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13-21.しっくりこない戦い

 なんだ?あれは?

 見た目はどうみても10歳満たない少女。

 だが、その異質さは少女のそれではない。


「おぉ!我が神よ!」


 アンブローズが手を広げそう叫んだ。

 なんていうか、ずいぶん芝居がかった動きをする奴だ。

 手を広げたまま、3人のアンブローズが広がっていく。

 なんだか劇というか、ミュージカルみたいな動きをする奴だ。

 そうやって広がっていくアンブローズを見ていると俺の目の前にいつの間にか少女が移動してきていた。


 は?

 こいつまさか……。


 少女が手を突き出す。

 それ自体は緩慢な動きだ。避けれないものではない。

 しかし。

 その腕は俺の胴を捉えた。

 腕が、伸びた?

 少なくとも俺にはそう見えた。

 伸びた腕の衝撃は俺を吹き飛ばすには十分だった。

 威力はそうでもないんだが。

 殴られた、というよりは撫でられた、といった感じだ。

 吹き飛ばされた俺は後方右手のアンブローズを突っ切る。

 そこで魔法で勢いを殺し、空中に静止する。

 追撃に備えて防御姿勢を取る。

 もう一回くらい追撃が来てもおかしくは……。

 ん?

 構えていたのに一向に追撃が来ない。

 防御姿勢の隙間からちらりと見るとなんだか自分の右手を見ながら閉じたり開いたりしている。

 なにしてるんだ?あれ?

 そう思っていた矢先、俺の方を向いて手を伸ばしてくる。

 その手は途中から触手のように変化し、俺に襲い掛かって来た。

 くっ!

 油断させるためにわざと時間をずらしたのか!

 俺は思わず顔を腕で覆って防御姿勢を再びとった。

 しかし、その触手が俺に届いてくることはなかった。


 え?

 なんぞ?


 再び見てみると、どうやら俺に届く前に空中で静止している。

 うん?

 目を凝らしてみると、どうやら見えない壁、まぁ、つまりバリアみたいなものに阻まれているようだった。

 そのバリアに対して、何度もタコのような黄色い触手が叩きつけられている。

 しかし、それがすべて見えない壁に当たって反れる。

 なんだか、タコを裏面……口の方からガラス越しに見ている感覚だ。

 ちょっと、いや、かなり気色悪い。


 ……もしかして。

 アイツ、あそこから先に進めないのか?


 暫くすると、諦めたのか触手を引いて腕に戻した。

 何がしたいんだ……、一体?

 だけど、行動範囲か効果範囲が限定されているならやりようはある。

 俺は土魔法を発動する。

 魔法で出来た土は3体のアンブローズを纏めて包み込むように形成する。

 だいたらぼっちを倒したときは地面に直接生成したが、今回は空中。

 地形の変化を気にする必要はない。

 俺の発動した魔法は相手の一段を包み込むように半球形状に形成され、やがてその容量を狭めていく。

 俺が込めた魔法の効果は2つ。

 1つは土魔法による封鎖、そしてもう1つは火魔法で高出力のマグマを発生させた。

 つまりはだいたらぼっちに使った魔法の空中版だ。

 先ほどの少女とアンブローズをまとめて土魔法で囲んでしまうので環境への被害も少ないはず。

 ちょっと自信ないけど。

 どうだ?


 少しの時間のあと、俺の魔法は内部から爆発した。

 これは俺の魔法の効果ではない。

 つまり……。


 爆発の後、土煙の中に4体の人影が見えた。

 ……だめか。

 正直、これでだめならパッと思い付く魔法はない。

 どうしたもんかな……。


 土煙が晴れると黄色い衣を纏った少女は今度は両手を握ったり開いたりして、首を捻る。

 さっきから何してるんだ?アレは?

 なんというか、パッと見た感じ、自分の体の動きを確かめているみたいな動きだ。

 もしかしてアイツ、うまく動けないんじゃないのか?


