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4-5.パンケーキもどきと図書館

 リリアーノさんが、蜂蜜を使って、パンケーキみたいなものを作ってくれた。

「みたいなもの」だ。

 見た目は二段重ねのホットケーキ。間に瑞々しい黄色や白の果物が挟まっている。

 上から少量蜂蜜を垂らして、実にうまそうだ。

 出来立てだからかシズル感がすごい。

 見ているだけで食欲が刺激される。


 これはさすがにシャルロッテさん達のかな?

 そうしているとリリアーノさんがこっちにも皿を出してくれた。

 じぃやさん、リリアーノさん、オウガの族長、そして俺の前に皿が並べられる。

 一つのパンケーキを四つに切った形だ。

 おぉう。うまそう。


「では……、アレク様……は無理ですので、僭越ですが私が代行させていただきます」

 じぃやさんが、左肩の前に右手を添えて、つぶやく。

「大地と天空と、大海の恵みに感謝を」

「「感謝を」」

 この世界の『いただきます』的なセリフを口にする。

 ここ数日のこの世界での生活で、これは食卓を囲む人間の中で一番位の高い者が行う仕事のようだ、ということはわかっている。

 現にシャルロッテさんがいるときはシャルロッテさんが。

 先日の食事ではシナーデさんが行っていた。

 多分、二人ともいないとマリアゲルテさんが行うのではないだろうか。

 順番的には皇王→皇妃→シャルロッテさん→マリアゲルテさんかな?

 次点でじぃやさん、ドラディオ、メイドいればだが、公爵嫡子たち当たりかな?

 皇王は婿養子らしいし、多少順番は前後するだろうけど。

 で、さっきのセリフから多分じぃやさんは俺を、より上位とみているのかもしれない。

 只の猫なのにな。


 食卓にいる皆が食べ始めたので俺も食べてみる。

 出来ればナイフとフォークが欲しい。

 まぁ。使えないけど。

 四等分された角の方から一口。







 ……うまい!!



 現代のホットケーキのようにふっくらしっとりという感じではない。

 生地自体はそこまで甘いというわけではないが、この間こっそりと齧ったパンよりは流石に甘い。ほんのりと卵とミルクの味がする。

 表面から少しくらいのとことまではさっくりとしており、中層は少ししっとり感が残るくらい。

 ホットケーキの重なった面はフルーツの果汁で外側とはまた食感が違う。

 フルーツは食感としてはシャクシャクとした触感のリンゴのようなフルーツと、しっとりとした未知の味のフルーツ。

 それぞれの食感が混ざり合って喧嘩しそうなものだが、そんなことはなかった。

 上からかかった蜂蜜がさらに味と食感をプラスして、さらにおいしい物にしている。

 これはこれでいいものだ。



「これは素晴らしい。また腕を上げましたね。リリアーノ」

「ありがとうございます」

「いやはや、まったく。さすがでございます。調理というのは食材をこれほどの物へするのですね。我々はほとんど煮込むか焼くかばかりだったので」

「オウガ族の文化では仕方ありません。生活様式が違いますから」

「しかし、我々ももはや皇国の臣。精進せねばなりません。幸いにも生き残った六人の中には、料理に興味がある者もおります。存分に使っていただければと思います」

 オウガ族の長はそう答えた。

 どうも話を聞いていると、オウガ族とは魔族の一つで、主に特化型の人材で構成される種族らしい。

 統率特化・戦闘特化・生活特化に分類され、それぞれがさらに細分化される。

 オウガの族長は統率特化の物の中から選ばれるらしい。

 今回、皇国の臣下となったオウガ族は統率特化が1人、戦闘特化が2人、生活特化が3人らしい。

 俺は歴史シミュレーションゲームでも、太守や将軍任命は『おすすめ』や『自動』をよく使うタイプだったから、その辺の細かいことはよくわからんけど。あとはお気に入りキャラを重用するとか。

