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2-0.女神の失敗

すみません。作品の前日譚です。

作中で女神さまは何度も同じことを繰り返しますが、意地になってそれ以外のことについて考えるという思考を放棄しています。

 失敗しました。

 仮眠をしている間に、現地ではかなりの時間が経過してしまいました。

 これはまずいです。早急に対策を練らなければなりません。

 ここは後先を考えていられません。

 ちょっといじくりましょう。

 えっと、あちらの世界……中世ファンタジーの今の時代では……。

 都合のいいことに、『テンプレート』がいる時代でした。

 ……しかし、彼は……。

 うん。無理。信託を与えたら確実に世界は火の海になります。

 却下で。

 そうなると、どうしましょうか。


 いったん考えるのをやめました。

 現代系の世界ではどうでしょうか。

 ……ものの見事に人材がいません。

 っていうか、妙に魔素が少ないんですけど?これ一体どうなってるんですか?

 もしかして、私が仮眠している間に何かあったのですか?


 調べてみると、とんでもないことがわかりました。

 流れた種子を追って、別の種子が流れ込んでいました。

 その種子ががっつり魔素を使い込んでくれたようです。

 なんと言うことをしてくれたのでしょう。

 これでは魔素を使ってサクッと解決してもらうことは難しくなりました。

 つまり、解決に使う人材も魔素に頼った人間ではだめだということです。

 これは困りました。


 ふと、私は手元を見ました。

 そこにはいわゆるラノベというものがあります。

『転生最強チート男の世界救済物語』

 それは最近、再流行をはたしたジャンルの小説でした。

 ある転生した男が、神様からもらったチート能力を駆使して中世ファンタジーの世界で英雄になるお話です。

 あるシステムのおかげで、新規参入者が参加しやすく、最近はかなり数が多くなったジャンルです。


「馬鹿馬鹿しい。大体、別の世界の人間がその世界で万全の活躍ができるわけ……」


 そのとき、私の頭には名案が浮かびました。

 ファンタジーの世界で魔法に頼らない戦いを経験している人間を現代に送り込む。

 逆に現代から魔法を使えない人間を中世ファンタジーの世界に送り込む。

 そうすれば最低でも現代では有用でしょう。経験がものを言いますからそれなりの人材を送り込まなければいけませんが。

 ファンタジー世界の方では今後のために一度今溢れている魔素を魔元素に変換して保管すれば今後の世界の進化に役立ってくれるでしょう。

 どうせ本人はまともに魔法なんて使ったことないでしょうから、使ったとしてもたかがしれてるでしょう。

 なので全体的な魔素量は落とさずに次の世代への進化に必要な魔元素を貯めることもできます。

 我ながら良い案だとおもいます。

 がっつり使いすぎなければ良いのですから。





 失敗しました。

 人選を誤りました。

 いえ、現代側に送り込む方はまだよかったのです。

 神を信じる信心深い方々でした。これなら放って置いても、いずれ条件を満たしてくれるでしょう。

 問題はファンタジー側に送った人間です。

 私は二組の人間を転移させました。

 協力して問題解決に当たってくれればと思ったからです。

 ファンタジー側からはエルダードワーフとフィルボルを送り込み、現代側からは少年少女を送り込みました。

 しかし、少年少女は、

「好きにやらせてもらう」

「貴女のことばを鵜呑みにはできない。自分の目で確かめさせてもらう」

 と、こちらの話を全く聞こうとしません。

 全く、世界の危機だというのに何てことでしょうか。

 仕方ないので強引に行ってもらうことにしました。

 現地にいけばとやかくいっていられなくなり、こちらの話にも耳を貸すでしょう。


 あ、もちろん最低限適応できる力。

 いわゆるチート能力は与えてありましたよ。 


 そこまではサービスパックのうちです。


 しかし、このとき内心、私は怒っていました。

 私の世界の人間が私に逆らうなんて!!

 結果これがいけなかった。転移させた先が違う時代になってしまいました。

 失敗失敗。

 しかも、二人は本当に好き勝手に振る舞い割と大暴れしてくれちゃってます。

 不味いです。非常に不味いです。

 予定になかった帝国が出来たり、他の冒険者の獲物になる予定だった魔獣が倒されたりしてしまいました。

 なんとか使命を果たしてくれれば良いのですが……。それは多分絶望的でしょう。

 こうなったら……。もう一回交換転移をして次の人材を送り込みましょう。


 私は次なる人材を送り込むべく、準備をしました。

 前回は少年少女を送り込み失敗しました。

 今度はそこそこ年齢を重ねた人物にしましょう。

 現代側にも送った方がいいでしょうか?うん。送りましょう。がんばってくれている彼らに新しい仲間を用意してあげましょう。




 失敗しました。

 人選を誤りました。

 なんですか!あの色ボケは!

