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15-4.神、降臨

 ナガヒデが持ってきた書類のリストを全部見直してみる。

 一応、目録だけ、部屋に持ってきていたのだ。

 皇都の下に作るという新しい町の事はともかく。

 改めて計画の全部を見てみると、結構いろいろと追加事項が出てるな。

 ニヤァーベの里の近くに作る温泉。

 麦以外の作物でリスク分散を目的とした新しい村をいくつか。

 醤油と味噌を生産する村を街道付近に。

 うへぇ。

 やること多いな。

 ん?

 こっちは塩用の村か。

 なるほど、シャトワの町の南に作るのか。

 あの辺は確か直轄領だったな。

 直轄領というのは何らかの理由で他の伯爵や男爵の支配下になくドリス公爵が代官を立てて支配している領土……もっといえば村とその周辺の事だ。

 まぁ、実際は町や村のないところは支配地域下にあるというだけで直接支配しているとは言い難いのではあるが。

 つまりは、森を開拓して新しい村を作ってしまおうというわけだ。


 皇都とシャトワの町の中間地点に交易都市を建設し、新たな街道を整備してハブ都市を作る。

 そこを中心に農作物と近辺の木々を利用した紙生産の村を。


 シャトワの町の南にある広い砂浜を開拓して塩田で塩を生産する村を。


 そして、皇都からニヤァーベの里の近くまで直接伸びる街道を整備してその途中に温泉町を。


 あ、あと皇都の北側に干し物専用の村も欲しいな。

 乾麺と、干し芋とか、干瓢とか、高野豆腐とか食べたい。

 ああいうのって高地とかがいいっていうし。

 あぁ、でも、グレイスノース公爵領か元のトリポリタニア公国で一手に引き受けてもらうか?


 ……うへぇ。

 やることいっぱいじゃねぇか。

 まぁ、何とかなるだろ。

 しかし順番も考えないといけないな。

 まず、各村の開拓と整地をして、そこで伐採した木材を利用して……。



「……ぅん」

 俺の下から……、具体的に言うと腹のあたりから、かわいい声が聞こえた。

 聞こえると同時にちょっとふさふさとした感覚が腹のあたりに……。

「……ぁ、おはようございます。聖上」

「あ、あぁ。おはよう。リリアーノさん」

 事後の余韻か、若干焦点があってない感じのリリアーノさん。

 虚ろな目で俺を見ている。

 しかし次の瞬間。

「……っ!!!!」

 顔を真っ赤にした。

 うわ。すごい。耳まで真っ赤だ。

 多分、昨晩の事を思い出したのだろう。

「し、失礼いたしました!す、すぐに支度を……、ぁ」

 急に飛び出したから、何もつけていないその体を俺の目の前に晒してしまう。

「~~~~っ!?」

 それに気づいたのか、シーツを被って座り込んでしまった。

「あー、その。なんだ。多分、今日は体調が悪いだろうから好きなだけ部屋に居ていいよ」

 シャルロッテさんや他の人たちは平気そうだったけど、こういうのって個人差があるからな。

 昔の彼女がそんな感じで2日くらい歩きたくないって寝込んだのを思い出した。

 うん。しばらくはそっとしておくのがいいだろう。

 お大事に。

 じゃないや、お疲れ様。

 リリアーノさん。
















 部屋から出て俺は少し進む。

 うーん。

 さっきからさぁ。

「何か用?」

「流石、気づいておられましたか」

 何もなかった空間が歪み、男が一人出て来た。


 神。


 この世界における光の神、オーディナ。

 この世界で信仰されている6柱の神。


「いつから覗いてた?」

「一日ほど前からでしょうか」

 つまり、行為中も覗いていたと。

 神としてそれはどうなのよ?

「我らの教えは『産めや増やせや、地に満ちよ』。別段、行為を見ても何を思うこともございません。人とて、家畜や獣の行為を見たところで何も思いますまい?」

 いや、俺が嫌なんだけどな。

 っていうか、その例え、なんか気分的に嫌だからやめろよ。

 まぁ、いいや。

「で、何か急ぎの用事だったか?」

「はい。実はこやつらを紹介しておこうかと思いましてまかり越しました」

 こやつら?

「もうよいぞ。出てまいれ」

 オーディナの出てきた空間から5人の男女が出てくる。

 ……誰?

