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2-14.月の明かりの降る夜に

 その日の深夜、俺は自分の部屋に帰ってきていた。

 姫さんたちはまだエフィーリアの家にいる。

 後処理はじぃやさんがやってくれてるようだ。


 やっと静かになった……。

 今日は進化やら冒険者ギルドやら反乱やらで疲れた。

 超疲れた。

 今すぐにでも寝たい気分なんだが、目が冴えて眠れない。

 あとどうも体に違和感がある。

 なんというか魔力?が体に充填されている感じだ。

 いや、なにいってんだこいつ?って気持ちには俺もなるんだが。なんというか、こう、体の中が満たされてる感じ。


 まぁ、それはさておき。


 俺は窓枠に座って空を見上げる。

 月は青、赤、緑に輝いている。あれ?この前より赤い月がちょっと大きい気がする。

 ん~?もしかして青い月の周りを公転してるのかな?

 今度、エフィーリアさんに聞いてみよう。

 あれ?中世って地動説って認識されてたんだっけ?

 エフィーリアさんなら聞いたとたんにつかまるってことはないだろうけど、一応聞くときは用心して聞かないとな。

 って、そもそも言葉通じなかったわ……。

 俺が窓枠でそんなことを考えていると突然、頭のなかにりりりりり!と昔の黒電話のような音が流れた!

 ビックリするわ!!なんなんだよ!

「多夢和殿でござるか!?」

 黒電話の着信音の後に男の声が聞こえた。この声は……エルフの侍……アスティベーラか。

「はいはい、こちら多夢和ですよ」

「おぉ!多夢和殿!お願いでござる!何とかしてくだされぇ!」

 ちょ、いきなり叫び始めた。一体どうしたのやら。

 なんか足にしがみ付いて泣き叫ぶ姿が幻視されてしまった。

「どうしたんだよ!?いったい、なにがあった?」

「体を落ち着ける場所がないのでござるよ!」

 一気にからだから力が抜けた気がする。

「家を借りに行けば許可証を求められ、金は使えぬと言われ、橋のたもとに用意した寝所は壊され追い出されてしまったでござるぅぅぅ!」

 まぁ、現代日本ならそうだろうな。許可証って言うのはもしかしてビザか何かかな?橋の下ってこいつ、ホームレスしてたのか。

 金っていうのはこっちの金か?

「そうなのか。まぁ、家の件は仕方ないとして、金はこっちの金か?」

「うむ。殿から頂いた俸禄を貯めて服に縫い付けて入れておいたものでござる。金貨で60枚ほどある」

 うーん。それをそのまま使えると思ったのか。そりゃ無理だ。

「まぁ、落ち着け。とりあえず、こっちの世界の金はそっちでは使えない。ただ確認するけど、それって金貨なんだよな?」

「うむ。それは間違いない。基本的に拙者たちの世界では、製錬して生成しているので、こちらの世界のように紙切れではないぞ」

 紙切れって紙幣のことか。まぁ、それなら対処の使用はある。

「じゃぁ、まずはその金を半分だけもって徳川福田駅の北側にある雑居ビルの地下に行ってくれ」

「駅……とは、あの鉄の箱の寄合馬車の待合のことでござるな」

「あぁ、うん。まぁその認識で間違いない。で、そこの地下一階に質屋・幻想館って店があるんだ。そこに行くと多分金貨を買い取ってもらえるから、そこで換金するんだ。俺の紹介だって言えば、多分通してくれるから。運が良ければ高値で買い取ってくれる可能性がある。絶対半分だけにしとけ。あと、手に入ったのは今出した奴だけと言って、次見つかるかはわからないといっておくんだ」

「ふむ。なぜそのようなことを?」

「あそこの店主は珍しいものを集めてるんだ。けど、貴金属や宝石の買取はしっかりやってくれるから、最低でも金の価値分の買取はしてくれると思うぞ。ちなみに、見つかるかわからないっていうのは値を上げるためだ。変に動揺するとばれるから気をつけろよ」

 あそこの店主は5年前からの俺の知り合いだ。当時、付き合っていた彼女が誕生日だったから、ちょっと見栄を張って結構いいネックレスをプレゼントしたんだ。

 でも、彼女は送った次の日にはその店で換金してしまった。

 それがきっかけで彼女とは別れることとなってしまった。

 でも、それがきっかけで持ち込んだ店と知り合うことができたんだよなぁ。

 まぁ、そんな過去は置いておいて。

「ふむ。助かるでござる!とりあえずこれで急場はしのげそうでござるな!」

 あぁ、うん。まぁ、現代で金の価値がどれほどかは知らないけど、そこそこの価値にはなるはずだ。

 と思うとピコンと視界にポップアップが出てきた。


 アイテム名『カムイ金貨』

 レアリティ『☆☆☆☆』

 効果『特になし』

 説明『金を用いて作られた貨幣。カムイ神国で流通している。31.1g。直径30mm。表に帝の紋章、裏に大きな木の刻印がされている。なお、現代では1gあたり、6500円ほどで取引されているので、割といい金額になりますよ』


