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2-13.クーデターの顛末

 慌てて魔法陣を抜けた俺は、熊が姫さんたちに鼻を擦り付けている所に出くわしてしまった。

 ちょ、もしかして餌か何かと認識してないか!?

 驚いていると鼻先でマリアゲルテさんをひっくり返し、うつぶせに向けた。

 そして、口を開きマリアゲルテさんに顔を近づけた。

「ちょっ!?ちょっとストップ!!」

 思わず駆け出して熊に近寄ろうとしたが、彼?彼女?の行動は俺が思ったものとは別のものだった。

 熊は器用にマリアゲルテさんの服を咥え、ベッドに寝かせた。

 その後もシャルロッテさんを同じように咥え隣に寝かせた。

 そしてこれまた器用に二人を仰向けにして、さらには前足で毛布を掛けてしまった。

 ほんとに器用だな。この熊。

 そんなことを考えていると、熊がこちらを向いた。

 すっげぇ驚いてる。

 だけど、ひとしきり驚いた後、俺と気づいたのか、すぐすり寄ってきた。

 額を俺の頬に押し付けて何度も擦る。

 敵意は感じられないし、これは何か?熊なりの愛情表現って奴だろうか。

 って、そうだ!こんなことしている場合じゃない!

 とりあえず、感謝しておきたいが……。熊と同じようにしておくか。

 額で顎の下あたりを数回擦ると熊は満足したように姫さんたちの寝ているベッドの脇で丸くなる。

 あってた。話が速くて助かるな。

 さて、城に戻るとしよう。

 バロンたちやじぃやさん、あと姫さんたちの家族とかメイドさんたちもいるだろうから避難させないとな。


 俺は、再び魔法陣へと魔力を注ぎ、魔法陣を起動させた。

 魔力の使い方も随分なれたもんだ。




 城の塔に戻ってきた俺は上空から城を見渡した。

 帯をつけた兵士たちはその場に倒れこんでいるか逃げ出し始めてる。

 これは勝ったのか?

 じぃやさんたちを確認しておこう。

 俺はじぃやさんたちがいたはずの廊下を覗こうとするが、おっと。この姿だとまたびっくりさせかねない。

 いったん、ポーションイーターに変化しておこう。

 そのうえで再度廊下を覗くと、そこには大量の血糊と兵士たちの死体があった。

 咽るほどの血の匂いと破損した防具、あと元々人間だった物体が転がっている。


 って、えっぐ!?


 ほんとにえぐいな!?

 ちょっと、俺、直視できないかも……。


 俺は目をそらしつつ、じぃやさんたちを探した。

 じぃやさんたちは……、ここにはいないな。

 何処だろう?って、ばっちり足跡ついてたわ。

 足跡をたどって行くと、兵士が一人、吹っ飛んできた。

「愚か者が」

 じぃやさんが兵士を倒した瞬間だったようだ。

 正拳突きのように右手を前に突き出したじぃやさんに出くわした。

 ちなみに吹っ飛ばされた兵士は右手が変な方向を向いている。可哀そうに。

 まぁ、自業自得だろうから別にどうとも思わんけど。


「おや、アレクシス様?」

 じぃやさんが俺に気づいた。

 しまった。『気配寸断』わすれてた。

「慌ただしく、申し訳ありません。こちらへ」

 何事もなかったかのように俺を案内してくれる。


 プロだな。


 で、じぃやさんについていった先には……

 今まさにバロンが兵士の一人に剣を振り下ろした瞬間だった。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 兵士の断末魔と共に、血がドバっとこっちまで飛んできた。

 スプラッタァ!?

 ちょっと、勘弁してほしいんだが。

(おぉ!アレクシス!……それにバスティアン殿か!)

「よっ。頑張ってるみたいだな」

(なぁに。たいしたことないぞ。というか、正直こいつら鍛錬が足りないな。若干不完全燃焼だ)

「……あ、そうっすか………」

 すげぇな。バロン。どんだけ強いんだよ。

「エフィーリア殿、バロン殿。御助成感謝いたします」

 じぃやさんが頭を下げ、礼をすると、バロンは剣を前に掲げ、刀身の腹の方を見せる動作をする。

「……感謝いたします。ではまず国王陛下と王妃様を安全な場所にお運びするのを手伝って頂けますか?」

 そう聞くとバロンは掲げていた剣を鞘に納め、クルリと反転し、廊下へと向かっていった。

 それを見たじぃやさんは頷くとその後をついていく。

 え、なに?今の?

