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3-2.鬼の住む土地

似た名前の人が数人出てきます。

「アレクシス様、お食事のお時間にございます」

 俺を抱えながらピッチリスーツ、俺の執事となったドラディオが俺に伝えた。

 にゃーん。と答え、俺は腕の中から飛び降りる。

 するりと腕から抜け出し、床に着地するとドラディオは恭しく礼をして、俺のあとに従う。


 いや、やっぱりおかしいだろ、この構図。




 夜に食堂に行くとじぃやさんが、俺たちを出迎えてくれた。

 今日のメニューは何だろな。


 やっぱり、ウーマのステーキだった。

 さすがにココほぼ2週間、ステーキオンリーは厳しい。

 姫さんたちは変わらずおいしそうに食べているが……。

 せめて同じ肉でも調理方法を変えてくれないかな。

 味は、もうある程度諦めてる。

 どうもこの世界、調味料少ないっぽいし。


 そうこうしていると、入口の扉がバタンと開かれ、マリアゲルテさんが入ってきた。

 相変わらず元気だなこの娘。


「マリア!!」


 そして相変わらずシャルロッテさんに怒られると。

 懲りないなー、この娘。


 で、俺はといえばそろそろ俺の後ろに立つ筋肉男の説明が欲しいんだが。

 そう考えているとシャルロッテさんがポンと手を叩き、思い出したように言った。


「そうそう、アレクシスさんにドラディオのことを紹介していませんでした」


 うん、俺の気持ちが通じたのか彼女は紹介してくれた。

 そうだよね。普通は紹介したときに人物紹介してくれて然るべきだと思うんだけどね?


「彼の名前は知っていますよね?改めて紹介しますが、彼はドラディオ。皇家所属の幹部執事の一人です」

 幹部執事?まぁ、執事たちの上の方の人間の一人ということかな?

「彼には今まで、私の指示を受けていただいていたので昨日まで外出していたのですが、昨日戻ってまいりまして。それで新しくアレクシスさんの護衛および執事を務めていただくことになりました」

 護衛?護衛は必要ないと思うんだけどな。多分俺、じぃやさんクラスよりも強いよ?

「まぁ、実際は護衛というより監視ですよ。……アレクシスさんは少し目を離すとすぐどこかへ行ってしまいますから」

 シャルロッテさんの笑顔が怖い。

 っていうか言葉が通じてないはずなのに、心を読んでるかのような返答はやめてほしい。

「うふふふふふふふ……」

 こえぇよ!?毛が逆立ったわ!!

「あぁ、そうだ。ドラディオはこんな見た目だけど、執事としては特に書類仕事が得意ですので何かあればお仕事を上げてくださいね?」

 猫に何の書類仕事があるというのか。

 やっぱりシャルロッテさんどこかズレてるな。

 にしても、この筋肉……もといドラディオさんはこの見た目で書類仕事が得意なのか以外だ。

 俺が彼の方を見ると目の合った彼はまたも恭しく礼をしてくれた。

「ふふ、意外?実は彼、ドワーフなのよ?それも世界に5人しかいないエルダードワーフ!ドラディオの実力はじぃやに次いで皇国ナンバーツーといっても過言ではないんだから!」

 なぜマリアゲルテさんが自慢げなのか。

 ふふん、と胸を張って自慢しているのだが、おかげでソースがはねてしまっている。

 それを見た途端、シャルロッテさんが半目になった。

 まーた、怒られるぞー。


 にしても、ドワーフ。ドワーフか。エルフに次いで有名なファンタジー種族。

 一般的なところだと鍛冶が得意で、酒好き。

 エルフと仲が悪くて、低身長だが力自慢。性格は総じて豪放磊落で粗忽ものが多いイメージがある。

 どう考えても書類仕事が得意な執事というタイプではないと思うんだが。

 そういえばさっきエルダードワーフと言ってたな。

 エルダーといえば、元の世界の漫画やゲームでは古とか真祖とか、要は普通の種族より上位の種族に付けられることが多かった気がする。

 5人しかいないとか言ってたな。世界に5人だけの種族か。

 よくよく見ると彼は俺の知っているドワーフのように低身長ではないし、どうもイメージには合わないな。その辺がエルダードワーフとドワーフの違いなのかな?




「ところでドラディオ、例の件はどうなりましたか?」

 食事を終えたシャルロッテさんがドラディオに声をかけた。

 ドラディオはまっすぐに前を見据えて……。

 執事服を着てるから執事とわかるが、こう、改めてみると軍隊の将官のようだ。

「はい、シャルロッテ様。ご報告が遅くなり申し訳ございません。ドーヴィル山脈の麓の森に住むオウガ族の皆様は皇都への招聘にご承知くださいました。あちら様も、此度の魔獣の暴走により、甚大な被害が出ており、村落を維持することが難しくなっておりましたので、快く……ではないでしょうが、協力を得ることはできたかと思います」

 オウガ族?小巨人っていうか、鬼みたいな種族か?

 いや、まぁ俺の知識の外側の存在が目の前にいるしなぁ。

 というより、ドラディオさんよ。それは帰ってきて一番初めに報告しないといけないことじゃないか?

 報連相は大事だよ?

