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4-1.魔素と魔元素

「うぅん…」

「あら?シャル?起きたのかしら?」



 膝の上の俺をなでながら、シナーデさんがシャルロッテさんに声をかける。

 どうやらシャルロッテさんが起きたようだ。

 あぁ、そうそう。

 そこの首のところ。もうちょっと強めに。

 あー。極楽。

 思わず、仰向けになって頼んでしまう。

 にゃー。



「……お母さま?」

 シナーデさんが俺をシャルロッテさんの布団の上に置き、シャルロッテさんの額に手を当てて観察する。

「うん。もう大丈夫そうね」

「私はいったい……」

 はい。貴女は俺を見て鼻血を出して倒れたんです。

 そりゃもう盛大に噴き出してましたよ。

 よくいう、キュン死ってやつです。はい。





「失礼いたします!」

 兵士がすごい形相で入ってきた。



 えー、なに?

 またトラブル?

 もういい加減休みたいんだが。

 ここ数日、働き詰め……でもないか。

 現代にいたころは締め切りが酷い時は、3か月くらい家にいる時間が5時間くらいとか普通だったし。世の中には仕事場に寝泊まりしている人とかもいるらしいし、それに比べればまだましな方だったと思う。

 今は忙しさが詰め込まれている日とのんびりできる日がきっちり分かれてるから結構ましな方だ。

 あー、でも今日みたいな日は勘弁。

 アンキロサウルスもどきと戦って、腕見つけて、リヴィアーデさんと戦って、だいたらぼっちと戦って……。

 言葉に出したら一日の仕事量とは思えんな。



 おっと、シャルロッテさんとシナーデさんがどこかに行くみたいだ。

 俺は、とりあえず寝ておこうかな。

 何かあったときのためにシャルロッテさんに忍ばせた影はそのままにしておく。

 ついでにシナーデさんにも……、2つ入れておこう。

 確か、皇王と同じ部屋で暮らしてるって話だったから、念のため皇王にも潜ませよう。

 そういえば、影っていくつくらい潜ませられるのだろうか?

 今度試してみよう。

 マリアゲルテさんにリヴィアーデさん、ガラハドやヴィゴーレ、あと魔女さんやバロン、あの現代人と思われる奴にも潜ませておきたい。

 影からの盗聴……もとい、情報収集も自由自在になるようにしておかないとな。

 ちょいちょい夜中につながって目の毒ならぬ耳の毒だ。主にシャルロッテさんが。



 さてと、今後やることも決まったし、寝よ寝よ。





 りりりりりりり!!

 頭の中に黒電話のような音が響いた。

 うっさい!!

 人が気持ちよく寝てる最中になんだよ!!



「多夢和殿でござるか?」

 あのエルフ侍の声だ。

 ってことはまた世界間通信ってやつか。

「はいよ。どうした?」

「おぉ!今回はきちんと繋がったようでござるな」

 ん?繋がらない時なんてあったっけ?

「いやなに、先ほどは繋がらなかったようでござってな女神殿が酷く焦っておったのだ」

 さっきっていえば……、あれかな。もしかしたらだいたらぼっちと戦っていた時に連絡してきたのかもしれない。

「あー、なんというか、さっきまで化け物と戦ってたからなぁ」

「なんと!そちらもでござったか!」

「そちらも?」

「うむ。こちらにも鉄の巨人が現れてな。拙者も戦っておったのだ」

 鉄の巨人って……、なんかあっちの世界もやばいことになってるみたいだ。

「拙者にも仲間ができて、その仲間と共に戦ったのだ。この身を融合してな」

 融合?なんか聞きなれない単語が出てきた。

「融合?融合ってどういうこと?」

「うむ、ブレイバーといってな。普段は小人のような姿なのだが拙者と融合することで強い力を得られるらしくてな。何でござったか、ブレイバー殿?……あぁ、そうそう、エルブレイバー、機獣天神エルブレイバーとなるでござるよ」

 え、なにそれ。なんか楽しそうなことになってるじゃん。

「で?そちらはどうだったでござるか?」

「あぁ、こっちはなぁ……」

 俺はアスティベーラに今日あったことを話した。

 アスティベーラはそれはもうびっくりしてたんだが、途中で一つ思い出したことがあったので聞いてみた。

「そういえば、アスティベーラ。妹に城に俺を訪ねるように言ったりした?」

「ん?あぁ、そういえばいったような気がするでござるな。確か前々回の通信のあと女神殿が妹に繋いでくれたでござるよ」

「あ~。じゃぁ、あのリヴィアーデさんっていうのはやっぱりお前の妹か」

「そうでござるな。リディは気立てもよく、武の才にも魔法の才にも秀でた、自慢の妹でござる。何やら困っていたようなのでお主を紹介していたでござる」

 やっぱりかぁ……。

 まぁ、怪しい人じゃなかっただけ良しと思おう。

「む、そろそろ時間でござるな」

「時間?あぁ、通信の時間制限か?」

「いや、これから仲間と夜間パトロールに行くのでござる」

 へぇ。しっかりやっているようで何よりだ

「では多夢和殿、これにてご免でござる」

「あぁ、じゃぁまた」

 そこまで言って失敗に気づいた。

 魔素と魔元素について聞き忘れた。

 しまったな。けどまぁ、今までのパターンだと女神がこの後、話しかけて……


 ………

 ……

 …



 来ねぇ!

 え、ちょっと!なにしてんのよ女神!

 おい、どうなってるんだ!

 ちゃんと仕事しろよ!ダメ女神!


