3-13.後始末と皇妃
改めて現状を把握してみる。
魔法によって形成された岩のドーム。
先端……というかドームの天井部分はつらら状になって落ちていったよな。
魔法で発生したマグマ。
高温で触れるものすべてを燃やし、融かしている。
マグマにより変化した気候。
暑い。あと硫黄臭い。
結論。
ヤ リ す ぎ た 。
あ、やべぇ。
マグマがドームを形成している岩の隙間から漏れ始めた。
ちょ、ちょっと待って!
このままじゃ森が燃えてしまう。
土魔法で塞げないかな?
アッとゆう間に融けてしまった。
土の壁じゃダメだな。
マグマってどうやったら固まるんだっけ?テレビで見た知識だと……海水だっけ?
わからん。とりあえず、水で冷やせば良いか。
水魔法をぶちこむとなんとか表面上は固まった。
これでひと安心だ。
水蒸気爆発でも起こるかと思ったけど、全然そんなことなかった。魔法のお陰かな?
さて、だいたらぼっちはどうなっただろうか?
『鑑定の魔眼』を発動してみる。
反応はない。
どうやら倒せたようだ。
良かった。これ以上の被害は無いだろう。
俺は魔法によってできた火山から目を逸らしつつ、そう安堵した。
地形がガッツリ変わってしまったが、それはだいたらぼっちを倒すためには仕方なかった。……仕方なかったのだ。
パチパチパチパチ。
火山を見下ろしている俺の耳に拍手の音が響く。
振り向くとあの老紳士が俺の後ろに浮かんでいた。
あ、あんたも浮かべるのね。
「お見事です。私、感服いたしました。まさか、これ程の力をお持ちとは」
なんか、感心してくれてるが、出来れば注目しないでいただきたい。
パターン的にはこいつ、ちょくちょく絡んでくるやつだろ。是非ともご遠慮させていただきたい!
「まぁ、目的は達しましたし、私は、これで失礼させていただきます」
老紳士は恭しく礼をして、転移魔法を発動した。
一瞬、すごーく嫌な歌が聞こえた気がした。
全く、こんな災害を引き起こしておいて、逃げるなんて何て奴だ!
え?火山作ったのはお前だろって?
さ、さぁ?なんのことかな?
そんなかんじで、俺も帰ろうと思っていたのだが不意にヴィゴーレとリヴィアーデさんの事を思い出した。
そういえば、影魔法たちに守らせて放置していた。
転移魔法を発動する距離でもないので素直に飛んで戻る。
「お前……とんでもない奴だな……」
「よかった。試合であの力を使われなくて本当によかった……」
なんか唖然としてるな。まぁ、あの力を見たあとじゃな。
正直、俺も驚いてるし。
なんにせよ、脅威は去ったのだ。
こいつらをのせて帰るとしよう。
王城の場所はシャルロッテさんに潜ませた影で把握できる。
転移は飛んだ後で少し上空の外れたところに転移すれば問題ないだろう。
おっと、その前にヴォルガモアに姿を戻しておこう。
何かあると面倒だし。
無事、王城へとたどり着いた。
いや正確にはちょっと問題があったんだが。
転移した先に鳥の群れが飛んでいた。
ちょっと危なかった。
リヴィアーデさんが、叫んでいたけど、まぁ問題ない。
王城の湖の畔に降り立つと、じぃやさんが走ってこっちに向かってきた。
狼を二頭引き連れている。
お前たちはいつの間に居着いたのかな?
完全にペット状態じゃん。
「アレクシス様!ヴィゴーレ殿!ご無事でございますか!」
ガラハド達から報告を聞いたのか、血相を変えて来たのでビックリした。
「バスティアン卿か」
「ヴィゴーレ殿。それで、魔王級の疑いのある魔獣は確認できましたか?」
「あぁ、存在は確認した」
「なんと……!では、早速、各方面に通達を……」
「その必要はない」
「は?それはいったいどういう……」
「確認した魔獣は、ここにいる神獣アレクシスが討伐した」
おぃぃぃ!?
なに言ってくれちゃってるのこの男!!
そんな言い方すると、今後動きづらくなるだろうが!
