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15-11.ディスマンとエルダーリッチー

遅くなり申し訳ございません。

 えっと、うん。なんで居るの?

 こいつ、俺の夢に出て来た奴だよな?


「お初にお目にかかります、聖上。私の名はルド・デュ・エスティーユ・グラジオ。皇都の三学園で歴史学の講師をしております」

 ルドが俺に名乗ってくれるが……。

 正直、手の中にいるその人形の方が衝撃的過ぎて全然頭に入ってこない。

 あぁ、くそ。

 やっぱりバロンからテレパシーのスキルを教わっとくんだったな。

 テレパシーのスキルがあればこいつとコミュニケーションが取れたかもしれないのに。

 いっそのこと、この場で何も考えず喋ってやってもいいんだが、流石にルドの目の前で実はそいつ魔物だ、なんて言うのはダメだよな?

 いやしかし。

 見れば見るほど精巧に作られた人形だな。

 夢で実は魔物だって知っていることを除いても今にも動き出しそうな見た目だ。


 この人形っていくらくらいするんだろうな?

 というかこの世界の人形って何製なんだ?

 流石に塩ビじゃないよな?

 土?

 いや、木製か?

 あの髪とか瞳は何製なんだろうか?

 しまったな、夢の中で聞いておけばよかった。


「……あの?聖上?」


 比較的どうでもいい事を考えていた俺の耳にルドの声が届く。

 暫く黙っていた俺の事を不審に思ったんだろう。

「あ、あぁ。すまない。ちょっと考え事をしていたよ」

「は、はぁ。そうですか」

「ちょっと聞きたいんだけど、その人形は?」

「これですか。私の娘です」

 む、むすめ……?

 うん、ごめんよくわからん。

「こ、こら、ルド。またそんなものを持ってきていたのか?申し訳ありません、聖上。こいつは少々……いえ、結構な変わり者でして」

 変わり者……、ねぇ。

 それにしても、こいつとコミュニケーションが取れないと何ともだなぁ。


 ってそうか。

 コミュニケーションが取れる奴を呼べばいいのか。

 えっと……。

 ふむ。影魔法の情報によると、今は墓地エリアに居るのか。

 問題は言い訳をどうするかだが……。

 まぁ、なるようになるか。


「ハマー男爵……だっけ?別に大丈夫だよ。別に気にしてないから」

「はっ!お心遣い、ありがとうございます」

 いや、かったいなぁ。

 流石、生粋の貴族。

「とりあえず、婚約の件はわかったから。ルドも好きにしてくれて構わない。ところで、俺も紹介したい人物がいるんだけど、構わないかな?」

「……?は、はい。それは勿論」

 よし、後は成り行きで。

「ドラディオ。ちょっと」

「はい」

 俺はドラディオにジェスチャーして耳を寄せてもらう。

 ひそひそ話にはこのぐらいの距離じゃないと。

「悪いけど、バロンを呼ぶから。あと、俺は少し黙っちゃうと思うから、なんとかハマー男爵とルドと話を繋げておいて。そう長い時間じゃないから」

「?はっ。かしこまりました」

 ドラディオがそういうと姿勢を戻す。

 え?結構無茶ぶりしたつもりだったんだけど……?

 じぃやさんも大概だったけど、ドラディオもそんなあっさり言えるってことは結構大概な人なのかな?




「じゃ、話もまとまったところで呼ぶぞ」

 俺はパチンと指を鳴らす。

 実は指を鳴らす必要はないんだけど、なんとなくかっこいいから鳴らしてみた。

 実際、今から使う魔法は転移魔法だからこっちの方が雰囲気が出るだろう。

 そうして俺の魔法が発動する。

 そこに現れたのはバロンだった。

 俺から見るとバロンの後姿が見える状態だ。


「なっ!?」

「えっ!?」


 急に目の前に現れたバロンに二人が驚く。

 まぁ、そりゃそうか。

 転移魔法なんて見る機会ないだろうし。

 急に目の前に骸骨が現れたら驚くのも無理はない。

(ん?なんだ?王城?)

「おーい、バロン!こっちこっち!」

 俺はバロンに声をかける。

 するとバロンはゆっくりと振り向いた。


 振り向いたバロンの鎧や剣には結構な量の血が飛び散っていた。

 あ、二人が驚いていた原因はこれか。

 こりゃ、ちょっと悪いことしたな。


 いやしかし、血まみれの骸骨って結構なホラーだな。







(それで、どうしたんだ?急に呼び出して)

(あー、ちょっと頼みがあったんだけど。その前に……その血、どうしたんだ?)

 俺はテレパシーのスキルで声をかけて来た。

(あぁ、これはついさっき不届きものを始末したところでな)

(不届きもの?)

(どうも最近、情勢が不安定なせいか、あまり素行の良くない連中が流れて来てるらしくてな。先ほども墓を荒らしに来た連中を始末していたところだ)

 し、始末?

 ってかまた墓荒らしが出たのか?

 こんな日の高いうちから?

(シーが先日亡くなってから監視の手が足らなくてな)

 シー?

 シーって誰だっけ?えぇっと……。

 あぁ!墓守の三人衆の一人か。

 そうか亡くなったのか。

 まぁ、話を聞く限り相当な御高齢っぽかったからな。


(それで、俺はどうしたらいいんだ?)

