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3-11.謎の男

「瘴気による森林破壊か……、そんな奴が居るとはな」

「兄貴、これはヤバイんじゃないか?親父に叛乱を辞めさせて、全軍招集して事に当たらせないと、奴の動く範囲は人の住めない土地になっても可笑しくねぇぞ」

「確かに不味いですね。ヘンリー、私達も父上達に進言しましょう」

「だけどロウフィス、あの父様たちが簡単に前言を覆すとは思えないな。くっ。せめて兄様が生きていたらな……」

「居ないものは仕方無いわ。ともかく、陛下や皇女殿下にも御知らせしないと」



 俺を蚊帳の外にして、公爵嫡子達が対応の協議をしている。

 うーん。これは、どうなのだろうか。

 俺が行ってブッ飛ばしたら話が早い気がする。

 魔王級とかヤバイ単語が出てきたけど、俺のレベル以上ってことはないだろう。

 可能なら戦いたくはないし、出来ることなら怖いのも嫌なのだが、放置していたらシャルロッテさん達に危害が及ぶかもしれない。それは後味が悪すぎる。

 それに、まだ、俺は進化を行えるらしい。今までの情報から災害級がCランク、天災級がBランクだと仮定しているのでAランクの『ヴォルガモア』は魔王級になるのかな?

 最も力の程度はわからない。何せリヴィアーデはヴォルガモアの俺に果敢に挑んできたのだから。だが、他のAランクにもまだなれることを考えると、俺より強いってことはないだろう。

 やはり、進化候補はテラーデビル辺りだろうか?名前的に強そうだ。

 あ、猫将軍やヴォルケーノってのもかっこ良さそうだし、強そうだ。

 うーん。迷う。

 あの5人は……。まだやってるか。

 一瞬、そんなところでグダグダやってないで、さっさと姫さんたちに報告に行けばいいのにと思ってしまったが、飲みこんだ。

 あー、こりゃ、まだしばらくかかるな。

 すまんが、強制的に話は中断だ。

 俺はさっさと仕事を終えて眠りたい派なのだ。

 逆に眠たいときは眠る派。

 そこ、欲望に素直とか思わない。

 一応、デザイナーという肩書を持っている人間にとっては、ストレス解消法は重要なのだ。



 俺は姿をヴォルガモアに変更する。

「ひっ」

 しまった。

 姿を変えてから俺は反省した。

 今、俺、リヴィアーデさんのベッドの上にいたんだった。

 眼下でリヴィアーデさんが怯えている。

 すまん。謝ったら許してくれないかな?

 にゃーん。

 かわいい声で鳴いたつもりだったんだが、そんな声でなかった。

 ぐるぉぉぉん!

 みたいな感じ。

 これは誰でもビビるわ。俺でもビビる。

 自分の上にでかいライオンかトラが乗って、自分の顔に鼻先を近づけて咆哮したようなもんだ。

 いや、ごめん脅かすつもりはなかったんだ。

 そんなにビビらんでくれ。

 俺はただ、話がどうせ纏らんならもう俺が行った方がいいと思っただけだ。

 この不毛な会議が止まればよかったんだけど。

 どうも、警戒されてしまっているな。

 さくっとわかってもらえる方法はないだろうか。

 いや、もう出て行った方が速いか。

 と思ったが、リヴィアーデさんの里の位置を知らない。

 となれば、リヴィアーデさんに案内してもらった方がいいか。

 うーん。しかしなぁ。



 マンガとかアニメなら、魔法で意思を伝える手段があるんだけどな。

 ……そういえばバロンがテレパシーがどうとか言ってたっけ。

 なんで早く思い出さなかったのか。

 今度習ってみよう。俺でも簡単に使えるといいんだが。



 俺は、公爵嫡子たちの方を見た。

 こっちもめっちゃ警戒していらっしゃる。

 どうしたものか。

 とりあえず、リヴィアーデさんの上からはどいておく。



 俺はヴィゴーレの方を見た。

 よく考えれば、リヴィアーデさんじゃなくてヴィゴーレかガラハドでいいじゃないか。どうせその場所への道案内だけだ。うーん。その前からの話の感じからすると、ヴィゴーレの方が強い感じだった。

 ヴィゴーレにしよう。


 俺はヴィゴーレに近づくと身を屈め、首で乗れと指図する。

「乗れってことか?」

 ヴィゴーレの問いかけに頷くと彼は「面白い」とニヤリと口角を上げながら、言った。

「あ、兄貴俺も!」

「お前たちはこの事をバスティアン殿に知らせろ。至急両ギルドのギルドマスターと軍事関係の人間を招集して対策を会議しろとな」

「っ!しかし!」

「相手は魔王級かもしれない相手だ。まずは俺が偵察にいく。災害級クラスであれば倒してくるがこれ以上なら……情報を持ち帰ることに専念する。お前達がいても邪魔なだけだ」

「くっ……。わかった」

 ガラハドは悔しそうだ。まぁ、情報を集めるだけなら確かに大人数より少数精鋭の方がいいだろう。

「お待ちください!私も!」

 リヴィアーデが声を上げるが、ヴィゴーレは頭をふった。

「今のお前は魔力の使い過ぎで魔力欠乏を起こしている。邪魔だ」

「くっ」

 話はまとまったかな?

 ヴィゴーレが言い放って俺に跨がった。

 重っ!?