 もう無視です!無視!

 まさか私を口説いてくるなんて!


 しかしこの後、彼は村娘を口説いたあげく、その村娘をかばって死んでしまいました。

 完全に誤算です。

 彼には別の何かを考えてあげましょう。


 現代に行った彼の方は……。

 あ、順調に前に送った彼らと合流できたようですね。

 よいことです。

 ってあれ?

 気づかなかったけど、彼って割と重要ポジションでした。

 あー。しまった。これも失敗です。

 うん、まぁほかの失敗に比べたら軽い方です。

 なんでこっちは放置でいいかなと。


 あー。次を送る準備でもしようかしら。





 今度は無職の青年を選びました。

 無色で朴念仁、性に対して興味の出てきた年ごろ。でも自分からはぐいぐいいけない、チェリー野郎。

 理想的な主人公です。

 がんばったらちょっとくらいご褒美を上げてもいいでしょう。

 その辺はスキルで何とかします。


 逆に現代に送る方は……。

 三人ほど優秀な人材を送ったので適当に選別しても大丈夫でしょう。

 あー、一人目が作った帝国の影響を大きく受けた彼女にしましょう。

 ちょっと性格に問題がありますが、魔力に頼らない戦闘をする最低限の条件を満たしています。

 うん。我ながらよい人選です。


 失敗しました。

 なんと彼は転移直前に躓いて彼女の胸を揉んでしまいました。

 当然、彼女にぶんなぐられて死んでしまいました。

 うん。なんかごめんなさい。

 さすがにかわいそうなので転生させてあげます。

 ただ、使命はきっちりやってくださいね。

 ですが、転生ともなると成長するまで時間がかかります。

 ここは次の手を考えておくべきでしょう。

 次は失敗しないよう、人選をしなくては。



 失敗しました。

 なんか現代まで進んだ文明の人はこっちの話を聞いてくれません。この世界はこれがデフォルトになってしまったのでしょうか?

 送った方を一言で言うと「浪漫厨」

 なんか浪漫に生き、浪漫と死ぬとか言ってます。

 秘境を求めてって、そちらの世界は秘境だらけですよ?

 はい。もう諦めました。

 だってこの方、何を言っても「浪漫が~」と話が通じないんです。頑張って途中まではゲームのナビゲーション妖精の様なことをしていましたが、流石に限界です。一人でやるには無理があります。しばらく放置の方向で。


 あ、現代に送った子はこれまた良い子でした。まぁ、あちら側は変に擦れた子が少なくて助かりますね。信心深い方も多いですし。



 さて、ここまで反省をもとに次の転移者を決めようと思います。

 正直、何度も失敗しておいてまだ転移させるのかと自分でも思いますが、もうこうなったら意地です。

 意地でも転移者に問題を解決してもらいます。


 まず、こっちの話を聞いてもらえる、自己主張の弱い方。これは絶対条件です。

 あと、魔素の解決案として次の転移者は魔物の身体を使って子孫を増やしてもらうことにします。丁度、数千年前に家猫型の魔物が絶滅していたのでかれらの復活ついでにこの世界では誕生させていなかった、獣人を作らせることにします。

 まぁ、人間と交配して貰えれば直ぐにできるでしょう。ちょっと運命とか色々いじらないといけませんが、私が逐一見て修正を行うより遥かにましです。

 なので性に関して一般レベルの知識と経験を持つ子を選びましょう。奥手すぎず、積極的過ぎない子を選ばないとまた気づいたら絶滅とか繁殖しすぎとかになられても困ります。

 何事もバランスが大事です。

 さらにサポートも充実させましょう。とりあえず転移先はこの世界一番の伝統を持つ……あれ?なんか妙に寂れてません?なぜ?まぁ、細かいことは良いでしょう。

 とりあえず、ドリス皇国に送るものとします。

 こちらと現代に送った人物たちと情報交換できる体制も整えましょう。

 もちろんチート能力も与えましょう。ついでにこれとこれも許可を出しちゃいましょう。

 このくらいなら、許容範囲内です。


 こうして私は6組目の転移者を選定したのでした。


 ……なお、今回は珍しく、現代側に送る者の方が問題がありました。

 全く、人の下着を覗いて興奮するとか、なにごとですか!!

12/26 追記

『テンプレート』は女神の世界で世界を作る際に使われる設定集のようなものと思ってください。

RPGツク〇ルやTRPGでいうところの初めから作られているサンプルキャラやNPCのようなもので、大雑把に歴史を操りやすくするために使われるものです。もちろんサンプル通りの動きではなく、状況により変化しますが、大体この時代にこんな感じの人がいる~程度の感覚です。

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