(あぁ、それなんだけど、テレパシーでそこの人形に話しかけてみてくれないか?)

(人形?)

 バロンがルドの方を向く。

 そちらではドラディオがハマー男爵と何かを話していた。

(あぁ。なるほど。魔物なのか。よく気付いたな)

(そういうこと。ちょっと、コミュニケーションを取りたいからテレパシーで連絡を取ってもらえないか?)

(わかった。少し待て)


 そして、少しして……。

(繋がったぞアレクシス。今からお前と繋ぐ)

(あぁ。頼む)

 そういうと、俺の頭の中にはバロン以外の声が響いてくる。




(お前かぁぁぁぁぁぁ!?)

(うるせぇぇぇぇぇ!)

 大声を出されたので思わず大声で返してしまった。

(間に挟まれている俺が一番うるさく感じていると思うんだ)

 少し、バロンの言い分に同情してしまった。

 ……すまん。

(いや、もう何してくれるんだ!?こんな危ないところに宿主を呼び寄せて、しかも話しかけてくるなんて!)

(ん?こんなところ?そんな言うほどの場所じゃないだろ?ここ、皇城だし)

(ちょ、貴様。馬鹿か!?こんな魔窟のような場所……)

(魔窟?)

(あ、あぁ。わかる、分かるぞ。姿は見えないもののここには強力な魔物がうじゃうじゃ居る。それにお前だ)

 え?俺?

 まぁ、確かにこの城や周辺には魔王がノブナガ、ヘリオン、フェニクス、ゴルディと魔王が4体……、ってそうか。昨日の夢にこいつが出て来たとき、『一番魔力が高い奴』とかって言って俺の夢に入って来たんだっけか。

 こいつはもしかしてヴィゴーレのように魔力を感知する能力を持っているのかもな。

(まぁ、まぁ。ここは一応俺の管理下にあるから、安全だぞ)

(そ、そうか……。しかしこれ程の魔窟だとは……。このリッチー……いやエルダーリッチーか。ともかく、この男も相当な手練れ。我は現実世界では無力なのだから嗾けないでくれよ)

 お、おぅ。

 ってかあれ?バロンってエルダーリッチーって種族だっけか?

 リッチーじゃなかったっけ?

 ためしに『鑑定の魔眼』を発動してみると確かにそこにはエルダーリッチーと表記されていた。

 見た目ほとんど変わらないんだが。

(バロン、お前。なんかエルダーリッチーとかっていう種族になってるみたいなんだけど、何か心当たりはあるか?)

 俺の言葉にバロンが少し考えこむようなそぶりをする。

(ふむ、確かに最近体の調子がいいが……。いや、待てよ?)

 何か心当たりがあるのかバロンが考え込むようなそぶりを見せる。

(……もしかしてだが、あの執事や少年のように、お前の魔力が俺に影響しているのかもしれないな)

 あぁ、なるほど。ないとは言い切れないな。

 確かにシロとシュバルトディーゲル、それにフェニクスは俺の魔力が影響して人型になった思われるからな。

 うーん。

 ひとつひとつ潰していくしかないか。

 めんどくせぇ。


(な、なぁ。我はもう帰ってもいいか?この魔窟では我も体調が悪くなりそうなんだが。宿主の方の話も大詰めになってきているみたいだし)

 そう言われてドラディオの方に耳を向けると、なんだか再雇用とか、学園とかそんな話が聞こえて来た。

 ……本当に二人と話して時間を稼いでいたのか。

 はてさて、何の話をしていたのか。

(とりあえず、また今度話そう。お前の宿主がいないときに。一応聞くけど、宿主……ルドにはお前が魔物な事は内緒なんだよな?)

(当然だ。飯が食えなくなるからな)

(了解。考慮する。その代わり、何かあったら手伝ってほしい)

(わかった。契約成立だ)


 そういった瞬間。

 俺の魔力が急に沸き立ち、リリエルの方に流れていくのを感じた。

 あれ?これって……。









 ぴこん。





 ディスマンのリリエルを配下にしました。

 以下の魔物に魔力の分配を行います。

 個体名、リリエル、以下群れの形成者『ディスマン』




 以下の称号を獲得。

『五体の魔王の主』。




 あぁ、うん。

 やっぱり。

 なんかこいつの主というか上位存在になってしまったようだ。

 まぁ、いいか。

 これだけ居たら今更だし。










 なお、俺が称号の部分に気づきディスマンが魔王であることに気づいたのはしばらく後になってからの話だった。

補足です。

ディスマン、夢の中では無敵の力を発揮できる種族。夢から人の潜在意識に介入し、操ることもできる。その人物は違和感すら感じられない。このことから夢を支配領域として持つ魔物として魔王に昇格済みであるが、リリエル本人はそのことに気づいていないため人間社会にも魔王として認識されていない。現実世界では動ける程度の木製人形と何ら変わりがないため、最弱といって良い。

なおリリエルは木製人形に布や綿、人間の髪の毛などを縫い込んだもので、数十年前に他の姉妹共々、ある天才人形師と呼ばれた技師によって作られた。なお、姉妹の一人は浪漫が持っていた『敵意を感知すると教えてくれる人形』である。


と、いう設定があったりなかったり。

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