「ご苦労様、ドラディオ。それとごめんなさい。帰ってきたばかりの貴方に別の仕事を押し付けてしまって。そのせいで報告を受けるタイミングが遅れてしまいましたね。こちらの落ち度です。ありがとう」

「いえ、仕事ですので。私の方こそ、お心を煩わせて申し訳ございません」

 姫さんのせいでした。

 すまん、ドラディオさん。ちょっと疑ってしまった。

「オウガ族の皆様は、本日は職人街にお泊りになられるそうです。こちらにいらっしゃるのは明日になるかと思います」

「職人街?何かしてるの?」

 マリアゲルテさんが問いかける。シャルロッテさんに拳骨を食らったようだ。

 マンガみたいなたんこぶが、彼女の頭上にあった。

「彼らは特に鍛冶職人たちの仕事に興味を持たれたようでした。かの森のオウガ族は鉄の製錬に疎いとのこのでしたので、おそらくは物珍しさで見学されているのではないかと」

「あぁ、なるほど。オウガ達の肉体なら鉄製品なんて紙みたいなもんだろうしね~。去年一度、招待されたときに鉄の塊を手刀で切断したのは見事だったわ。あれをマネして骨折しそうになったのよ。リリアーノの回復魔法がなかったら危なかったわ」

 マリアゲルテさんはおバk……もとい少し思慮が足らないみたいだ。

 普通に考えたらわかりそうなものだが。

 ちなみにリリアーノというのはシャルロッテさんの後ろに控えている胸の大きなメイドさんだ。シャルロッテさんの専属世話係らしい。

 ちなみにマリアゲルテさんの後ろに控えているのはカテーナさんという。彼女の専属メイドだ。彼女は俺がコルセットを引き裂いてしまったメイドだ。

 というか、回復魔法なんてあるのか。俺も使えるようになるのかな。

「とんでもございません。しかし、あのような無茶は今後はご自重ください。私の回復魔法は修復ではなく代謝の活性化ですので、すぐに治るというわけではございませんので」

 回復魔法にもいろいろあるみたいだ。

「ドラディオ様。一応、お食事とお部屋はご用意しておりますので、いつでもいらしてくださいとお伝えください」

「承知いたしました。後ほど使いを出しましょう」

 それで話は終わったようだ。

 ドラディオは俺を抱え、食堂を後にしようとしている。


 いや、ちょっと受け入れそうになったけど、これはいらんわ。

 抱えられるなら女の子に限る。

 が、逃げれない。いや、本気でやれば逃げられるだろうけど……。さすがにちょっとなぁ。けがとかさせたら大変だし。

 しょうがない。今回は受け入れるとしよう。



 翌日、シャルロッテさんとドラディオさんと一緒にオウガ族と面会をした。

「皇女陛下、まずは昨日、直接面会にこれなかったこと、申し訳ございません。この度は私共を受け入れていただき、誠に感謝しております」

 オウガ族のリーダーと思われる男が平伏している。

 俺の想像していたほど、大きくはない。

「頭をお上げください。こちらこそ、我々の提案を受けていただき、感謝しております」

 提案というのは昨日言っていた招聘のことかな?

 村が魔獣の被害にあったって聞いたけど。

「城下の職人街はどうでしたか?」

「はい、とても素晴らしいものでした。あの時にあのような装備があればと思うと、少々悔しい思いをします」

「そうでしたか」

 シャルロッテさんは少し悲しそうに目を伏せたあと、すぐにまっすぐ彼らを見た。

「お悔やみ申し上げます。しかし、今日からは貴方方も皇国の臣。悲しんでばかりはいられなくなるでしょう。オウガ族の力と技、

 頼りにしていますよ」

「は。我らの力、如何様にもお使いください」

 その言葉を聞いて、シャルロッテさんはホッとしたような表情を見せた。

 一応、公務だろうから気を張っていたのかな?


「ところでシャルロッテ様」

「なんでしょうか?」

「我らの村に神代の頃より伝わる村の守り神の像がございまして、こちらに来る際持ち出せればよかったのですが、あまりに巨大なため放置せざるを得なかったのです」

「守り神?」

「ぜひそちらを献上いたしたく。……といっても元は皇国の土地にあったものではございますが……」

 その言葉に、シャルロッテさんは少し考えるように目線を落とした後、

「いえ、感謝いたします」

 と答えた。

「つきましては人を少々、お借りできれば」

「わかりました。ドラディオ。土木に秀でたものと、荷馬車の準備をお願いします。人選は任せます」

「かしこまりました。早急に手配いたします」

「ありがとう」

「ドミニク殿。人を手配いたしますが、どの程度ご用意いたしましょう」

「ドラディオ殿。そうですね……。オウガでも持ち上げるのに20必要だったとの記述がございました。只人であればその倍は必要かと」

「では50人、力自慢を用意しましょう。案内役はドミニク殿がご参加でよろしいですか?」

「謹んでお受けいたします」

 なんだか、話がまとまったようだ。


 それにしても、守り神の像か。

 俺も少しだけ、興味がわいてきた。



 ………あの女神の像だったらぶんなぐってやろう。

戦争中にこんなにのんびりしていていいものなのだろうか。

オウガはこの世界では魔物ではなく魔族です。

魔族は複数種族の総称です。

この国のオウガは50人程度の規模で長年村を形成し、山賊や魔獣を狩る代わりに、ある程度の自治権を得ていました。

オウガの招聘はシャルロッテの政策の一つでしたが、強制ではなかったためオウガは断っていました。

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