3-7.エルフの侍
「し、失礼します」
ノックのあと、メイド服を着た薄い金髪の女性が入ってくる。
ん?誰だ?
見たことないメイド、いや破廉恥メイドだ。
異常に短いスカート、肩を出したメイド服はちょっと手を上にあげればへそが見えてしまいそうだ。
うん、まぁ、なんというか、大人向けビデオに出てくる企画もののような姿だ。
そんなことを考えていると、後ろからひょっこりとマリアゲルテさんが出てきた。
「姉様!アレクシス!どうかしら、この格好!」
マリアゲルテさんはいたって普通の格好をしているのだが?
あ、もしかしてこのメイドさんのことか?
「まぁ!かわいらしい格好ですね。アマンダ」
アマンダさん!?
いや、そういわれると確かにアマンダさんだ。
あの騎士の格好からは想像できない。
なんて格好をしているんだ!
彼女のうっすらと金色に輝く髪と、日焼けのない肌にこのとんでもない格好は意外にも……、マッチしている。
「くっ……!殺して……」
おぉ!生くっころ!生くっころだ!
思わず感動してしまった。
恥ずかしそうに内股になり、胸の前で体を抱いて赤面し、体をくねらせている姿はなかなかクるものがある。
俺は、クスクスと口元を手で隠して笑っているシャルロッテさんの膝から飛び降りると、テクテクと歩いてアマンダさんの足元まで吸い込まれるように進んでいった。
そのまま上を向いてアマンダさんの方を見る。
覗きはともかく、スカートの中は男子禁制の秘密の花園。
男子禁制、素晴らしくロマンを感じる言葉だ。
ここは男のロマンを優先するべきだろう。
み……、みえ……!?
見えねぇ!?
いや、正確には少しだけ見える。
しかし彼女はスカートの下に短パンのようなものを履いていた。
その隙間から若干だけ見えるのだ。
彼女はシャルロッテさんの方を見ているのでこちらを気に留める様子もない。
「!?」
あ、俺の存在に気づいてしまった。
残念、ここまでか。
「あ、そうだ姉様!お客様よ。今、応接室に待たせてあるわ」
「ありがとう。マリア。じゃあ、行きましょうか。アマンダ、アレクシスさんを抱えてついてきてくれるかしら?」
「わかりました、では直ぐに着替えて……」
そういいかけたアマンダさんにシャルロッテさんが無慈悲な一撃を見舞った。
「あ、服はそのままで。せっかくかわいい衣装を着てるのだし勿体無いわ」
「!?!?」
アマンダさん可哀想に。
まぁ、ミニスカエロ衣装メイドに抱えられて俺は満足だけどね!!
俺はアマンダさんに胸に抱えられて応接室とやらに向かっていた。
そう!これだよ!これ!
抱えられるなら女の子に限る!
思わず頬が弛む。
今俺は確実にニヤケ面になっていることだろう。
にしても、アマンダさんは羞恥からかちょっと腕に力が入りすぎている気がする。だからダイレクトに体温が伝わってくるのだが……。ちょっと布地が薄すぎやませんかね?
ていうか、布一枚しかない気がする。まさかこの娘、ノーブラか!?
わっほい!
そういえば、さっき肩のところからブラヒモが見えてなかった気がする。
シャルロッテさんたちと2日に一度は一緒に寝ているから、何となくこの世界の下着事情は理解している。この世界の昼に使うブラは二本の型紙のようなものを入れた布のようなものだ。夜に使う方は使わないか、ベビードールのような薄い布をつけるだけとなっているようだ。
まぁ、だから何だという感じなんだが。
ちなみにこの世界、ズボンやスカートの下に履くいわゆるショーツには、ゴムの代わりにゴムリア草という繊維素材があり、それを編み込んで布地にすることでゴムのように伸縮性のある布地を作れるらしい。
この繊維素材をショーツの上部……いわゆる、パンツのゴムの部分に縫い込むことで現代に近いショーツを作成しているそうだ。
それが開発される1000年前までは下着は長い布を腰で固定し、垂れた部分を股下に通し、反対側……身体の後側の固定した布に通すことで下着としていたらしい。
いわゆる、褌の様なものだろうか。
今では、この植物の為の農地まであるらしく、かなり安価で生産できるらしい。この為、庶民も下着をつけて生活できているらしい。
まぁ、俺には今の下着の方が目の保養になってとっても良いのだが。
さらに余談だがこの情報、アドマがシャルロッテさんに行っていた授業の中で判明したものだ。
オッサンが生徒の少女に下着の歴史を教えるなんて、現代では立派なセクハラだと思う。
「ところでアマンダ?なんでそんな恰好をしているの?」
その言葉に、アマンダさんが涙目でバッと振り向いた。
「ようやく聞いていただけましたか!」
今にも泣きだしそうな顔でシャルロッテさんに詰め寄った。
……俺を放り投げて。
「あ、それは私よ。姉様!」
俺を拾い上げてマリアゲルテさんが答えた。
マリアゲルテさんがにっこりと笑い、
「なんでもありの模擬戦に勝ったら、何でも言うことを聞いてくれるっていうからちょっと頑張りすぎちゃって」
「マリア……、あなた、アマンダに勝ったの?」
「うぅ、はい。なんでもありの真剣勝負で負けました」
「すごいじゃない!今まで一本も取れたことなかったのに。いったいどうやったの?」
「いやぁ……ははは……」
なんとなく歯切れの悪いマリアさん。
これは……、何かやらかしたな?