 おい。最後のほう。

 絶対今付け足したろ、あの女神。


「まぁ、いいや。あと家だけど、よかったら家を使ってくれて構わないぞ」

「本当でござるか!?」

「あぁ、テレビとパソコンくらいしか娯楽もないけど、そこそこの環境だぞ。大家のじぃちゃんにに多夢和から使っていい許可をもらったって言えば、問題なく使えると思うぞ」

 普通に考えたら嫌だと思うけど、ぶっちゃけあの部屋は一人暮らしには広すぎた。

 大家のじぃさんの遊び心で、アパートの2階6室を丸々ぶち抜いている部屋で、俺も実質、キッチンとトイレ、風呂と端っこの一室しか使ってなかった。

 無駄にベランダに縁側っぽいものがあったりもした。

 誰も借り手がいなくて、たまたま安く借りることができた部屋だった。

 そういえばあのじぃさん、俺の名前が珍しいからって異様に俺のことだけ覚えがよかったからな。今思えば、野菜なんかもいっぱいもらったっけ。帰ったらそのことも含めてお礼言っておかないとな。

 パソコンは……きちんとパスワードもかけてるし、仮に見られても秘蔵フォルダはしっかり対策をかけてるから大丈夫か。

「住所は……………。で、カギは……の中の下に入ってるからそれを使ってくれ。できるだけ、汚したり壊さないように使ってくれよ。あとキッチンやトイレは使って構わないけど、端っこの部屋は俺が使ってるから、そこ以外の部屋を使ってくれ。あぁ、テレビは持って行ってもらっても構わないぞ」

「了解したでござる。てれび、とはあの薄い板に人が入っている奴でござるな。ぱそこん、はわからぬが、そちらはそのままにしておくでござる」

「たのんだぞ」

 又貸し賃貸契約ってたしかやっちゃいけなかったはずだけど、又貸しじゃないからいいよね。


 そんな他愛もない話をしていると、別の声が頭の中に響いてきた。

「お二人とも、ご苦労様です」

 この声、あの女神様か。

「おぉ、女神殿か。お久しぶりでござる」

「一週間ぶりですね。今回は何か用ですか?」

「いえ、お二人のご活躍を見させていただいておりましたから、お声かけさせていただいただけですよ」

 なんだ。そうなのか。

「本当に、お二人はほかの転移者達と違って、ちゃんと任務に向かってくださるので、こちらとしても助かっています」

 ん?ほかの転移者達?

「はい、そうですよ。貴方達のほかに5組の転移者たちが同じく転移しました。しかし…」


 話を聞いていると、彼らは割と好き勝手にしているとのことだった。

 詳細は省かれたが、先ほど感じた違和感の正体がわかった。


 先ほど感じた違和感の正体。それは、あの兵士のつぶやいた言葉だった。

「うわぁぁぁぁぁぁ!すみ、すみません!!…………って()()?」

 彼はこの世界では姫さんたちしか知らない『()()』という単語を発した。

 つまり、彼はネコのいない世界でネコを認識したことになる。

 これが違和感の正体だろう。

 今度確認してみよう。


 そのあと、俺たちは通信を終わらせ、俺は部屋に据え付けられている鏡の前に立った。

 やっぱりどう見ても猫だ。猫の体は便利だったが、やはり違和感がある。

 中身はおっさんだもんなぁ……。

「なら、人型になればよいのでは?」

「うぉぉ!?びっくりした」

 この声は女神か。この前も思ったが、いきなり声をかけないでほしい。

「人型になれるのか!?」

 俺の声に女神があきれたように答える。

「それは、私の使命の一つにあったじゃないですか。獣人を作れって。作った後にあなたが長として活動できるよう、あなたにも人型になれる進化先を用意していますよ」

 まじか!?それは助かる。

 正直、このままだと、二本足で歩く歩き方を忘れそうだったんだ。

「では、進化先から『人猫』を選んでみてください」

『人猫』ね。了解。

 俺はさくっと選択し、登録を変更してみる。

 おぉ!?

 ずいぶんと目線が高くなった。

 恐る恐る、鏡を見てみる。


 そこには猫耳で裸のイケメンが立っていた。

 やった!!人の体だ!!

「よっしゃーーー!」

 思わず叫んでしまった。

 顔が俺の者とは違うし、声は俺の者より野太い……、というか渋いがともかく、人の体だ。

 などと喜んでいると、鏡の中の俺の体が光り、目線が元の位置に戻ってしまった。

 え?なぜ?

「あぁ、まだ魔力が人の形になじんでないんでしょうね。しばらく訓練すればもっと長時間、人の姿になれると思いますよ」


 人の姿になれた時間、わずか10秒ちょっと。

 俺は落胆しながら、寝床へとつくこととなった。

遅くなってすみません。ほとんど説明回です。

だいぶ削ったのでちょっと変な文章になっているかもしれません。


補足:人猫という種族は常時人型になることができる種族ではありません。

この世界で常時人型なのは猫人族です。

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