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4-6.円卓のポルターガイスト

 図書室で魔物・魔獣大全を眺めた後、俺は顔を上げた。

 何となく予想はしてたけど、あのだいたらぼっちの情報はなかったか。


 暗っ!?って暗っ!!?


 どのくらい長いこと本を読んでいたのだろうか。

 ただでさえ薄暗かった室内は俺のいる机の上を除いて真っ暗だ。

 ドラディオの姿は俺の側にはなかった。

 燭台の蝋燭には火が灯されているのでおそらくドラディオがつけてくれたのだろう。

 もう夕方……もしかしたら夜かもしれないな。


 うーん。どうしたもんか。

 ボケっと燭台の蝋燭を眺めていると、ふと気づいた。

 蝋燭の火が揺れている。

 俺から見て左から右に蝋燭の火が揺れていた。

 この図書室には俺の入ってきた扉以外に入口はない。

 しかし、火は扉側に向かって揺れていた。


 これは……、まさか!あの!

 マンガやアニメでよくある、あのシチュエーションでは!


 俺は揺れている火の反対側を見た。

 そこには本棚があった。

 ぎっちりと本が詰まっているが……。

 パターンとしてはどっかにギミックが……。




 …………

 ………

 ……




 全然わからん!



 多分、本かスイッチ的なオブジェクトがあると思うんだが……。

 あ、待てよ?壁とか床の可能性もあるのか。

 うーん?


 お?もしかして、これか?

 本棚の下段に切れ込みみたいなのがあった。

 よく見ると、ところどころ傷とか、組細工のような模様がある。

 これを……、これは押せばいいのか?

 いや、押さえ込むのか?

 ちょっとやってみよう。


 ペタペタと触ってみるが、動きそうにない。

 そう簡単にはいかないか。


 ん?この組細工の模様……。

 よくよく目を凝らしてみると、これ天面にも同じ模様がある。

 で、天面側には透明度の高い石……。

 これが魔石ってやつか。

 魔物の体内から出てくる石とはずいぶん違うが。

 ともかく、魔力を流してみると何か変わるかもな。


 とりあえず、魔力を流してみた。




 ゴゴゴゴゴゴゴ………。


 ビンゴだ。



 本棚の先は長い階段になっていた。

 いや、どこまで続いてるんだよ。この階段。

 しかもめちゃくちゃ暗いし。

 いや~、これ進むのはちょっと勇気いるよ?

 どうしよう。

 埃まみれだし。

 正直進みたくない。


 ん?アレは……ネズミか?

 ネズミは俺を見るなり、階段の下の方に逃げていった。


 ふっ。

 ネズミにとって猫は天敵だろう。

 動くネズミを見て猫は普通追いかけるだろうな。それが本能ってやつだ。

 だが俺は理性のある元人間。

 そんな猫のように本能だけで追いかけたりしないさ。


 ……まぁ、体は勝手に追いかけてるわけだが。

 本能って怖い。





 ネズミを追いかけていった先にあったものは石造りの部屋だった。

 中央部には、円卓というのだろうか。ドーナッツ型のテーブルがあり、その中心部には大きな水晶……、いやこれは魔石か。

 椅子も6つほどあるな。一つだけ、ちょっと豪華だ。ちょっとだけだけど。

 何というか、なんだろうこの中二病感。

 椅子はそれぞれ、ちょっと豪華な白い椅子、赤い椅子、青い椅子、緑色の椅子、黄色い椅子、黒い椅子だ。

 足元には魔法陣があるし。

 何かの儀式の間なのだろうか。


 それにしても、ここは城のどの部分に当たるのだろう。

『空間把握』を発動してみる。

 これは……、地下?

 え?地下?

 ちょっとまて。図書室は二階にあったはずだ。

 なんで地下に。

 いや、それ以前にこの部屋は何かおかしい。

 地下にあってなぜ二階の図書室にまで空気の流れがあるんだ?

 それに『空間把握』のスキルにはここからさらに地下があると示唆している。

 地下のさらに地下か。

 いや、そもそもなんで2階から地下に伸びる階段なんてあるんだ?

 普通は1階から地下に行けるようにするよな?