「マリア……、貴女……」
マリアさんがやらかした内容はこうだ。
そもそも、模擬戦とはいえ、なんでもありの真剣勝負というのは、ほかの場所ではともかく騎士団の間では実戦形式の戦いだ。
地形、人脈、道具の優位性、自分のすべてを使って勝ちをもぎ取る戦いらしい。
とはいえ、大人数で相手方を叩くのではなく、あくまで一対一で戦うのがルール、というかマナーとなっている。
これまでアマンダさんはマリアさん相手には全戦全勝。アマンダさんは、この国に2つある騎士団のうち、主に皇族の護衛を任務とする赤百合騎士団第二分隊副隊長という立場で(なお、隊長は見たこともないおっさんらしい)、マリアさんは何と主に対魔物や他国との戦争を担当する白薔薇騎士団副団長らしい。
魔法と剣を巧みに操るマリアさんに対し、アマンダさんは大きめのロングソードと高速移動を主体とする物理攻撃タイプらしい。
だが、マリアさんの主体となる魔法はほかの魔法に比べて発動が微妙に遅い。というか発動までの詠唱が少し長いらしい。
今まで最終的にはアマンダさんの剣速に押されて魔法より剣主体の戦いを強いられることとなっていた。
だが、そこは負けず嫌いのマリアさん。勝つためにいろいろ考えた。
そして考えたのがダーティープレイ。
防衛に徹して時間を稼ぎ、罠を仕掛け、自分の得意な戦術を使えるように場を整えた。
砂による目潰し、風と火による煙幕、言葉による挑発、落とし穴。
土魔法は苦手なようだが、それでも努力をして実践レベルに仕上げたらしい。
彼女が得意な魔法は雷魔法。それが最も効果的に相手に攻撃できる方法を作り出したのだ。
電気の伝導率の良い水を媒介にするため、アマンダさんを嵌めた落とし穴の中に魔法で水を貯め、雷魔法を使用した。これにより彼女は勝利を手にしたのだった。
で、彼女たちは勝負に際し一つ賭けをしていた。
挑発のために使った言葉なのだろうが、「負けた方は勝った方の言うことをなんでも一つ聞く」こと。
これにより、彼女はこのメイド服を着ることとなってしまったらしい。
ちなみに、彼女は形式上はどのみち公爵の反乱の責任を取って、皇族に拘束された形になっているので、皇族に逆らうことはできない。というかしないだろう。
それも作戦の一つだったのかもしれない。
「……まぁ、勝ちは勝ちです。よく頑張りましたね。マリア」
「ありがとう!姉様!」
「アマンダも、模擬戦ありがとう。案内が終わったら着替えてきていいわよ。さすがにその格好でお客様の前に出るわけにはいかないものね」
「うぅ……、ありがとうございます。殿下」
顔を両手で塞ぐアマンダさん。さっきから通りすがるメイドや執事がずっと見てた気がする。ご愁傷さまです。
コンコンとノックと共にシャルロッテさんが扉を開ける。
現在、俺を抱えたマリアさんも彼女のあとに続き部屋へと入っていった。
「貴女が私を訪ねてこられた、お客様ですね。お名前は?」
彼女はソファーから立ち上がってシャルロッテさんに頭を下げた。
「お初にお目にかかります。私はニヤァーベの里のエルフ、リヴィアーデ。リヴィアーデ・ニヤァーベと申します」
そこにいたのは、エルフの少女……、侍?
おや?最近、どこかで見たような組み合わせだぞ?
あれ?全く進んでない……




