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14-9.養子

「はいはい。怖くないですよ」

 ヨハンナさんが少女の頭を膝に乗せ、撫でながらそうやって少女を落ち着かせる。

「ん。くすぐったい」

 少女は力なくそう答えた。


「それで、アレク?この子が起きたのは良いですが、結局この子は誰だったのですか?」

「ん?あぁ。どうやらアルトランドの将軍の娘らしい。父親はすでに死んでいるみたいだ」

 そういう事にしておいた。

 アンブローズはアルトランド軍と同行していたけど、多分利用していただけで将軍ではないだろうし、まだ体は死んではないだろうけど、ジェイムスは消滅したと言っていたしな。

「そうでしたか……」

 シャルロッテさんが悲痛そうな顔で少女を見る。

「ねぇ。お姉さんたちにお名前を教えてくれないかな?」

 そうやってヨハンナさんが少女と会話しているのが聞こえた。

「……ぐうぃねっと」

「そう、グウィネットちゃんって言うのね」

 ヨハンナさんがグウィネットの頭を撫でる。

「グウィネットってこの辺りじゃ聞かない響きの名前ね。響きからするとドマノリア選帝国かオグシアン魔人国、デリアナ公国辺りでしょうか?」

 シャルロッテさんがうーんと考え込む。

「グウィネットちゃん、お父さん以外に誰か知り合いとかいないの?お母さんとか、お父さんの知り合いとか」

 グウィネットが無言のままフルフルと首を振る。

 うーん。そうか。

 ってことは親族の元に送り出すこともできない、と。

 どうしたものかな……。


 って、あれ?

「なぁ、メイドさん。シロ見てないか?この部屋にいると思うんだが?」

 俺より先に部屋に入って行ったよな?

 なんでさっきから見当たらないんだ?

「シロ様でしたら、そちらに」

 メイドが布団の方に指を指す。

 見るとそこには、不自然な膨らみがあった。

 もしかして……。

「ちょっと失礼」

 俺は一応断って布団をめくる。

 そこには……。

「くぅ」

 予想通り、丸まったシロの姿があった。

 おいおい、嘘だろ。

 この僅かな時間に布団に潜り込んで寝てたのかよ。

 体感数分もたってないぞ?

「ひっ……」

 グウィネットちゃんが小さく悲鳴を上げる。

 そりゃ、自分の布団の中からいきなり異性が出てきたら少女でも驚くか。

「あぁ、ごめんごめん。ほら、シロ、起きろ」

 俺はシロの首根っこを掴んで持ち上げる。

「くぅ」

 持ち上げたシロはそれでも起きる様子はない。

 漫画のような鼻提灯とよだれを垂らして幸せそうな顔をしている。

 どんな神経してるんだよ……。

 俺はシロを持った手を軽く揺する。

「ん?」

 その振動でシロが目を開いた。

 やっと起きたか。

「お前、何してるんだ?」

「あ、主。おはよう」

「はい、おはよう」

 もう昼だし、さっき出会ったけどな。

 完全にお昼寝状態だ。

「なんでこんなところに潜り込んでるんだよ?」

「うん?主と同じ匂いがするの」

「はい?俺と同じ匂い?」

「うん。安心する匂い」

 どういうこっちゃ?

 っていうかそんなに匂うか?

「あ、あの?シロさん?グウィネットちゃんが怯えてしまうのであまり積極的なのは……」

 ん?