 隠しルート的な何かだろうか。


 にしても、立地もそうだが、この真ん中の魔石。

 なんだってこんなでかい魔石がこんなところに鎮座してるのか。

 魔石……、魔石か。

 魔力でも流してみるか?


 さっきも魔石に魔力を流したけど、この魔力を流すという作業自体はさほど難しくはない。

 魔力に関してはまだよくわからないけど……、いや魔素(マナ)産と魔元素(エーテル)産の魔力の違いは聞いたけど、なんだろうこの表計算ソフトでオート関数の使い方だけ習って、関数の中身が分からないみたいなこの感じ。

 ともかく、魔力の使用、流入、拡散、収束に関しては自然に行える。

 ちょっと意識すればできてしまうのだ。

 この魔物の身体がそうなっているのか、それともこの世界の生物がすべてそうなのかはわからないが。

 まぁ、訓練なしでできるなら楽なものだ。


 魔力を少し流してみるが、魔石は一切反応しない。

 少し量を増やすが、やっぱり反応はない。

 なんだろうな。この魔石。

 見た目的には重要施設っぽいんだが。

 わからないものを何時間も考えても仕方ないのでさっさと戻ることにしよう。

 ちょっと遅くなったけど、夕飯も近いはずだ。










 -???視点-



 私は……、いったいどうなったというのだ。

『彼』の手助けをして、邪悪なる存在を討滅したまでは覚えている。


『彼』はかつての友のように、懸命に人々のことを考えていた。

 だからこそ、私は『彼』の力になったのだ。


 ここに来た頃、私は魔力が足らず、機能停止に陥った。

 私の体を構成するものの内、魔力を生成する機能が破損したためだ。

 これは致命的だった。

 身体も、上半身以外は使い物にならなくなっていた。

 四肢はもげ、残った上半身も機能が怪しかった。

 そんな私に、『彼』は魔力を分け与えてくれた。

 そして、あの戦いが起こった。

『彼』は彼の仲間と共に戦い、やがて私と『彼』は魔力を使い果たした。


 そこから記憶がない。

 休眠状態に入ったのだろう。

 休眠状態に入ってからいったい何年たったのだろうか。

 今、私はどこにいるのだ。

 誰が私に魔力を供給したのだ。

 長い間眠っていたせいか、覚醒したのに未だに視力が回復しない。

 薄らぼんやりとしか見えない。


 そこにいるのは誰だ?

 ぼんやりとした視界に、小さなものが映る。

 フィルボル……、いやさらに小さい。

 あれは、()か?

 問いかけたいが、声を出す機能が停止しているのか、動かすことができない。


 まて、まだ行くな!

 せめて状況を説明して……。


 ……行ってしまった。

 彼は一体何者なのだろうか?

 私にこれほどの魔力を注ぎ込んでも、尚動ける程の力の持ち主とは一体……。

『彼』……アレクシスでさえ、私に魔力を注いだあとは疲労困憊になっていた。

 そういえば、疲労困憊になって倒れた際は女性がベッドに押し掛けてきて大変だとか言っていたな。懐かしい。

 そのせいで、アレクシスを狙う女性に「魔力供給をしてもらえ」と怒られたこのもあったな。

 ……女性というのは怖いものだ。いや、それはもっと前から知っていたな。

 あの娘は私を素手で吹き飛ばしていた。

 ……あれ?思い出したら寒気が。そんなもの感じるはずがないのに。


 この場に、他に生物の反応はない。ということは、やはりあの生物が魔力を充填してくれたのだろう。

 まだ、全ての機能を回復するには時間がかかる。

 が、感謝を伝える事くらいは出来るだろう。

 何かないか?

 む?この部屋に向かう通路の上は図書室か。

 ……本当に長い時間が経過してしまったようだ。

 私は身体に少しの魔力を通し、動かした。







 図書室に上がった俺の目の前で本棚の本から一冊だけ飛び出してきた。

 あぶな!?

 鼻先ちょっとかすったぞ!!

 チートな身体能力がなければ危なかった。

 一体なんだ……。


 本が次々飛び出してきた。

 いや、なにこれ!?

 ポルターガイストかなにかか?

 飛び交う本はやがて飛ばなくなった。

 床の上に散らばった本はきれいに整列し、なんと文字のようなものを示していた。



()()()



 馬鹿にしてんのか!?このポルターガイスト!?


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