 ちょっとダイエットしろよ。動きが制限されるほどじゃないけど。

 じゃ、転移するぞ。とりあえず、西の方に転移しよう。俺は転移魔法を発動する。するとこの間のように、俺の足元から魔方陣が競り上がってきた。

「やっぱり、待っているだけなんて出来ません!!」

「お、おい!」

 は?ちょっ、リヴィアーデさんが俺に飛び付いてきた。マジかこの娘!!

 振りほどく間もなく、

 転移が発動される。

 やっべ。マジどうなるんだこれ。





「きゃああああああ!」

「うおぉぉぉぉぉぉ!?」

 転移は無事発動した。

 リヴィアーデも無事転移してくれたようだ。

 俺の首にしがみついている。

 危なかった。

 咄嗟に転移座標を上空になるようにずらしたが、どうやら成功来てくれたようだ。

 しかし、本来行きたかった座標とは少しずれたかな?これ。

 俺は自由落下の最中に、そんなことを思いながら、飛翔の衣と空間把握を発動させた。

 ゴロゴロしていたときに気付いたのだがこの空間把握、とても便利だ。城で発動させると大体3km位の範囲を瞬時に把握できた。

 ただし、自分を中心に把握するので、無駄に地下や上空まで把握してしまっている。上空や地下は要らないだろうから意識から除外する。

「む?」

「あれは!あそこです、お二人とも!!」

 眼下を見ると森の一部が焼けたようになっている。

 慌ててずらしたのが功を奏したのか、ちょうど目的の場所につけたようだ。ラッキー。

 そんなことを考えていると、不意にポップアップウインドウが出てきた。


 君はとても幸運だ。


 うっせえよ。

 あ、もしかして、ラッキースターの性能ってこれか?


「アレクシス様!あそこに降りてください!えっ?きゃああああああ!」

 あそこに降りる?

 馬鹿言っちゃいけない。

 さっきからビンビン感じる。

 ヤバイ気配が二つ。

 一つは焼けたようになっている森の中心から感じる。

 もう一つはその外縁……。

 なにやってるんだ?あいつ?

 とりあえず、ばれないように奴の後ろの茂みに降りよう。


 俺は二人を下ろした。喧嘩が始まるかと思ったけど、どうやら二人とも、あのやばそうなやつに気付いたらしい。

 失敗したな。直接近くにこれるなら二人は必要なかったか。

 身を屈めて様子をうかがっていると、外縁の奴がこちらを振り向き、こちらを真っ直ぐ見てきた。

「お客様ですかな?」

 その人物はご年配の紳士と言っても良い格好をしていた。

 誰だろう?

 するとそいつは俺の心を読んだかのように、

「失礼いたしました。私、我が主にお仕えしております、ジェイムスと申します。以後お見知り置きを」

 等と悠長に言いはなった。

「貴様、何者だ?」

「主と言うのは、あの化け物ですか?」

 ヴィゴーレとリヴィアーデさんが武器を構えながら……、あ、リヴィアーデさんが武器がないことに気付いた。

 まぁ、医務室からなにも持たずに飛び出してきたのだ。当たり前と言えば当たり前だった。

「滅相も御座いません。あのような、出来損ないを主などとはとてもとても」

「出来損ないだと?」

「えぇ。私の眷属によく似た者が居りましたので、我が主の種を与えたのですが、どうやら力が暴走しているようで。力の制御もままならず、理性も崩壊しているようなのでございます」

「暴走……いや、それよりも種とはなんだ?」

「種は種でございます。それ以外に形容する術は持ちません」

 なんだかややこしい。

 しかし、こいつはなにがしたいんだ?

 パターンとしては力をつけた魔物を依り代になにかを復活させる辺りか?

 そういえば、女神も種子がどうこういってたっけ。もしかして、それが主様って奴か?

「見たところ彼の者を討伐されるご様子。どうでしょう。私もこのような汚点は早めに始末したいところですので、共闘を行うと言うのは」

「ふざけるな!森をこんなにした元凶を放っておけるか!」

 リヴィアーデが怒鳴り付けるが彼は肩をすくめるだけであった。

「ふむ、ならば仕方ありませんね」

 そういうと、彼の後ろ、焼けた森から『何か』が立ち上がった。

「なっ!?」


 それは、巨人であった。

 人の形をしているが明らかに人とは異なる『もの』。

 半透明に見える黒いゲル状の体に、黄色と黒のラインと所々に、黄色鱗をを思わせる斑点が入った体をしていた。

 頭部と思われる場所にはぎっちりと白い触手のようなものが蠢き、頭頂部から肩にかけて黄色地に黒と白の斑点がある。

「な、なんだ……あれは……」

「……」

 リヴィアーデは恐怖で声もでないようだった。

 対してヴィゴーレは流石だな。

 動揺はあるもののしっかりと奴を見据えている。

 できの悪い泥人形のようなそれは、俺たちにのし掛からんとゆっくりとその歩を進めた。


 俺はその姿に少しだけ見覚えがあった。有名なアニメスタジオで作成された、アニメのキーキャラクターその夜の姿にそっくりだ。

 まぁ、こちらは白い触手が顔にびっちり着いているが。

 奴を仮称「だいたらぼっち」と称することにする。

 だいたらぼっちは、右手をこちらに伸ばすとその手から数本の触手を伸ばしてきたゆっくりと緩慢な動きだがその巨体ゆえ範囲が広い。だが、避けられないほどではない。しかし、リヴィアーデは未だ硬直している。



 ここは仕方ない。

 俺は再び転移を発動させた。


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