「お、おいバロン。今のなんだよ?」

(今のは騎士の礼だ。古い慣習でいろいろ意味はあるが、この場合は司令官に対して肯定を意味する動作だな。あぁ、ちなみにバスティアン殿にも俺のテレパシーは聞こえないからな)

「そうなのか。まぁつまり、俺達は味方ってことでいいんだよな?」

(そうだな。エフィーリアが望む限りはそうだ)

「ありがとう」

 思わず感謝してしまった。

 いいやつだ。

(よせやい。俺達は俺達の望むままにしているだけだよ)



「こちらです。陛下は……ご無事のようですね」

 みると、エフィーリアさんが使ったであろう魔法でがっちりと封がしてあった。

 扉の前ではエフィーリアさんが待っていた。

 エフィーリアさんは杖の先でここまで来たであろう兵士をガツガツとつついていた。

 って、よく見たらこれ、攻めてきた方の兵士とは違うっぽいぞ!?

「ちょ、ちょっとまって!!おいバロン、とめてやってくれ!」

 そう叫ぶと、じぃやさんがエフィーリアの杖を止めてくれた。

「エフィーリア殿、何があったかは存じませぬがそのものは私共の配下にございます。なにとぞ、ご容赦を」

「ごめんなさい。ただ、どさくさに紛れて胸をもまれたので」

(よし殺そう)

 間髪入れずにバロンが剣を構えた。

「だから待てって!?」

「ならば仕方ありませぬな。どうぞご存分に」

 まさかのじぃやさんまで私刑に賛成のようだ。

 一応、味方っぽいから止めてやれよ!?

 再びエフィーリアが振り上げた杖を俺が体を張って止めることになってしまった。

 女性の胸をもんだことはうらやま……もとい、許されない行為だが、今は緊急事態だ。もう少し、穏便に事を運んでほしいものだ。


 なんとか、内輪もめを回避した俺は、とりあえず、兵士を起こすことにした。

 前足でつんつんとつついてみたり、しっぽで鼻先をくすぐってみたり。

 すると兵士が叫び声と共に起き上がった。

「うわぁぁぁぁぁぁ!すみ、すみません!!…………って()()?」

 ん?なんだろう、今なんか違和感が……。

 違和感の正体がわからなかったので、とりあえずそのままスルーすることにした。



 それから、しばらくしてどうやら外の喧騒も収まり、静かになった。

 どうやら攻め込んで来た軍勢は鎮圧できたようだ。

 じぃやさんたちの話を聞いてみると、どうやらあれは皇国に属する三公爵による反乱だったようだ。

 じぃやさんの話では三公爵の旗と、帝国・神聖国・王国からの介入があったのか、それぞれの旗印があったそうだ。

 この件に関しては後日三公爵を問いただす、とじぃやさんが怒っていた。

 ちなみに俺がミンチ……ちょっと思い出したら気分が悪くなってきた……倒した人物は公爵の一人の息子、長男で公爵達の合同軍の三人の司令官のうちの一人だったそうだ。

 嫡子として参加したのは彼だけだったようで、公爵たちの親族では唯一の参加となったようだ。

 そして結果として、250名の死者と150名の捕虜を出すこととなった。

 さらに首都に居た公爵の親族を12名拘束。一部はすでに解放されているらしい。

 驚いたことに、俺の見知った顔があった。

「黒鉄の騎士」のリーダーとガラハドも、公爵関係者だったらしい。

 まぁ、彼らは今回の件とは無関係でかつ、冒険者としての実績もあることから、即時解放となったそうだ。

 また、残りの親族10名のうち、8名はすでに無関係なことが確認されているそうだ。

 ちなみにじぃやさん。この一連の確認作業を戦闘をこなしながらやっていたそうだ。なんだこの人、超人か何かか?実は10人くらいいるとかないよね?




 ともあれ、かくして皇都を襲った反乱および侵略行為は、400名対100名という劣勢ながらも皇国軍が反乱軍を鎮圧するという形で、一端の幕を閉じることとなった。

体調を崩して遅くなりました。

皆様も風邪などひかれないようご注意ください。


3/14 修正

公爵連合軍が多すぎる気がしたので修正。800名→400名。

捕虜は公爵嫡子たちを除く人数です。

逆に城の兵士が少ない?何か理由をつけておきます。

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