 あぁ、まぁ。確かにおびえるか。

「ほら、シロ。待て」

 俺がシロにそういうとシロは大人しくベッドの上で待機する。

 尻尾がめっちゃ振られてるな。

「グウィネットちゃん、ほら怖くないから撫でてやってくれ」

「撫で、る?」

 グウィネットちゃんが、恐る恐る、といった感じで手を伸ばす。

 その手が、ポンとシロの頭に触れてシロが目を細める。

「ふかふか、あったか。ワンちゃんみたい」

 うん。いい得て妙だ。

 実際、ほぼ犬だし。

 それにお互いに落ち着いたみたいだ。



「しかし、どうしましょう?流石にこのまま放り出すわけにも行きませんし」

「シロさんともお互い仲良くできそうな感じですし、引き離すのは少し忍びないですね」

 まぁ、確かに。

 あれから、2人とも結構いい感じなのだ。

 シロは安心しきってる感じだし、グウィネットちゃんも犬っぽいシロに安心したのか、笑顔を見せてくれるようになった。

「……一つ、提案があるのですが」

 シャルロッテさんが神妙な顔でそのようなことを言う。

 何だろう?提案?

「どうしたんだ?シャルロッテさん?」

「グウィネットちゃんはアレクの養子とするのはどうでしょう?」

「養子?」

 いや、いきなり突飛した話しになって来たぞ?

 なんでそんなに飛躍するんだ?

「養子ですか……。確かにそれはいいかもしれませんね」

「なんで!?」

 思わず言葉に出てしまった。

「いいですか、アレク。本人の意思はどうあれ、シロは対外的にはあなたの家臣として見られています。そして家臣との絆をより深めるには婚姻による血縁関係の構築が最も効果的であることは歴史が証明しています。実際、我が国でも今まで数々の家臣への降嫁が行われてきました」

「最近でいえば、オミス伯爵の次女が家臣の長男と婚姻を結びましたね」

 オミス伯爵?

 ってあぁ、カテーナさんの生家か。

「しかし、それにしても彼女を養子にする合理性が……。その、シャルロッテさんや他の人たちも……」

「私は今はちょっと厳しいですね。貴方との子が生まれる前ですし。養子を迎えるなら子が産まれてからになります。でないと継承権や上下関係が面倒なことになりますし」

 うん?

 しかし、俺とシャルロッテさん、そしてマリアゲルテさんが結婚したら……ってあぁ、そうか!

 皇王の地位はあくまでシャルロッテさんのものだ。

 俺のものではない。

 条件はあるが、地位は養子にも継ぐ権利はある。

 つまり、シャルロッテさんや他の地位のある人間の養子になると継承権で色々面倒になる。

 だからの俺か。

 実は俺たちは貴族へのお披露目は終わっているが国民へのお披露目は終わっていない。

 言い方は悪いが事実婚とかそんな状態なのだ。

 結婚式も披露宴もないこの世界では結婚はお触れ1つで認知されるためだ。

 いや、まぁ。実は国内と周辺諸国へはそれとなく知れ渡っているらしいが。

 シャルロッテさんとマリアゲルテさんが神獣様に見初められたとも、神獣様が地位を問わず女性を篭絡しているとも。


 ……変なうわさを流した奴、絶対許さねぇからな。


 ともかく、今のうちに俺の養子にしてしまえば、俺の連れ子扱い。

 皇国の継承権は与えず、政略結婚の……言い方は悪いが駒ができるって事か。

 で、その駒をシロに使用すると。

 意外と黒いな。シャルロッテさん。

 ……いや、黒いって言うのは間違いか。

 これがこの世界の結婚観の当たり前ってところなんだろう。

「まぁ、意味は納得したけど。それにしたってなんでシロなんだ?シュバルトディーゲルとか、ぶっちゃけ重婚も可能みたいだし、ヴィゴーレとかロウフィスだって……」

「彼らは年が離れすぎていますし、それに……」

 ヨハンナさんがシロ達を指さす。

「あの様子のお二人を、引き離せますか?」

 指さした先には、仲の良い姉弟のように眠る2人の姿があった。




 ……うん。無理。

 大変失礼いたしました。

気づくのが遅れてしまいましたが、ご愛読いただいている皆様のおかげで、この小説も100000閲覧を達成するまで続けることができました。

皆様の温かいご声援に感謝いたします。

せっかくの記念ですので今の仕事の忙しさが終われば何かしたいなとは考えています。

その際は是非ご覧いただければ幸いです。

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