体を見るには首が痛くなりそうな角度だ。ちょっと窓際に移る。

 太陽のようなギザギザのついた丸が1つ、いやよく見ると重なって2つある。

 そして部屋の反対側の天井にもうひとつ大きな円がある。その周りに小さめの円が3つ。ひとつは土星のような輪がついている。

 そして大きな手の形が両側から伸びている。

 ルーン文字?みたいな文字が空いたスペースにびっしりと書き込まれている。なんだこれ?えーっと?

 時、満ちるとき、天より来たり…って普通に読めるな。

 そうか、言語は理解できるようにしてもらってたか。

 って言うことはこれはこの世界の言語で書かれてるのか。

 何か物語とかになってるのか?

 ちょっと眠くなるまで読んでみよう。




「よし、その荷物は第二倉庫に置いておけ!」

 お?窓の外から、なんか兵士らしき声が聞こえる。

 窓から外を見ると、兵士がなにやら運んでいるところだった。

 夜もがんばっている兵士さん、ご苦労様だな。

「これで、われらの悲願も果たされる…」

 おや?なにかきな臭くなってきた。

 なんかやばいことでも企んでますって感じのセリフだ。

 シャルロッテさんやマリアゲルテさんには一宿一飯の恩もある。

 もし何かあったとき、報せるくらいは俺にもできるだろう。

 まぁ、ここでのんびりしててもすることないしね。

 ちょっとだけ、夜のお散歩でもしましょうか。

豪華に見える夕食も実は…


9/1 改稿

一段下げの機能を教えていただいたので、全文改稿いたしました。ありがとうございます。

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