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17-5EX.公爵ヘンリー ソウリュウ姉妹

皆様お久しぶりです。まだ少し残っていますが、いろいろと片付いたので徐々に復帰戦をしていきます。

次回はまた少し時間を頂いて投稿する形になると思います。

グレイ総大将の対アルトランド防衛線はしばらく先になります。ご了承ください。

今後の予定。①浪漫の様子②ヴィゴーレの様子③温泉街の様子④戦争。

順番は前後する可能性がありますのでご了承ください。

「どうしましょう、アーフィア。思ったよりも身体が細いわ」

「えぇ。思った以上にヒョロヒョロだわ。メーフィア」

「「どうしましょう?」」

「……すみません、公爵閣下。こういう娘達でして」

 ソウリュウ伯爵が頭を抱えて申し訳なさそうに呟く。

「ははっ……。ま、まぁ。個性ですよ個性」










 なんともはや。

 癖の強いというか、なんというか。

 この双子、アーフィア・ソウリュウとメーフィア・ソウリュウはソウリュウ伯爵の亡き次男の忘れ形見の娘らしい。その為、伯爵の年齢に比べて少し若い。

 伯爵は弟と仲が良く、彼ら夫婦が不慮の事故で亡くなった後、まだ幼かったこの双子を引き取ったそうだ。

 伯爵の実子たちとも仲が良く、本当の兄弟姉妹のように育てられたらしい。

 また、彼女たちは母方の血を色濃く継いでいるのか、ソウリュウ伯爵支配下の村の名士の中でも美人と有名だった娘を奥さんに似て美人姉妹と結構話題になっていた。

 双子でよく似てるんだけど、髪の色と目の色が違うので二人を見間違えることもない。


 アーフィアさんは少し暗めの髪に赤い瞳。

 メーフィアさんは明るめの髪に青い瞳。

 あと、意図的になのか、髪が左右対称だ。


 まぁ、それ以外はそっくりなんだけど。

 正直、髪と目の色を合わせられたら見分けられる自信はない。

 うわぁ。そう思って二人を見てみると益々そっくりに見えて来た。

 ちなみに、うちの次男であるべリオフェス兄さんとも一度縁談の話があったようだが、その時は先鋒の年齢と兄さんの方があまり乗り気でなかったこともあり、流れたようだけど。

