表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

222/300

13-12.掃討戦

-シュバルトディーゲル視点-


「ちぃ!」

振るわれた剣を私は籠手を仕込んだ手で振り払う。

いやはや、凄いですね。

あのドワーフが作った籠手は。

普通の鋼製とのことですが、まったく動きを阻害される感じがしない。

しかも、私の魔力に呼応して硬化するおまけつき。

これならば、武器を持った相手でも負ける気がしません。

「くっ!これ程とは!だが!」

相手が飛び私の頭上から降ってくる。

素晴らしい身体能力です。

まぁ、避けることも可能ですが。

私はあえて、手を交差させて相手の剣を受ける。

そのすぐ後、腕に重たい衝撃が走りますが。

素晴らしい。

剣を受けた衝撃はあるものの、刃は通らない。軽くて、丈夫。

匠の手に掛かるとこれだけの防具が生み出せるのですね。

ゲオル老には感謝しなければ。


さて、とはいえ。これ以上時間をかけるのもよろしくありません。

早く戻って主様のお世話をしなくては。


「貴様!決闘のさなかによそ見をするなど!」

おっと、危ない。

私の目の前を剣が掠める。

私が少しでも隙を見せると的確に私の隙をつきてきます。

良い目をお持ちです。

正直、アルトランドの貴族がこれほど強いとは思いませんでした。

しかし……。


「申し訳ありませんが、私は決闘など受ける気はございませんので」

「なに?」

「そもそも、私の役割はこの船を沈め、貴方方侵略者をとどめること。先ほどから戦いにお付き合いしているのは、ただのウォーミングアップにすぎません」

「な、何を言って……、まさか!貴様!」

相手が何かに気づいて走り始めますが、もう間に合いません。

私は足を振り上げます。

「やめろ!この船には兵士以外も乗って……」

「私には関係ありません」

そう告げると、私は脚を振り下ろします。


故・従士公爵を近くで拝見し続けた私にとって、格闘術の師匠というのはやはり従士公爵なのでしょう。

なので、彼と同じ人間の体を手に入れて、真っ先に鍛えたのはこの格闘術。

流派だのなんだのというのはわかりませんが、この体の質にもあっていたのでしょう。

馬譲りの強靭な足腰、人譲りの器用な立ち回り。

並の人間であれば、負ける気はしません。

私は振り下ろす足に思いっきり魔力を籠めます。

「やめろーーーーーーーーーー!」

「洛星脚!」


私の足が甲板に到達すると、土魔法の穴掘りの応用で甲板に大穴が開きます。

やがてメキメキと音を立てて、船が二つに割れます。

「き、貴様!ぬお!?」

割れた向こう側は、船体がバランスを維持できず大きく傾き始めました。

さて、そろそろ逃げなければここも危ういですね。

「それでは、アルトランドの皆様。私はお暇を頂きます。無事の生存を祈っております」

「きさまぁぁぁ!」

「閣下!ここはお逃げください!」

「えぇい!放せ!愚民が!貴様らだけで先に逃げよ!儂にかまうな!総員に退避命令を出せ!一人でも多く生き延びよ!」

「閣下!」

向こうでは少々もめているようですが。

それにしても、あの貴族。

さっきから見下したいのか、部下を思っているのか、よくわかりませんね。

口調は見下しつつも、その言動からは部下を思う心が伝わってきます。

まぁ、私の知ったことではありませんが。


ふと、私はシロ達の行った方の船を見ました。

するとその直後。

ピシッ。

そんな音と共に、そちら側の船は巨大な氷に包まれました。

あちらも、大丈夫そうですね。

私は、改めて先ほどの貴族に向き直ります。

「さて、それでは。皆さま、失礼いたします」

「貴様!その顔、覚えておくぞ!」

「それは光栄でございます」

そう言葉をかわし、私は沈みゆく船の甲板から跳躍したのでした。






-シロ視点-


あぶないあぶない。

主に怒られるところだった!

飛んでいった腕はなんとか捕まえたし、これなら大丈夫!

ちょっと嚙んじゃったけど、大丈夫だよね?

大丈夫。返したから大丈夫なはず。

シロはえらい子。

これで、主にも褒めてもらえる!

「わおぉぉぉぉぉぉぉん!」

む?

おとうさんからの合図だ。

ユキの魔法が来る!

ぜんぶ、凍らせる奴だ!

えっと……、ぜんぶ捕虜?にするんだっけ?

シロたちの中で一番人間相手が慣れているのはシロだから、一番偉そうなところにいる奴を相手にして。

その間におとうさんとおかあさんとホワイトが魔法で戦闘不能にして、最後にユキがドカーンと凍らせる、だったっけ。

「わおーん!」

おとうさんからの合図だ!

でもこの腕どうしよう?

「こらぁ!返せ!私の腕ぇ!」

ま、いいや。ポイ。

「私の!私の腕ぇ!」

シロがポイした腕をさっきの偉そうなのが追いかけて行った。

これ帰したってことでいいよね?

「わんわん!」

おかあさんに急かされたので、シロも急ぐ。

そしてみんなが船から飛び出すと、ユキの魔法が発動して、船を凍らせた。





-アマンダ視点-


「はぁ!」

身体が軽い!

ずっとあの猫たちと訓練してたからだろうか。

もしかして私も少しは強くなったのだろうか。

今度、教会で能力を見てみましょうか。

あ、そういえば神獣様が能力確認できるとグレイ様が言っていたような……?

今度お願いしてみましょうか。

しかし、私のお願いをあの方が聞いてくれるでしょうか……。

最悪、対価を……身体を求められる可能性も。

そうなると姫様……シャルとの褥に呼ばれる可能性も……。

まぁ、それはそれで。


こほん。

何はともあれ。

ここはもう片付きそうですね。

正直、神獣様が召喚したあの猫という生物に比べると物足りませんね。

まぁ、アレらは木の剣くらいなら簡単に避けたり壊してきたりしますからね。

強敵の気配もない。

とりあえず、戦闘能力がありそうな人達は今ので最後みたいですね。

では。


「全員、死にたくなければ投稿しなさい!投稿しない場合、この船を沈めます!」

そう宣告した瞬間、隣の船が真っ二つに割れ、更にその奥の船が大きな氷で包まれた。





-???視点-


ふふふ。

ふふふふふふふ。

馬鹿な子。

貴方が私に手を出せないことなんて、分かっていたでしょうに。


ふふふ。

お兄様。

今参りますわ。


こんどこそ、一緒に。


ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ。

なんだ今年の忙しさは。

あと、ちょっと後を引く風邪を引きました。

皆様もお気を付けください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