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1-5.社会の勉強

「はぁ…正直、憂鬱です」

 俺を抱え城の廊下を歩きながらシャルロッテと呼ばれた姫さんがつぶやいた。

 そんな嫌か、勉強。

 まぁ、俺もジャンルや教師による感じだったし人のことは言えないけども。

 とりあえず、励ましておこう。

「姫さんや、そう言わずに。勉強も大事よ」

 きっとニャーとしか聞こえないけども、雰囲気でわかってくれるかもしれない。

「そうですね。気が進まないとはいえ、こういうことは大事ですね」

 お?伝わった?

「でも、今日はアレクもいますし、憂鬱な時間も楽しくなりそうです」

 俺の顔に姫さんが頬を寄せてウリウリする。

 俺の意図が伝わったのか、それとも独り言なのか。まぁ、普通に独り言なんだろうけど。

「姫様!」

 うぉ!?びっくりした。

 シャルロッテが振り向いた先には、一人の男がいた。

 くたびれた白衣の下には青いローブのような服をしっかりと閉めて着ている。

 なんだっけ?ガンドゥーラだったか。たしかサハラ砂漠の民族衣装だったと思う。まぁ、それに似た衣装を身に着けている。

「アドマ…。どうされましたか?」

 アドマさんというのか。

 この国の服は青が多いのかな?特産品か何か?

「いえ、お部屋に、いらっしゃらなかったので、お迎えに、あがった、次第です!」

 なんだろう。語尾が上がる独特の口調をしている。

 ちょっと長時間聞いてると耳が痛くなりそうだ。

「すみません、前の用事が長引いてしまって。今から向かいます。あと、今日はこのアレクさんと一緒ですのでよろしくお願いします」

「おぉ!何たること!魔物の、仔のようです!承知いたしました!では、鐘ひとつの後、はじめると致しますので、お部屋で、ご準備ください」

「わかりました。お願いします」

「では、失礼致します!」

 アドマさんが踵を返し、白衣をはためかせながら去っていく。

 なんか、アドマさんの高笑いが廊下の向こうから聞こえてくる。

 あんなテンションで生活してて疲れないんだろうか?

「はぁ…」

 アドマさんが完全に見えなくなり、シャルロッテが大きくため息をついた。

「悪い方ではないんですけどね…。どうも一緒にいると疲れてしまいます…」

 でしょうね。

「すみません、びっくりさせちゃいましたね。彼は私の勉学教育担当でアドマさんという方なんですが…、あのとおり喋り方が独特で、彼といるとちょっと疲れてしまうんですよ」

 なるほど、シャルロッテさんは勉強が嫌というより、彼と喋るのと疲れるのが嫌だったのか。まぁ、いろいろ事情はあるよね。







 シャルロッテさんの部屋に着いた。

 殺風景な部屋だというのが正直な感想だ。

 ベッドとテーブル、イス、クローゼットなど生活の最低限の家具しかない。

 ただ、広い。スペースの無駄遣い。まぁ、王族の部屋なんてこんなものか。

 ちょっと女の子の部屋って言うのを期待してたけど、そんなことなかった。

 まぁ、パッと見、中世っぽいしこんなものか。

 なんて思っていると、シャルロッテさんが何かつぶやいた後、

「スタディステーション、オープン」

 とつぶやいた。

 すると、何もなかった壁際に勉強机のような本が収納可能な机が現れた。

 そんなところも魔法ですか。

「ふふ…、驚きました?私、収納魔法が使えるんですよ?」

 なるほど、門や橋の時のような施設にかかっている魔法ではなく、自前の魔法らしい。

 なるほどなるほど。違いがわからん。

 そうこうしていると、シャルロッテさんが出てきた机のほうへ行きイスに座る。そして、俺をひざの上に置くと前面にある書棚から何冊かの本を取り出した。

「前回は…、世界の成り立ちと神々のことについてでしたね…」

 どうやら復習を始めたようだ。

 しばらく黙っておこう。

 彼女がぶつぶつ言っている内容から察するに、いわゆる世界史。または魔法史といった内容のようだ。シャルロッテさんには悪いが、こっちはこっちで勝手に情報収集させてもらおう。






 彼女の独り言をまとめるとこうだ。

 この大陸、エリンディオはかつて創造神が作り出し、光の神・闇の神・火の神・水の神・風の神・大地の神を作り世界を作った。そして、精霊達を作り世界の神をサポートした。この創造神が最高位に位置し、その下に6大神、そして6大神がつくりだした精霊がその下におり、別口で創造神が作ったいわゆる鍛冶の神や農業の神といった存在がいるらしい。これを下級神というらしい。格としては精霊より上、6大神より下らしい。