「この者たちは私の同輩になります。向かって右手側から闇の神『アドラガン』、火の神『アダナ』、水の神『イスティマ』、土の神『ウステン』、そして風の神『エキドール』となります。ささ、皆。挨拶を」

 そういって、オーディナが連れて来た人たちに発言を促す。


「アドラガン。闇を権能とし、魔族の神をしている。お見知りおきを」

 男神、アドラガンがそう言う。

 長身、長髪、黒髪でちょっと陰のあるイケメン。

 長い刀を持たせて髪を銀髪にしたら何度もリメイクされている某有名RPGの適役みたいだ。性格的にも落ち着いた感じだ。

 モテそうな奴だな。

「次はあたしだな!あたしの名はアダナ!権能は燃え上がる火!ドワーフの神だ!よろしくな!」

 褐色の肌になんというか、アマゾネス的な女性だ。

 どことなく、スルーズの同類みたいなイメージが。

 力こそパワーみたいな。

「次はわたくしですね。初めまして。わたくしは水の神、イスティマ。エルフを守護しております。以後お見知りおきを」

 イスティマと名乗った長髪のお姉さんが恭しく礼をした。

 よく見ると耳がエルフのようだ。

 はい。よろしくお願いします。

「次は儂じゃな。地の神ウステンじゃ。あぁ、土の神の方が通りがよいかの。フィルボルを治めておる。こんな見た目じゃが、ドワーフではない。そこのところ間違えぬように」

 いや、確かに見た目ドワーフっぽいけども。

 しかし立派なお髭だ。

 ゲームとかでよく登場する関羽をドワーフにしたらこんな感じだろうか。

「じゃぁ最後は僕だね!僕は風の神エキドール!ねぇねぇ、お兄さん!あのケチャップってやつ頂戴!」

「こ、こらエキドール!」

 俺におねだりをしたエキドールという少女をオーディナが嗜めた。

 見た目からの発想だが、一番年下っぽい。

「あぁ、いいよいいよ」

 俺はオーディナに手を振って、目線を合わせるために屈んだ。

 そこで空間魔法を発動して中からケチャップを入れたツボを取り出した。

 4つぐらいに小分けにして小さいツボに入れておいたものだ。そのうちの1つを出して渡してやる。

「ほら、これでいいか?」

「わーい。ありがと!お兄さん!」

 俺の渡したケチャップのツボを頭の上に掲げてそこらあたりを駆けまわり始めた。

「転ぶなよー」

 何だこの近所の子供感は。

「あっ!?」

 あぁ!ほら!そんなとこは知ってるから躓いて……。

 そう思った瞬間。

 エキドールが倒れる寸前、その場から消えた。

 ……正確には消えた様に見えた。

「ふぃ。危ない危ない。危うくダメにしちゃうところだった」

 一体何が起こったのだろうか。

 振り向くとエキドールが何事もなかったかのようにそこに立っていた。

「エキドールは風の神。あれしきの事でしたら即座に風となり回避することができます」

 あ、そう……。


 ま、まぁ。なんだ。

 神様も色々いるんだなぁ。





「ところで、なんでこれだけ揃って来たんだ?」

「あぁ、それはですな。今日は『ウェリスの清水祭り』があるからですな」

『ウェリスの清水祭り』が?

 一体どういうことだ?

「そこはわたくしが説明いたしますわ」

 そういうとイスティマが一歩前に出てきた。

「元々、ドリス皇国圏内で行われているこの『清水祭り』という祭りは清らかな水と神々の祝福に感謝する祭りなのです。私たち、神が下界に降りて来ても問題ない数少ない機会でもあるのです」

 ふーん?

「ちなみに、数少ないってことは他にも下界に来れる日があるのか?」

「えぇ、年に3回ほど。時期でいうと、3月、7月、12月にありますわ。わたくし達、神はこの日をすごく楽しみにしているのですよ」

 へぇ。

 7月は『ウェリスの清水祭り』だとして、同じ条件だと……。

 この国で……というかドリス皇国圏で3月と12月だったら、『キャルノアの風送り』『ドルエスの聖夜祭』あたりか?

 たしか前にもらった資料の中にそんな感じの項目があった気がする。

「いえ、少し違いますね。3月は『春立の祭り』の日、12月は『ドルエスの聖夜祭』の前夜になりますね。それぞれ神への感謝を祝う日に降臨できるのです」

 なるほどね。

 やっぱり、神が人の世界に来るのは大変なのか。



「あともう一つ」

「ん?」

「人間以外の眷属、つまりはエルフやドワーフ、フィルボル、ウィンディアや魔族を娶っていただきたいと……」









 ……お引き取りください。

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