「いあ、いあ、はすたぁ!」


 3体で少女を中心に固まっていたアンブローズがそう叫びながらその距離を広げた。

 再び俺を囲むような配置につく。

 こいつはこいつで何をやっているんだろうか?

 って、まてよ?

 もしかして……。


 俺は、先ほどの攻防を思い出した。

 確かさっきもこいつの囲いの中ならアイツは自由に動けた。

 俺がこの囲みの外に行ったら、追撃してこなかった。

 そうなると、もしかしてこいつは囲みの中でしか自由に活動ができないんじゃないか?

 そうなると、この囲みを何とかして崩せばアイツは活動できなくなるんじゃ……。

 かといって、アンブローズにはあのバリアみたいなものがあるから直接攻撃で抜くのは骨だ。

 だとすると、さっきみたいに攻撃の時、不意に吹き飛ばされるのがいいか?

 多分、アンブローズは強いといっても人間だから、俺が思ったよりも吹き飛ばされて対応できなかったんじゃなかろうか?


「聖上!」


 そう考えていた俺の背後から声をかけてくるやつがいた。

 この声は……、ロウフィスだな?

「なんだ、こいつらは。こんなやばいやつを相手にしていたのか?」

「助太刀が遅くなり申し訳ありません、我が主」

 振り向くとそこには、ロウフィス、フェニクス、シュバルトディーゲルの3人がいた。

「……え?」

 思わず、声に出してしまった。

 当然のことながら、ここは空中。

 フェニクスは当然のこととして、ほかの2人は……ってあぁ、そうか。

 さっき確か悪魔っぽいのと天使っぽい羽根をはやしていたよな。

 ってことは飛べてもおかしくはない。


 問題はシュバルトディーゲルだが。

 なんだか、シュバルトディーデルは空中でステップを踏むような動作をしている。

 ……これってまさか。

「空歩にございます。自在に飛ぶことはできませんがこのくらいでしたら」

 やっぱりか!?

 もう何でもありだな、この馬獣人執事。


 だけど、これは助かる。

「すまないけど、3人とも!あっちの男のほうをどれか1体、集中攻撃してくれ!その間に俺が何とかする!」

「承知!」

「ふっ、任された!」

「かしこまりました。我が主」

 そう答えると、3人が俺の右側にいたアンブローズに殺到する。


「光よ、我が刃に宿れ、エンチャントディバインライト!三閃突!」

「豪火炎掌!」

「流星脚」


 ロウフィスは武器に光魔法を宿して高速の三段突。

 フェニクスは両手に火魔法を宿して両手で繰り出す掌底。

 シュバルトディーゲルは土魔法を足に宿して高速で突進する勢いのままに蹴りを繰り出す。


「いあ、いあ、はすたぁ!」


 それに合わせるようにアンブローズは再びバリアを展開するが。

 さすがに3人分の突撃の力を抑えきれないのか徐々に後ろへと押し下げられ、やがてバリアごと吹き飛ばされた。



「あ、ああぁぁぁぁ!」


 少女の姿が、顔を押えながら苦しみの声を上げた。

 今がチャンス!

 俺は一気に少女に近づく!

 そのまま掌底を叩き込んでやった。

 そのまま正面のアンブローズに向けて吹き飛ばす。

 吹き飛ばされた少女はアンブローズに衝突し、「がぁ!」と短い悲鳴を上げた。

 これで、終わりだ!




 そう思って俺が飛び出した瞬間。

 ゾクッとした悪寒に襲われる。

 思わず、俺は静止してしまった。

 おそらくその悪寒は少女の目。

 その不気味さにあると思うのだが。


 少しの制止の時間をぬって少女がアンブローズに体を向けた。


 そして、その触手状になった手でアンブローズを貫いたのだった。




「いあ、いあ、はすたぁ!」



 胸を貫かれたアンブローズはそれでも不気味な詠唱をやめない。


 そして、そのアンブローズを取り込むように触手が広がった。


 さて、今度は一体、何が起きるのかな?

遅くなりました。

色々あってここから先のプロットが書き直しになりました。(いったい何度目か)

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