 創造神はマナと呼ばれる魔力の元のようなものを精霊達に与え、魔法を使えるようにした。そして神々は精霊のほかに自らの手足となって動くものたちを作った。

 それがそれぞれ、人間族・魔族・ドワーフ族・エルフ族・ウィンディア族・フォルボル族。魔族以外の5種族を一般的に人族というらしい。

 ところが、闇の神に作られた魔族はマナに対する感受性に優れていた。

 そしてその力で多種族を駆逐して世界を独り占めしようと考えた。そして各地に魔法の力をより効率的に使えるよう、自然を壊しさまざまな施設を作り出した。

 これに怒ったほかの種族は魔族が席巻していた世界を変えるべく反乱を起こし、これに成功した。さまざまな種族が反乱を起こしたため、種族ごとに町や村を作り、国として発展させていった。当然、魔族も黙ってはおらず、各地で戦争状態となった。この時点で、神々は何も干渉してこなかったらしい。

 そのうちのひとつ、ドリス村から始まったドリス皇国という国がこの国らしい。

 英雄王ドリステリアが魔族の支配から開放し起こした村。そして、最終的にはすべての種族と協力し魔王を討伐したことにより、国として成立して行ったらしい。

 それが約2500年前。当時は大きな権勢を誇っていたこの国も時の流れには逆らえず、幾度かの戦争や国家分裂を経て、現在に至ると。


 こういっては何だがよくある話だ。

 ただ、英雄王ドリステリアが魔王を討伐した際、魔族も協力していことから、現在ではそこまで下に見られた扱いや敵対はされていないそうだ。

 ただ、いくつかの国にまとまっており、人間の国でその姿を見ることはほか種族ほどではないらしい。

 いまでは主に人間族、ドワーフ族、エルフ族が町に住み魔族、ウィンディア族、フォルボル族は個体数が少ないようだ。


 そんな感じで、自分の中でまとめているとシャルロッテさんの部屋にアドマさんが来た。勉強を始めるらしい。

「本日は、6種族以外の、生物などについて、お話いたします」

「はい。たしか、動物や植物などは下級神様たちが作り出した存在なんですよね?」

「さようです。そして、それらの他に、魔物、魔獣と呼ばれる、種族がいます」

 動物や植物が魔力を持った存在が魔物。

 それらが魔力暴走を起こし、制御や理性のなくなった存在が魔獣らしい。

 さぁ、こんがらがってきた。

 まぁ、この辺はおいおい理解していくとしよう。

 じぃやさんやアドマさんが、俺のことを魔物の仔といったことから、何かしら一目でわかるようなことがあるのかもしれない。


「さて、魔物や新しい動物の発生には、いくつかパターンが、あります」

 いわゆる新種族の発生はいくつかあるらしい。

 まず、魔物は魔力溜まりと呼ばれるマナの収束地から自然発生する。

 そして生殖活動を行う。この生殖活動というのが人間やほかの生物には少し厄介らしい。

 生殖活動にはいくつか種類がある。

 分裂生殖。単細胞生物のように分裂して増えるもの。

 寄生生殖。別の生物に有精卵を生みつけ増えるもの。

 交配生殖。別の生物と交配し受精卵を作り増えるもの。

 このように分類されるため、分裂生殖・寄生生殖の魔物は確認される数が多く、交配生殖の魔物は少ないらしい。

 そういえば、「獣人の始祖となれ」みたいな指令を神様から受けていた気がする。これはこの辺が関係してるのか?

 そして生殖が進むと稀に魔力を持たないものや、逆に魔力が多い固体が出現するらしい。

 魔力を持たないものが動物や植物として登録され、逆に魔力量の多い固体は魔獣へと変化するらしい。

 このあたりは成長とともにわかるらしい。ということは少なくとも俺が一目で魔物といわれた事に関しては魔力量や見た目で見分けたわけではないようだ。

 まぁ、ただの猫だしな。


「人間の、特に女性にとって、脅威となるのは、この寄生・交配による、生殖方法です」


 だろうな。成人向けのゲームでよくあるシチュエーションだ。

 だが、交配はともかく、寄生は人間全員の脅威じゃないか?


「男は、この寄生による、苦痛に耐えられません。寄生された時点で、ほぼ9割は死亡が、確定します。まぁ、それ以前に、精神的に、耐えられないでしょうが!」


 そういうことらしい。





 うーん、段々眠たくなってきた。俺も元々そこまで勉強とか得意じゃないしな。

 シャルロッテさんはまだ勉強している。

 うん。寝よう。

 一所懸命勉強しているシャルロッテさんには悪いが、俺は寝かせてもらうことにしよう。

 俺はシャルロッテさんの膝の上で丸まる。すると、一気に眠気がやってきた。つかれてたのかな。

 自然と尻尾が揺れる。シャルロッテさんの膝の上、暖かいわぁ…

 勉強を教えているおっさんの声をBGMに、俺はまどろみに意識を取り込まれていった。

9/1 改稿

一段下げの機能を教えていただいたので、全文改稿いたしました。ありがとうございます。

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