 そういえば、海外の歴史ストラテジーゲームを作るメーカーが作るゲームでも、お気に入りの家紋が出るまで家臣登用して重役にしてたっけ。

 最終的に仕事で時間が無くなって、ゲーム本編より自分の好きなシチュエーションを作ることの方が面白かったんだよね。


 パンケーキもどきを食べ終えると、リリアーノさんはサクサクと片づけを始めた。

 うまかった。ごちそうさまです。

 この世界でまともな料理をはじめて食べた気がするよ。

 なんせ今まで焼いただけの肉か魚かこっそり食べた硬いパンくらいしか食べてなかったからな。


 さて、これからどうしよう。

 いろいろ考えたけど、とりあえず図書室に行くことにした。

 この世界の本で知識の補完をしようと思ったのだ。

 以前の探検で書籍を扱う部屋があるのは確認済みだ。

 問題は扉が開けれるかだが……。

 まぁ、とりあえず行ってみるか。最悪ヴォルガモアかヴォルケーノの姿で開ければいいし。



 図書館にたどり着いた。ここは他の生活空間と同じく、2階にある部屋で、ちょっと奥まったところにある。

 日が当たらないため、昼でもちょっと薄暗い。

 まぁ、本だしな。日光が当たらないところにおいても問題ないだろうし。

「こちらにご用事ですかな?」

 扉を見上げているといきなり声をかけられた。

 振り向くとそこにはドラディオがいた。

 ビックリした。いつの間に……。

 見上げていると、ドラディオは扉を開けてくれた。

 君は俺の心でも読んでいるのかな?

 まぁ、開けてくれたなら助かる。俺は開けてくれた扉から中へ入る。まずはどの本から攻めようか……。

 上段の方の大半の本は革製の表紙の物ばかりだ。

 ふと、下段に目をやると所謂木簡と呼ばれる木の板を糸でつないだものや、巻物のようなものが並んでいた。

 どうも、表紙に書かれた文字を見る限り、バラバラに収納されてるみたいだ。

 ちゃんと整理しとけよ……。


 メロディアーナ宮廷恋愛譚。

 危険地帯アトゥラントゥスの大地。

 野営訓練の基本。

 東方遠聞禄。

 異界から来た男。

 タブラ・スマラグディナ篇詩。

 災害級の魔物の被害報告。

 海賊ウィルカッソの秘宝。

 モノクル愛好家によるモノクル講座-リアーザ伯爵編-。

 転倒したら魔物だった件について。


 etc、etc……




 お?その背表紙を眺めていると気になる本があった。

 背表紙には『魔物・魔獣大全-地の章・前編-』と書いてあった。

 要はこの間じぃやさんが持ってきた魔物図鑑みたいなもんだろう。

 あれが読みたい。読みたいのだが……

 どうやってとればいいんだろう。


 そう考えていると、ドラディオが俺の目線の先にあった本を一冊づつ手を背表紙にかけて、こちらを見てくる。

『魔物・魔獣大全-地の章・前編-』に手をかけた時に、ニャーと声を上げるとその本を取って備え付けられている机の上においてくれた。

 机に飛び乗ってその本を開く。

 表紙はちょっと爪をひっかけて開くことで開くことができた。

 紙の部分は……爪を立てないように肉球のところで、こう、きゅっ、とつまむ。

 意外に行けるものだ。




 本の中には様々な魔物についての情報があった。

 この本は人々の生活に密着した魔物が記入されているらしく、ウーマやペガサス、小型スライム各種などの情報が記入されていた。


 すこし、思いついたことがあったので、以前も使用したことのある『アイランドホース』のページで『鑑定の魔眼』を使用して見比べて見た。




 種族名『アイランドホース』

 系統『アイランドホース系基礎種』

 ランク『Eランク・猟種』

 種族スキル『踏破』『突撃』『蹴攻撃』

 説明『馬の魔物の基礎種の一つ。広くアレイシアに分布している、ローティホースと比べ、島や山岳地帯などに多く見られ、長毛で筋肉質なのが特徴。前後の足首に袖と呼ばれる蹄を隠すようにして生えた毛がボリュームがあるが、これはメスへのアピールの為だとされる。エルムランド地方やアトゥラントゥス島の山岳地帯に多く生息している。主に穀物の葉を食べる草食だが、場合によってはネズミや小型の魔物も食べることもある。通常、野生では5~10頭の集団を形成し、1頭のオスに対し1~3頭のメスと番になる。戦闘ではリーダーであるオスのみが戦闘し、殿をこなす。リーダーが倒れた場合、次席のオスがリーダーになる。次席がいない場合は妊娠していないメスが牽引し撤退を行う。このため、群れ全体での生存率は高い。幼体は乳離れし、1~3年したあとたあと、兄弟どうし・姉妹どうしで集団を形成し、別の集団と合流し、新しい群れを形成する。稀に30頭を超える群れを形成することがある。非常に温厚で捕まえるのが容易な反面、殿を残して撤退する等賢い性格の為、一度に複数頭捕まえることは非常に困難である』



 やっぱり。

 改めて図鑑と見比べてみると、説明文が図鑑と『鑑定の魔眼』でほぼ一致していた。

 この『鑑定の魔眼』は図鑑の内容を表示してくれるのか。

 いや、『鑑定の魔眼』の説明文には人智定理を表示するとあった。

 もしかして人智定理というのは広く人間に知られ、図鑑とかが作られている内容のことを指すのかもしれない。



 少しだけ、このスキルのことがわかった気がするぞ。

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