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3-12.Aランクの実力

 転移した先は先程降り立った場所から500m程のところ。とりあえずこの辺であれば安心だろう。

 だいたらぼっちの身長は……ざっと30m位だろうか。

 ここならもしこっちに来てもすぐに逃げられるだろう。

 ヴィゴーレとリヴィアーデさんを置いて行くことにする。

 にしても……

「ふむ、これがこの世界の魔法ですか。中々に素晴らしい」

 なんであんたがいるんだよ!

 そこには件の老紳士がいた。

 それにしても、『この世界』か。確定だな。

「あぁ、私のことはお気になさらず。魔法に興味があっただけですので」

 いやまぁ、良いけども。

 念のために影魔法と幻影魔法を発動させておく。

 襲撃の夜に兵士を倒した魔法だ。

 単純に戦力を何倍にも増やせるのは良いのだが、いかんせん、戦闘力という点ではどうだろうか?

 兵士は圧倒していたが、隊長格にはやられていたしな。

 もしかしたら、より強い魔力を込めれば強くなるかもしれない。

 気持ち程度に魔力を余分に込めておく。

「なっ!?なんだこいつら!?」

 ヴィゴーレが驚いている。

 俺は影達に二人を守らせるように配置すると、驚いた二人を横目に飛び立った。


 さて、お仕事を始めないとな。






 近くで見るとなお、キモい。

 顔?にびっしりと這えた白い触手は、それぞれが意思を持っているかのように蠢き、黄色い鱗をよく見ればそれも小さな触手の塊だった。

 そういえば、老紳士は『自分の眷属によくにた者』と言っていた。

 なんだ?あいつの眷属は触手か何かか?


 そう考えていると、だいたらぼっちは俺に向けて頭部から無数の触手を伸ばしてきた。

 明らかに攻撃的な動きで俺を捕らえようとするが、俺を捕えるには至らず、触手は空を切る。

 風魔法で形成した刃を触手に向け切り裂くがダメージを与えた様子はない。

 それどころか、触手は切られた面がボコッと膨らんだかと思うと触手を再生させてしまった。

 キモい。

 白いから余計にキモく見える。白いウジ虫か何かが増えているような光景だった。

 俺はその場からだいたらぼっちの後ろに回り込むように動くと、今度は黄色い鱗に向けて火魔法を試してみた。

 ところが俺の出した炎は鱗を焦げ付かせたものの、すぐ消火され消されてしまった。

 その消火された面から新たな触手が飛び出して半分は俺に向けて、半分は焦げた面を覆いまた鮮やかな黄色を産み出してしまった。

 マジかよ。

 攻撃しても再生されるならいたちごっこだ。ダメージも、与えられているのかどうかわからないなこりゃ。

 再び正面に回り込み、だいたらぼっちを睨み付けると、今度は無茶苦茶に触手を振り回してきた。

 しかし、なんだか攻撃がバラバラな印象を受ける。

 俺を狙った攻撃なのに攻撃の範囲が広すぎる。関係もない地面を抉り、木々をなぎ倒し、岩を穿っている。

 なんだ?もしかして、こいつ、視力がないのか?

 だが、さっき顔の白い触手が延びてきたときは、真っ直ぐに俺を狙ってきていた。

 魔力でも感知しているのだろうか?でも、正面も背後も、どっちも魔法は発動してたしな。

 おっと、危ない。一旦考えるのはやめにしよう。

 相手が出鱈目に触手を振り回すなら、こっちもめちゃくちゃに攻撃してみよう。

 俺は今までで一番多い魔力を込めて火魔法を放った。


 イメージするのは触れたら大炎上する壁。所謂、結界的な物だ。

 ただ、森や地形を焼かないように対象をだいたらぼっちに限定。空気や大気中の元素も除外する。

 これならあいつの触手のみを焼けるだろう。

 さぁ、どうなるか。


 俺の目論みは成功した。

 俺を中心に魔力の壁が展開し、そこに触れただいたらぼっちの触手は焼け落ち、次々と灰になる。

 しかし、威力が足りないのか、やはりダメージを受けた様子がない。

 更に触手の数は増え、今度は明確に結界の面に向かって攻撃が飛んできた。

 この結界、本当に炎が燃えているわけではなく、純粋な魔力による範囲指定なので物理攻撃で破られることはない。そうイメージしてある。そこを通過しようとすると高熱で炎上させているだけだ。無数の触手は触れるごとに燃え上がり、黒焦げになるが、やはり、そこから新たな触手が出て再生してしまう。

 どうすれば良いのか……

 いっそ結界のなかに閉じ込めて高温で一気に焼き尽くすのはどうだろう?