 っていうか、その頃って六年前だから二人も十歳にもなって無い頃じゃ……。




「どうしましょう、アーフィア。公爵閣下にいやらしい目で見られているわ。まるで身体の隅々まで凌辱されてるみたい」

「そうね、メーフィア。これは私達を権力で屈服させることを楽しみにしている目ね」

「違います!?ってすみません、伯爵」

 トンデモナイことを言い始めたので思わずツッコミを入れてしまった。

 マナーとしては大分失礼なことなので伯爵に謝っておく。

「いえいえ、こちらこそ申し訳ありません。こういう娘達でして……」

 ソウリュウ伯爵が再び頭を抱えた。

 ソウリュウ伯爵も苦労しているんだろうなぁ。

「アーフィア、そういえば公爵閣下は陛下の元で魔法兵をされていたそうよ」

「メーフィア、きっとこの時の為に皇都で女性を虜にする魔法を学んできたのね」

「いや違うから!?」


 こりゃ、ソウリュウ伯爵も大変だ……。







「それで。気になった方はいらっしゃいましたかな?公爵閣下?」

 お見合いを終えてゆっくりしていた僕にヒルトンが声をかけてくる。

「ははっ、そう簡単に見つかったら苦労はないでしょ」

「そうですか、それは残念です」

 わかってるくせに……。

 でもまぁ、印象、という意味で言うなら、最後に会ったソウリュウ姉妹のアーフィアさんとメーフィアさんだろうか。

 あのあと、結局何度か似たような不毛なやり取りを続けて精神的にドッと疲れた。

「いっそのこと、全員嫁にもらうというのはいかがでしょう?先代閣下も奥方様は数人娶っておりましたので」

 そうなんだよなぁ。

 僕らの母さんは三人いる。

 まぁ、昔からの家の方針でこの三人には上下はないし、全員正妻扱い。

 僕ら兄弟の中に母親が違うって言うのはあんまり気にしてないんだけど。

 ちなみに、僕と母親が一緒なのは長女のエカーテと三男のクランクだ。

 ただ、お見合いした全員となると、その数は十人。全員はどう考えても無理だ。

 しかも、全員が爵位持ちの人にゆかりのある女性達。

 政治的にも誰か何人かとなると角が立つ。

 それならまだ、一人だけの方がマシだ。

 そういう意味では、ソウリュウ姉妹のどちらかというのも無しだな。

 といか、複数の人を娶るには娶った人同士が仲良くないと絶対成立しないと思う。

 少なくとも、僕はバチバチにやり合っている子達と家族を形成するのは無理だと思う。

 ああいうのは聖上みたいにできる人がやればいいと思う。

 ……体力的にも多分持たないしね。

「……とりあえず、今日のところは休むよ。申し訳ないけど、後片付けお願いね、ヒルトン」

「承知いたしました。……ごゆっくり、お休みくださいませ。公爵閣下」


 はぁ、もう。疲れたなぁ。




 寝室に入ると僕は羽織っていた上着を脱ぐ。

 堅っ苦しいんだよなぁ。コレ。

 重いからすぐずり落ちるし。

 はぁ。


 この外套は皇国の公爵が身に着ける特別なものだ。

 各公爵が公務をするときは基本的に身に着けておくのがマナーらしいけど。

 とにもかくにも重い。

 ヴィゴーレさんとかロウフィスさんや先代公爵たちのように筋肉とか体格とかが恵まれてると見栄えもいいんだろうけど。

 ひょろっひょろの魔法兵じゃ全く見栄えが良くない。

 とりあえず、外套は掛けておこう。

 ……前はメイドたちが脱がしてこようとしてきたけど、流石に拒否した。

 というか宿舎と違い過ぎて最初の方はかなり戸惑った。

 まぁ、魔法兵は他の兵より優遇されてるからまだましだろう。

 なんせ一般兵用の宿舎は四人部屋だし。

 魔法兵は一人部屋だしね。

 宿舎ではなく皇都に部屋を借りたり買ったりしている兵士もいるけど。

 そういう兵士でも宿舎は利用できるから宿舎の部屋って結構入ってる人が多いんだよね。

 そんな環境からのこの屋敷の専用部屋。

 戸惑わないわけがないよね。


 はぁ。さっさと休も。

 僕はシャツを脱ぎながらベッドに近づいていく。

 そして、ベッドの目前まで近づいたその時。

 ……うん?

 なんだろう。何か違和感が。

 僕は何か違和感を抱きながら布団の端に手を掛ける。

 そして布団を思いっきり引っ張り上げた!

「ちょ!?何してんの君たち!?」

 そこにはつい先ほどソウリュウ伯爵が連れて帰ったはずの二人の少女の姿があった。

「大変よ、アーフィア。公爵閣下に見つかってしまったわ」

「えぇ。大変ね、メーフィア。これで公爵閣下は私達を手に入れる正当な理由を得てしまったわ」

「そんなことしません!」

 与えてしまったわ、じゃないよ!?そういう言い方をするなら、そもそも侵入しないでよ!?

「……えっと、アーフィアさん、メーフィアさん。なんでここに居るの?っていうかどうやって侵入したのさ。ここ、まがりなりにも公爵の本拠だよ!?」

 申し訳ないけど、彼女たちのような典型的な箱入り娘たちが簡単に侵入出来るとは思えない。

 ってことはもしかしてメイドか警備に手引きした人が居るのか?

 ひょっとして裏切者がいる?

「ヒルトン様が手配してくれましたわ」

「メイドの皆様が手伝ってくださいましたわ」

「おぉう……」

 まじかぁ。

 ヒルトンに、メイドが全員グルかぁ。

 全員、後で話しを聞かないとな。

「で、なんで二人は僕の寝室に侵入してるの?」

「なんでと言われましても、ねぇ?アーフィア?」

「そうね。そう言われても困るわね、メーフィア?」

「「既成事実を作りに来たとしか」」

「ド直球に何を言ってるんですか!?っていうか、誰か!というかヒルトン!ちょっと来て!」

 僕はとんでもないことを言い始めた姉妹にツッコミを入れつつ、扉に向かって叫ぶ。こういう時は叫んだ方がきっと穏便な結果になるはずだ。

 僕は思わず扉を開けようとする。

 しかし、当然というかなんというか。ガタン、という無情な音を立てて扉に衝撃が走る。

「ちょっ!?なんで!?」

 ってそうだった!メイドとヒルトンがグルだった!このくらいのこと簡単にできるわ!

「大変、アーフィア。公爵閣下が混乱されているわ」

「そうね、メーフィア。解放して差し上げたほうがいいわ」

 ちょ、寄らないで!危ないから!

 嫁入り前の娘たちにそういう噂を立てちゃうような行為は絶対ダメだから!

 だから近寄らない方が良いんだって!





 助けて!ヒルトン!!





















 ~とある執事の私室~


「あの?よろしかったのでしょうか?ヒルトン殿?あの娘たちを向かわせて」

「えぇ、問題ありませんよ。閣下ももう少し積極的になっていただけると助かるのですが」

 私は伯爵と私室でワインを飲み交わします。

 このワインはイスカのあたりで作られたもので、つい先日までは普通に手に入っていたものなのですが。

 まぁ、別に銘柄にこだわっているわけではないので良いのですが。

「まったく、公爵閣下にも困ったものです。ご自身の婚約者ぐらい、さっさと決めてしまわればよいものを。しかし、無理を申しました。申し訳ございません」

「いえいえ、私共としても願ったりなことでした。公爵家との縁をより強固に出来たのですから」

「えぇ。しかし重ね重ね申し訳ありません。元から婚約者候補だったとはいえ、彼女達からすれば急な話だったでしょう?それに、伯爵閣下の心境としても……」

「いえ……。確かに彼女たちを預かってからというもの我が子と同じように育ててきました。思うところもなくはないです。しかし、これも名誉なこと。彼女たちも理解してくれるでしょう」

 ふむ、さすがは若くして爵位を継がれた経験のある方の言っている重みは違いますね。


「ド直球に何を言ってるんですか!?っていうか、誰か!というかヒルトン!ちょっと来て!」


 歓談していた私たちの耳に、公爵閣下の悲鳴にも似た叫び声が届きました。


「やれやれ。()()、上手くいったようですね」

「いや、あれ己凄い叫び声ではないですか?もしかして公爵閣下は女性が苦手なのでは?」

「いいんですよ、そう気を使わなくて。正直にヘタレ野郎と申してやれば」

「いやいや、流石にそれは……」

「もう少ししたら、噂好きで有名なメイドのヒルマル男爵の三女と侍女のミステルを向かわせましょう。公爵閣下も彼女たちの事は知っていますから、嫌でも彼女たちをもらい受けるでしょう」

「そういう物ですかね……。しかし、ヒルトン殿……」

 うん?

 なにかソウリュウ伯が言いごもる。

 非常に言い辛そうにしているのはなぜでしょう?


「えげつない策を考えられますね……」




 そんな、呆れたような声を聴きながら私はグラスに残ったワインをあおり、公爵閣下の元へと向かう準備を整えるのでした。

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