「なんと!それは誠でございますか?」
「事実だ」
「私もここ目で確認致しました」
「バスティアン卿、早速ですまないが、報告をしたい。こいつは喋れないだろうからな。代わりに報告をする。構わないな?」
「承知致しました。ではアレクシス様は御ゆるりと休みください。お二方は此方へ」
「あの、すみません。その前に刀を取りに行ってもいいでしょうか?刀がないとどうも不安で……」
「そういえば、エルフ娘。あれはゲオル老の作品だろう?見たところ……」
俺を残し去っていく三人と二匹。
なんだか勝手に話が進んでいた。
俺、毛繕いしてたんだけど。
特にやることもないので、ポーションイーターの姿に戻り、とりあえず、シャルロッテさんの所にいくことにした。
影を潜ませているから場所はわかるのだ。
シャルロッテさんの反応がある部屋の窓はバルコニーのようになっていて、そこに飛び乗った。
そこには大きな扉があり、今は解放されている。
ガラスは……なんか中途半端に上半分だけ嵌まってるな。何処と無く温室の入り口のような扉だ。まぁ、扉の格子のせいでガラス一枚一枚はそう大きくないように見える。そういえば、中世ってガラスは高級品だっけ。
中を覗くとシャルロッテさんはベッドで眠っているようだ。しれっと中にはいってベッドのシャルロッテさんの顔のそばで丸くなる。
猫的行動にも慣れたものだ。
しばらく寝ていようとも思ったが、ふとベッドの横に近づいてくる気配を感じた。
「あら?」
ちらりとそちらを見てみると、上品そうな大人の女性が水差しを持って立っていた。キメの細かいふわふわな金髪を後ろから前に垂らして結び、透き通るような肌が印象的な女性だ。
「もしかして、あなたがシャルロッテの言っていたアレクシスさんかしら?」
水差しをサイドテーブルに置き女性が俺の頭に手を伸ばす。
おいおい。見知らぬ人間がいきなり頭を撫でようってか?だがまあ、きれいな女性なので許す。
ガラハドみたいにガサツに撫で回す奴だったら断りたいが。
なでなでなで。
うん。心地良い力加減だ。
強すぎず、弱すぎず。
時折、耳の裏を少し荒めに撫でてくれるのも良い。
この女!手慣れてやがる!!
あれ?でも、猫はこの世界に居なかったよな?なんで手慣れてるんだ?
気になったので鑑定の魔眼を使うことにした。
[パーソナル]
名前『シナーデ・エル・ドリステリア』
年齢『31』
種族『人間』
種族ランク『-』
冒険者ランク『-』
職業『皇妃』
称号『じゃじゃ馬』『影の権力者』
レベル『12』
好物『シャルロッテの野菜・山菜類・イドバルト』
[ステータス]
体力『D』
潜在魔力『D』
筋力『F』
防御『E』
敏捷『D』
魔力『C』
知力『D』
器用『D』
対魔力『C』
統率『C』
運『A』
[状態]
『心身疲労』(すべての能力に-C)
[習得スキル]
『雷魔法』(レベル:D)
『光魔法』(レベル:C)
『火魔法』(レベル:D)
『水魔法』(レベル:C)
『生活魔法』(レベル:D)
『礼儀作法』(レベル:B)
『交渉』(レベル:D)
『軍隊指揮』(レベル:C)
『乗馬』(レベル:C)
『農業』(レベル:D)
『林業』(レベル:D)
『漁業』(レベル:D)
『畜産』(レベル:D)
etc、etc…
へぇ。皇妃なんだ。
って!?皇妃!?
この人もしかして、シャルロッテさんのお母さんか!?引きこもりの!?
あれ?ちょっと待てよ?確か皇妃って、今の皇王を婿にしたとか、前言ってなかったっけ?
つまり、実質この国の最高権力者か?
いや待て。それよりも年齢に突っ込むべきか?
シャルロッテさんは確か16歳だったし、逆算すると15歳で結婚、出産してるのか?
もしかして、皇王もそれなりに若いのだろうか?
「うーん。この触り心地。これはシャルが夢中になるのもわかるわ」
そうかね。しかしそろそろ解放してくれるとありがたいんだが。
あと、ひげはいかん。
そこは超敏感なんだ。
「ねぇ。アレクシスさん?」
ん?なんだ?
シナーデさんが俺に顔を近づけ真剣な表情をする。
「国がこんな状況なの。シャルを孕ませるなら計画的にね」
あんたもか!!
すみません。遅くなりました。
骨は完成していたのですが、中世の農業や水運事情を考えていたら沼にハマりました。
綺麗な水を供給出来て(川が淀まない)かつ小さな船を川に通して運搬させるにはどの程度の水深や広さが理想的かなど、考えなければならないことが多く図書館に詰めていました。
中世といっても1100年くらいの技術力としても……。
農業にしても改革はするとして、三圃にするかノーフォーク式にするかフランドル式にするか。
どんな作物を育てるか。エクセルさん大活躍です。
もし、中世の生活が詳しく書かれている参考資料がありましたら教えていただけると幸いです。