 試してみるか。

 俺は再びイメージをする。

 結界の中心点を俺ではなく、だいたらぼっちに設定。炎上を結界の外側ではなく、内側に触れた際に変更。後は徐々に結界の範囲を狭めるだけだ。

 すると早速魔法が発動したようで、だいたらぼっちは結界のなかに閉じ込められた。

 そのまま徐々に結界が縮小しだいたらぼっちを端から焼き尽くしていく。


 GRWooooooooo!!


 だいたらぼっちから初めて断末魔の悲鳴のような音を聞いた。

 これは流石に効いているようだ。

 やがて結界が収縮しきって10cm程の直径になる頃にはだいたらぼっちは黒焦げの炭の塊になってしまった。

 流石にこれはやったか?


 そう思ったとたん、黒焦げの炭の塊からいくつもの黒い触手が延び俺向かってきた。

 まだ生きてるのかよ!?

 驚いて回避を取ったが、間に合わなかった。触手の一本に撥ね飛ばされてしまった。

 俺の体は宙を舞い、後ろにあった木を何本かなぎ倒して止まった。


 いってぇな!畜生!


 木にぶつかった衝撃はそうでもなかったが、殴られた方はめちゃくちゃ痛い。

 あのアンキロサウルスモドキの鉄球すらなんとも無かったのに。

 まったく、あんな状態でも攻撃してくるなんて、何て奴だ。

 しかし、だいたらぼっちは俺を追撃することなく、俺のいた場所を中心に無差別に触手を振り回しているようだ。

 やっぱり、俺が見えて無いんだろう。

 しかし、俺の方も手詰まりだ。他の魔法でも良いがアニメやマンガでも、この手のやつは大概、光や火が弱点とか言われるので火魔法以外に大きなダメージを与えられそうな魔法がない。光魔法は習得してないしな。

 仕方ない。ここは、やっぱり、別種族になるべきかもしれない。

 あいつになにか有効なダメージを与えられそうな攻撃が出来れば良いんだが……。

 俺は変化可能な魔物の一覧から迷わずヴォルケーノを選択した。

 字面から恐らく、火山とか業火とかそうな感じの魔物だろう。

 火でダメならマグマ。

 更に高い火力で焼き尽くしてやる。


 俺の姿は今どうなっているのだろうか?ヴォルガモアの時より更に目線が高い。

 ふと足元を見ると毛並みは黒と深紅の二つのトラ柄のようだ。所謂茶トラの色違いバージョン。それ以上に特徴的なのが前足の毛に炎を纏っている点だ。炎ではあるが全く熱くない。それどころか心地よささえ感じる。

 これ、絶対ヤバイ奴やん。



『合成魔法』『地殻魔法』『火山の力』を取得。


 あれ?そんなポップアップ出てたっけ?

 ギルドを探していた時も、ヴォルガモアになったときもそんな表示……。

 そこまで考えて気が付いた。

 そういえば、どちらの時も、こんな視界の端を気にしてる余裕なんてなかったっけ?

 ギルドの時はポチポチ選択するのに忙しかったし、ヴォルガモアになったときも、公爵の反乱で城に攻め入られていた時だっけ。


 それにしても、『合成魔法』に『地殻魔法』か。

 どんな魔法なんだろう?

 とりあえず、魔力を籠めて意識してみるか。

 何か、奴を倒せる魔法!お願いします!


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!


 いや、なに?この地震?

 いや、待てよ?

 地殻魔法ってもしかして……。


 そう思っていると、だいたらぼっちの足元の地面がボコッとへこんだ。

 いや、周りの地面が盛り上がってきてるのか?

 とりあえず、地震の影響が自分に及ばないよう、空に飛んでおく。

 そこから見た、だいたらぼっちの姿は……。

 へこんだ地面は、マグマと化していた。

 圧倒的な熱量でだいたらぼっちを焼き尽くしていく。

 さらに盛り上がった地面は先端がとがり始め、だいたらぼっちに向けて岩の槍を形成していく。

 岩のつららだ。

 ある程度の大きさになったつららは、だいたらぼっちに向けて発射される。


 GRWooooooooo!!


 やがて、つららがすべてなくなるころには、マグマの上にかろうじて出ていただいたらぼっちの上半身すら焼き尽くし、小さな火山は活動を止めた。





 ……なんだこの反則級の力。

遅くなりました。

ドリス皇国の環境について考えていたら、沼にハマってしまいました。

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