「失礼なこと言わないでください!」

 聞きなれた声が頭のなかに響いた。よかった。ちゃんと話しかけてきてくれた。

「こっちはいつものパターンだとすぐ来ると思ったんだよ!そう怒るなよ」

「こっちにだって事情ってものがあるんですよ!」

「へぇー。否みになにしてたんだ?」

「……昨日、お酒のみ過ぎて頭が痛いんです」

 ただの二日酔いじゃねぇか!!

「あぁ、もう。大きな声出さないでください。頭に響く……」

 神様も二日酔いになるんだな。


「で、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

「何ですか?大抵のことには答えられると思いますけど?」

「じゃあ、とりあえず、魔力と魔素(マナ)ってなんなんだ?俺の魔力がビックリするくらいあるみたいなんだが?」

「あぁ、それですか。本当は世界の理関係はあまり話してはいけないんですけど……」

 もったいぶるなよ。

「良いですか?ます、魔素(マナ)魔元素(エーテル)は互いに変換されあう関係にあります」

「変換されあう?」

「分かりづらかったら水素と酸素と水の関係だと思ってください。水素と酸素合わせて魔素(マナ)、水を魔元素(エーテル)と思っていただければ良いかと」

 んー?つまり酸素と水素で水の元素になるって感じか?

「で、ここ魔素(マナ)魔元素(エーテル)は共に生物や無機物に吸収・放出されることで力の源へとへと変換されます。これが魔力です」

 ふむふむ。

「この魔力にはそれぞれ性質があるのですが、それはまた今度。で、その世界の人や生物は基本的に魔素(マナ)由来の魔力しか使用していません。魔素(マナ)由来の魔力は消費される際に魔元素(エーテル)へと変換され、魔元素(エーテル)由来の魔力は消費された際に魔素(マナ)へと変換されます。この循環で世界に魔素(マナ)魔元素(エーテル)を満たしています。つまり……」

魔素(マナ)由来の魔力ばかり消費されるから循環してない?」

「その通りです。まぁ、それでも、300兆年くらいはその星の魔素(マナ)が枯渇することはないんですが。ちなみに、魔元素(エーテル)1に対して魔素(マナ)3位の変換率になります」

 膨大すぎて感覚が追い付かない。

「で、あなたの世界では基本的に魔元素(エーテル)ばかりを消費しておりまして、それで貴方も魔元素(エーテル)由来の魔力への適正が有るんです」

 つまり、俺だけ……というか転移した人間はここではほとんど使われない魔元素(エーテル)由来の魔力を独占できる?

「その通りです。まぁ、使える魔力が桁違いなだけで、世界的にはたいした影響はありませんよ」

 いやいや、大抵そういう奴って魔王とか破壊神とかそんなレベルで出てくるやつだろう。

「あなたに関しては転移する際にこちらの都合で身体を其方の世界に適応できるように作ったので魔素(マナ)由来の魔力も適正を高くしたので魔力のバイリンガルですね」

「ってそうだ!俺の元の身体って今どうなってるんだ?これ、使命とやらを果して戻ったときまさか猫ままなのか?」

「大丈夫ですよちゃんと……仮に神界としますが、そこで保管してあります。1億年経ってもそのままですよ」

 いや、一億年は居ねぇよ。どんな浦島太郎だよ。

 あ、そうだ。あの兵士のことも聞いておかないと。

 後食料についてもな。

「後1つ……いや2つ聞きたいことがあるんだけど」

「まだあるのですか……。まぁ良いでしょう。なんでしょうか?」

 あ、こいつ、今絶対めんどくさいとか思ったろ。

「とりあえず、ドリス皇国の兵士に転移者っているか?なんか、俺を猫だって言った奴が居るんだが?」

「あぁ、それは多分太郎くんですね。彼は……ちょっとした事故で転移ではなく転生した方ですよ」

 転生者かよ。しかし、やっぱりこっち側の人間だったか。まぁ、それがわかっただけ良しとしよう。

 あれ?ちょっとまて?そいつ、転生してるならそっちを猫にすればよかったんじゃあ……。

「で、もうひとつは?」

 そう考えてたら食いぎみに次を催促された。

「あ、あぁ、なんでも、ドリス皇国は食糧難みたいなんだ。だからなにか解決策があればと思ってな」

「んー、その辺は私あまり関与してないんですよねぇ。まぁ、パッと思いつくのは農地改革でしょうけど、そこら辺は好きにやってもらって構わないですよ」

「そうなのか?異世界だとオーバーテクノロジーだったりしないか?」

「そのくらいなら問題ありませんよ。どちらにせよ、停滞した世界ですし。その辺りも改革を進めてもらえると、こちらとしても助かります」

「了解」

「以上でよろしいですか?ちょっともう頭痛が限界なので失礼しますね」

 最後まで頭痛で通したな。

 よほど飲みすぎたんだろう。あれ?神様って酔うのか……?

 あ、本当に通信切りやがった。



 翌日、朝食前に反乱した公爵達から正式な宣戦布告か届いた。宣戦布告は連名で各公爵を支援したと思われる国の署名、紋章があり、それぞれドリス皇国を批難する声明文及び独立を承認する文面が入っていた。

 じいやさん曰く、独立後に影響力を持ちたいとしても、普通はこういうところに書かないはずだ、との情報。

 まぁそれはわかる。

 それは、自分達が反乱を手引きしてますよと自白するようなものだ。個人間ならともかく、国家間では亀裂の火種にしかならない。

 もしかして、ちょっと頭が弱かったりする方々なのだろうか?

 もしも仮に、ばれても問題ない戦力と策略を練っているとしたら……。

 俺の今居るこの国は大変なことになるかもしれない。

なんだか前後共に区切りが悪いですが、新しい章へ突入です。

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