4-13.グレイとの交流
それにしても。
無事、公爵軍を撃退したのはいいが、女神が言っていた、種のことを考えると、そろそろこのグレイとやらと交流しとかないとな。
しっかし、どうするかなぁ。
なんせ、呼び出すにしても、話すにしてもどうしたもんかなぁ。
うーん。
あ、そうだ。
もう強引に連れ去ればいいのか。
こんな時は……、猫的には首元を噛んで持ち上げる。
が、彼は金属鎧だしな。
噛みずらいと思う。
いや、下手な力加減をすると、鎧を嚙み砕……、もとい、首ごと嚙み砕きかねない。
となれば……、転移魔法で無理やり連れていくかなぁ。
あー、うん。それはそれ問題になりそうだな。
面倒くさいのはごめんだな。
じぃやさんかヴィゴーレなら穏便に呼び出してくれるかな?
しかし、意図が正確に伝わるとは思えないしなぁ。
バロンに頼むのも手かな。
あ、でも確かほかの人には安易にテレパシー使わないようにしてるんだっけか?
確か、それでじぃやさんやエフィーリアさんに話すときはジェスチャーなんだよな。
よし。拉致ろう。
面倒くさいことをグダグダと考えても仕方ないな。
というか、よくよく考えたら俺がこんなことを考える必要もないはずなんだよなぁ。
なんとかしろよ。女神。まじで。
はい。聞こえてませんかそうですか。
わかってましたよ。
世界通信以外では連絡できませんもんねぇ。
つか。むしろ昨日がおかしかったんだろうなぁ。うん。
よし、そうと決まれば(決めたのは俺だが)さっさとやってしまおう。
やることはいたってシンプルだ。
まず『気配寸断』を発動し、気配を消す。
そういえばこの『気配寸断』って相手に見られている状態でも発動するのだろうか?
字面的には、あくまで気配を消すってだけだしな。
ま、グレイはこっち見てないし、大丈夫か。
そっと忍び足でグレイに近寄っていく。
やはり首を狙うのが良いだろうか。
声もあげさせず、パッと連れていけば問題ないだろう。
「おいおい、大丈夫かよ?ずいぶん疲れてるな」
「ごめん、ちょっとショックがでかくて…すまないけど先に休ませてもらうよ」
「わかった。医務室にでも行ってこい。隊長には俺から医務室にいったって伝えとくよ」
「ありがとう。じゃあ、ちょっと行ってくる」
お、良い具合に隣にいたやつが離れていったな。
じゃあ、こっそり後を付けて少し離れたところで実行するか。
良い感じにグレイだけが離れたのを見計らい、俺はヴォルケーノに変化。ヴォルケーノの方がヴォルガモアより目線が高い。ちゃんと見てないから実際はどうか知らないけど、体感的にはヴォルケーノは虎のような生物、対してヴォルガモアは頭の位置の低い、俺の知っている動物でいうと、ビントロングのような生物だ。
頭の位置が高い方が、今回の作戦には便利なのだ。
グレイの上からかぶりついた。
運ぶ手段がこれしかないんだ。許せ。
「えっ…」
なにかを言う前にさっと飛行で飛び立ち、俺の部屋のある一角に降り立つと、悠々と部屋に入る。
ぺっ。
「うわわっと…」
グレイはたたらを踏んで四つん這いになる。
「い、いったい何が…」
頭をさすりながらこちら側を振り向く、すると当然ながら俺の足に目が留まる。
ゆっくりと顔を上げると、真っ青な顔で器用に後ろに下がって行った。
衝撃で、ヴィゴーレが置いてくれてたであろう紙袋が棚から落ちる。
「し、ししししし神獣様!?いったい何を……え?」
落ちた衝撃で紙袋の中から本がこぼれ、グレイがそちらに目を奪われたようだ。
「え、え?……え?日本語の、本?」
あー、うん。そっちに反応したのね。なるほど。
よし、畳み掛けるか。
「おい。グレイとやら」
「は?」
俺の方を振り向いてグレイが止まる。
「二回目のはだかぁぁぁ!?」
失礼な奴だな。まぁ。裸だけど。
っていうか驚くところそこかよ。意外と大物だなこいつ。
グレイの肩に手を置いて、落ち着かせよう。
「おい。いいから落ち着け。時間がないんだから」
「あ、はい。ってちがくて!!いったい何をするつもりで……」
「お前、転移者……じゃなかった。転生者だろ」
「!?なんでそのことを!?」
「あー、まぁ。俺も同じ立場というか、被害者というか。なんにせよ、女神に転移させられたんだけどな。使命とやらとセットで」
「使命……もしかして、『種』のことですか?」
お、もしかしてこっちも一緒か。こりゃ話が早くて助かるな。
「そうだ。ちなみに昨日連れて行った公爵軍を追い払った火山みたいなところあったろ?あれ、その『種』関連の奴をぶっ飛ばしたところだ」
「えぇ!?じゃぁもしかして、僕たちは帰れるのでしょうか?」
「んー。それは何とも。そもそも女神も来たけど、全部終わったなんて一言も言ってなかったしな。俺もほかの使命もあるし」
「あぁ、そちらもそんな感じなんですね……」
「まぁ、そうなんだけど、ちょっと本題に移らせてもらうよ」
「あ、はい」
「とりあえず、今後は協力体制を築きたいと思っているんだ」
「協力体制?」
「あぁ、すまないんだが、俺の姿は見た通り猫でな。この姿にはまだ数分しかなれないんだ」
「猫……?猫?」
「いや猫だよ!かわいい猫だよ!」
「いやいやいや!かわいい猫はあんなとんでも魔法なんて使わないないです」
ぐぅの根も出ねぇ。
ってしまった。無駄話をしていたせいでそろそろ時間になってしまう。
「あーすまん。そろそろ時間っぽい。とにかく、必要なことがあったらバロンとかから何とかして伝えてもらうから!協力よろしく!」
「え?あ、ちょっ……」
残念、時間切れだ。
俺の身体はポーションイーターに戻ってしまった。
「えっ…本当に猫に戻っちゃった」
すまないけど、この状態で意思を伝える術はないんだよなぁ。
まぁ、今回はちょっとでも交流出来たことで良しとしよう。
だから頭を撫でるのはやめてくれないか。
恥ずかしいから。
グレイと交流した次の日。
城にある訓練場でマリアゲルテさんの訓練を見ていると俺の元に来客があった。
先日、医務室で見かけたあの小鳥達だ。
小鳥達は何をするでもなく、俺の回りで遊んだあと、やたらと俺に絡んできた。
んー?なにか伝えたいのかな?
すると小鳥のうち一匹は俺の頭にのり、更に一匹は俺の前から飛び立ち、訓練場の壁付近に止まった。
頭の上の小鳥が囀ずる。
俺を誘導したいのかな?
ふふふ。面白そうだ。
小鳥達の誘導に素直にしたがい、俺は空へと飛び立った。
小鳥達が向かったところは昨日、俺が魔法を使って地面ごと落としたあの場所だこんもりと土が丘のようになってしまって、その上に目立つ木が一本ある。
小鳥達はそれに向かって飛んでいき、枝の一本にとまった。
そこに何かあるのかな?
俺も枝に居る小鳥達のそばに降り立った。
すると木が光始め、視界を覆う。
なんの光ぃ!?
光が柔らぎ目を開けると、そこには……。
緑の髪が印象的な美人のお姉さんに抱かれていた。
……どちら様ですか?
近いうちに書き貯めた設定を先出しする回があるかもしれません。
現在、年表やら設定やらまとめ中です。